欲しかったものは栄養ではなかったのだ
「エリー、寂しいから一緒に寝ようね。」
その夜、いつも他の部屋で寝ていたギルが、枕を持って私の寝室に侵入して来た。
やはりギルは物分かりがいいわけがないんだ。分かったとは、そういうことだったのか。
「もちろん、断らないよね?エリー。」
断れないことは、入って来た時の顔から分かっていた。
私は一体、どこで育て方を間違えたのだろうか。
*
「まま、早くこの本読んで!」
私の膝に乗るのは、4歳になったばかりの可愛い息子である。
私によく似た黒髪に、奴によく似た琥珀色の瞳。
「こら、必要以上にままに触るな。ままは僕のだからね。ほら、おいでエリー。」
息子にさえ嫉妬するこの器量の狭い男、ギルの言うことは、絶対である。
おいでとは、ギルの膝の上か。全く、息子の前で何をやらせるんだ。
仕方なく、そこに座る。絵本を持ったまま。
「エリー、どうしてそっちを向くの?こっちを向いて座って。」
なんて事をさせるんだ。教育上良くないと思う。
「よくできました、可愛い僕のエリー、愛してるよ。」
こんな雰囲気は、教育上よくない。
「エリーは?」
有無を言わせないような瞳で見なくても、もうとっくに私は諦めてしまった。
「…愛してるよ、ギル。世界で一番だ。」
自分の気持ちに、目を逸らし続ける事を。
きっと私は、最初からこいつに絆されていたんだ。
「エリー!愛してる。僕の方こそ、愛してる!!」
急に上がったテンションに、私は溜息をつく。
無駄な事を言ってしまった。今夜はきっと、寝られない。
どこで間違えたんだ。
きっと、最初からだったんだ。