第8話
俺は急な式になれ、発言にただ驚いていた。
「何故俺が紫の式に?」
俺は隙間の中で隣を歩く紫に聞いた。
「あなたが優秀だからよ」
と唯一言返してくるだけ。
「俺は式にはならない…俺には既に主人がいるからな」
「そ…ならあなたが主を失った時改めて誘うことにするわ」
「そんなことあるはずがないだろう?」
「分からないわよ?妖怪は気まぐれ…ならばいつ捨てることになるのかも気まぐれだから…さて…そろそろ着くわよ」
隙間が開き外の世界が見える。
隙間を出るとそこは幻想的な風景が広がっていた。
幻想郷なだけに。
面白くもクソもねぇよ馬鹿。
「にしてもなんつー景色だ…」
「あなたが生まれたのはあそこ…人里よ」
紫が指を指す方向には建物が密集している場所があった。
「あそこ…か…」
まぁ景色なんて覚えてないんだが。
「さ、行きましょうか」
「何処にだ?」
「まずはあなたの宿確保よ」
そうか…俺宿無しだったな…。
「っても何処にだ?」
「そこが問題なのよ…」
「俺はここの地理なんて知らねぇぞ」
実際人里の地理すら分からないのが本音だ。
何せここの人生のほとんどは幽閉されてたからな。
「仕方ないわね、行くわよ」
目の前にまた隙間が現れる。
「ちょっとまった…先に行きたいところがある…連れてってくれるか?」
「何処に?」
「墓…だ」
俺は今墓場に来ている。
大きく博麗と書かれた墓石の前に俺は立っている。
集合墓地ってやつだと思う。
「あの時にいた巫女はこの中に?」
「えぇ…名を博麗霊花…正直博麗の巫女最弱といっても過言ではないくらい弱かったわ、そして争いも嫌いだった…本当に平和主義な巫女だったわ」
「そうか…巫女…すまなかった…謝って済むような問題でもないが…」
俺は墓石に手をやる。
「ま、俺は俺なりに頑張ることにする」
そう言って墓石から手を離す。
封印が施されていた左目に手をやる。
「正直あの時は憎んでた…が今は感謝している…」
俺はその場を離れ隙間を開いている紫に近ずく。
「もういいのかしら?」
「あぁ…」
俺と紫は隙間に入り隙間を閉じる。
「んで何処に行くんだ?」
「あなたを手元に置くのよ」
そう言われた時目の前の隙間が開く。
その先には家があった。
「ここは?」
「わたしの家よ?」
「そうなのか?」
そう言って紫に着いて家に入る。
「お帰りなさいませ…ってその男は誰ですか?紫様…不埒な輩なら私が!」
そう言って飛びかかってくる女性…って尻尾あるよな?1…2…3…合計9本目か…なんの妖怪だ?
ってうおっ!妖力の弾飛ばしてきやがった!
俺は紫の横を離れ跳ぶ…飛ぶでは無く跳ぶ。
「何しやがる!尻尾女!」
「貴様こそ!紫様に何をした!」
「何もしてねぇよ!」
会話中も妖力弾が飛んできて俺の横に着弾した。
俺は懐からナイフを取り出し相手に投げる。
「そんなもの…!?」
尻尾女は体を逸らしナイフを避けた。
「バレたか…これは対魔のナイフ…妖怪や悪魔には効果覿面の一品だ…」
俺はナイフを逆手に持ち構える。
「厄介な物を…だがすぐに終わらせてやる」
そう言うと密度の高い弾幕を放ってくる。
「さてさて…執事の戦闘術…お見せしよう」
俺は弾幕に真っ直ぐ突っ込む。
相手の妖力弾はこの対魔のナイフで弾ける…
なら最短の直線距離で体技を見せてやる!!
俺は弾幕を弾いていく。
そして相手の視界に入った瞬間を狙う。
高速の歩行術。
俺は…正直妖術もまともに使えない。
魔力もない…霊力もない…。
唯一できるのは妖力による結界術とこの接近戦闘術…。
俺は全速で尻尾女の背後に回りナイフを突き出す。
ガキッッ…!!!
「やめなさい…二人とも」
「なっ!いつの間に!」
そう言って初めて気付いたように俺の方に振り向く尻尾女。
ってか俺のナイフを扇子で止めるって…。
一体何の素材を使ってんだか…。
「チッ…もうちょっとで殺れたのに…」
「貴様が私に敵うわけがなかろう」
「の割に俺のスピードについてこれてなかった様だが?」
「煩い!今すぐ貴様なんぞ殺してくれる!」
「止めなさいと言ったのが聞こえなかったかしら?」
その場の空気が瞬時に凍りついた…気がした…。
「もう…やめにしないか?」
「あぁ…そうしよう…是非とも…俺もここで地獄は見たくない」
「何故顔を逸らしてるかしら?」
それは自分の顔を見ろ…そうすりゃよう分かる。
目も当てられないことになってるぞ…。
と一悶着あり今は八雲家の居間で寛いでいる
尻尾女こと九尾の妖狐…八雲紫の式…八雲藍がお茶を持って入ってくる。
全員が座り紫が口を開く。
「さて…早速だけどあなたには明日やってもらいたい事があるのよ」
「俺にできることなら何なりと」
「妖怪の山を制圧して頂戴…簡単に言えばこれね」
「何処だ?」
「昔は鬼が根城にしてた山よ…ま、鬼が立ち去ってからは天狗が支配してるけど…で貴方にはそこの天狗族の長…天魔と交渉して欲しいのよ」
「俺一人でか?」
「紫様…流石にそれは無茶だと思います…」
俺も思う…ってか交渉って何をだよ…天狗族全員を敵に回したくはないからな…。
「天狗族には外来人…いわゆる神隠しにあった人間以外食べないで欲しいのよ」
「………………………」
「「どうしたの(だ?)」」
「いや…分かった…その仕事…俺が請け負った」
「そう!じゃ頼むわね!」
明日が楽しみだぜ…うむ…わりと本気で楽しみだ。
「なにをにやけている?」
ん?俺はそんな変な顔してたか?
「いや、明日が楽しみすぎてな…」
二人とも頭に??が浮かんでいた。
正直俺は今とっても悪い顔をしていると思う…いや…確実に…。
まぁ楽しみなんだよ。
「まあいいわ…詰まる所、いいこと思いついたって感じでしょう?」
「どちらかと言えば悪い顔に見えるんですが…気のせいでしょうか?」
どっちだよ…いや…どっちでもいいか。
「この辺強い妖怪はいるか?」
「何をするつもり?」
「なぁに…幻想郷の妖怪がどれだけ強いのか気になるだけだ」
そう…ただそれだけ…明日の為に多少ウォーミングアップしたいだけなんだよ。
「なら四季のフラワーマスターの所へ行ってみたらどう?」
四季のフラワーマスター…どっかで聞いたような…気のせいか?
「そうか…なら頼む、ちなみに戦うつもりだ…だからことが終われば回収頼む」
二人とも何故そんな目をする?なんか可哀想な物を見る目…何かしたか?俺。
「じゃ…この隙間を通って行きなさい」
そう言って俺の横に隙間を開いてくれる。
「じゃちっと行ってくる」
「考え直さないのか?お前の実力じゃ勝てないと思うんだが?」
「大丈夫よ…アレスは恐らく藍、あなたよりも強いわよ」
「この男が…ですか?」
「そうよ…本気でやればアレスは私といい勝負すると思うわよ?妖力も私と大差ないわよ?妖術覚えれば確実に強くなる…」
「流石にそれはないだろう」
そう告げた後俺は隙間に入る。
だがすぐに隙間の先が見え隙間から飛び出る
その場の光景を見て俺は言葉を失った。
一面を覆う黄色い花…名は知らないが幻想的な風景が広がる。
俺は花を踏まぬよう細心の注意を払い進む。
「お前折れちまったのか?」
俺は折れた花に添え木をしてやる。
「これで大丈夫だろう?水も飲むか?」
俺は掌から能力で水を発生させ水をやる。
「ふふふ…私の縄張りに入ってきたと思ったら私の花を助けてくれてありがとう…この子もありがとうって言ってるわ」
……警戒を解いたつもりは無かったが俺の背後に立つとは…相当な実力者か…。
「花の言葉がわかるのか?」
「ええ…私からも礼を言うわ…さて…では一応聞いてあげる…何の用?」
俺はフラワーマスターと言われる女性の背後に回り首にナイフを突きつける。
その直後俺のいた場所に傘が振り下ろされた
「速いわね?」
「の割にしっかり目で捉えてたろう?」
「あなた只者じゃないわね?」
その瞬間フラワーマスターの目が変わる。
「はや…」
気付けば俺は背中を傘で殴られ地面に打ち付けられていた。
「ふふふ…私の名は四季のフラワーマスターこと風見幽香…貴方は…楽しませてくれるのよね?」
…なんつー目をしてやがる…楽しい…が狂気のような…戦闘を楽しんでいる…戦闘狂の目だ…。
「風見幽香…聞き覚えがある…数ある陰陽師を撃退し妖怪を殺す…その並外れた身体能力と他の妖怪と一線を越えた妖力を有する負け知らずの最強とまで言われた花妖怪…風見幽香…」
あいつらの目も頷ける…八雲紫と並ぶ大妖怪…それが何故ここに。
「そうよ、合ってるわね…さ、始めましょうか!」
ガキィーーーンンンッッッ!
俺は風見の傘をナイフで受け止める。
「反応速度は上々…ね!」
傘に妖力が集まっていく。
「元祖…マスタースパーク!!」
俺は咄嗟に妖力の障壁を展開する。
ボゴォォォォォンン!!!
「私のマスタースパークが…」
「俺の障壁が…」
「「なんて威力(防御力)!!」」
お互い顔を見て笑い同時に跳ぶ。
「私と接近戦なんて!あなたは面白いわ!もっと私を楽しませて頂戴!!!」
「そして初めての敗北を贈ってやる!」
右足を振り上げる…鍛え上げた脚力を妖力で刃状に包み込み蹴りの連撃を放つ。
1秒間に…1…2…3…12回か…上々だ!
それを傘で弾く風見…。
このスピードでも付いてくるか…。
「速いし厄介ね…そのスピード…」
そう言いつつも蹴りにカウンターを放ってこられると自信無くすんだが…。
「お前…強いな!俺も今は…楽しんでるぜ」
俺の妖力が霧散し蹴りが風見の腹に決まるのと風見の傘が俺の横腹を殴ったのが同時に決まる。
「うっっ…!」
「ごはっ…!」
お互い別の方向に飛んで行く。
「……久し振りに…こんなに痛いの貰ったわよ…」
「くっ…肋骨…二本やられたな…」
俺は喉から上がってきた血を地面に吐き捨てる。
「花刀…一曲目血塗れ桜…」
俺は目を瞑りナイフを二本逆手に持つ。
ただ一直線に風見の背後まで走り抜けた。
「速い…何を…」
その瞬間血の桜吹雪が舞う。
「は…?ぐっ…はっ……」
風見の肌には数多くの切り傷が深く刻まれていた。
「さて…二曲目…Let's dance with me(私と踊りましょう)」
俺は高速で動く。
「そんな!私が視認できないなんて!」
「花刀二曲目…花折水仙」
俺は妖力を硬く…まるで障壁の防御力を攻撃に回す様にする。
そして更に高速で今度は速度の重さを乗せる
…そして周りを高速で走る。
「くっ!今度はそうは行かないわよ!」
はっ…既に事は終わってるんだが?
ま、数発は防がれたか…。
「…はぁ…はぁ…左腕と…肋骨を左半分全部持ってったわね…ごほっ…はぁ…右は肩の骨が折れてる…花折…ね…皮肉かしら…くっ…けど…今度は貴方も道ずれよ…」
「みたいだな…」
右腕と右肩にカウンターを入れられ折られていた。
「あの速度でよくカウンターを放てたな…」
「でも貴方も…強いわ…正直言って…これまで私と接近戦闘した中ではダントツね…」
「ありがとよ…なら最後だ…」
俺は右手を垂れ下げ左手でナイフを逆手に持つ。
「殺花終曲……首斬り椿」
この技はまるで椿のように…ただ首を刈るだけ…ぽとりと真っ赤な血を飛び散らせながら落ちる首はまるで真っ赤な椿が枝から落ちる様のよう。
だが首に刃が届くか届かないかで風見の体が傾く。
俺はナイフを投げ捨て地面にあたる前にキャッチする。
「おい!大丈夫か!」
「…はあ…何故…?さっきまで死闘を繰り広げた相手になぜ情けをかけるの…?あのまま…首を切れば私と言えども死ぬ…何故あなたはそうしなかったの?」
俺は腕の中で力なくこちらを見据える目を見ながら答える。
「……すまない…正直やりすぎた…俺は幻想郷で生まれ一度出て行った新参者だった…だから幻想郷に来た時紫に強い妖怪を聞いたんだ…それを聞いて戦ってみたかった…ただ本当にすまない!やり過ぎた!」
俺は腕に風見を抱きながら頭を下げる。
「はぁ………いいわ…私も…楽しめ…た…から…ちょっと…眠らして…欲し…い…わね……」
そう言って腕の中で眠る風見幽香…。
……正直言う…可愛い…いや!そんなこと考えてる暇はない。
「あら?勝っちゃったの?ずいぶん強くなったものね?」
「そうか…今日はちょっとこっちにいる…だが明日はちゃんと行くからな」
「頼むわよ」
そう言って隙間に消える。
俺は風見を横抱きに抱え花畑を歩く。
「にしても軽いな…」
日が傾く太陽の花畑…。
その中を歩く半妖と大妖…。
さて…明日は天狗か…。
心が躍り顔がにやける。
「覚悟しやがれ…鳥共」
描き方を変えました!
感想などあればよろしくお願いしますね
( ´ ▽ ` )ノ