表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/497

第37話・とんでもない規模から始まる人脈作り

 

 公式戦まであと2週間……、俺はナイトテーブルで店内の掃除をしていた。


 この1週間、俺とミライの打ち出した選挙方針はかなりよく刺さったようで、狙い通り1〜2年の生徒に高い支持を得ることができた。


「ミライちゃんから聞いたよアルスくん、選挙は首尾よく進んでるみたいじゃないか」


 床にモップをかけるマスターが、振り向きながら言った。


「そうですね……一応メディア部の予想では、俺とユリアがほとんど互角のようです。まだ油断はできません」


「っとなると、やはり公式戦が鍵になりそうだね」


 最後のテーブルを拭き終わり、雑巾を絞る。


「えぇ、それまでに全ての準備を終えるつもりです」


「なるほど、それで今ミライちゃんから“色々”教わったりしてるわけか。ホントに今日は会わなくていいの?」


「あいつにはもう言ってあるので大丈夫です」


 店内の掃除がひと段落し、仕事服から着替えた俺たちは陽の沈んだ大通りへ出た。

 相変わらず行き交う人は多い中、マスターが車庫から車を出してくる。


「さて、じゃあ行こうか」


「……はい!」


 こないだマスターの言っていた特別顧問、その人に今日ようやく会うチャンスが来たのだ。

 助手席に座り、シートベルトを着用。


 車はゆっくりと進み始めた。


「その人––––学園の特別顧問なんですよね? けれど校内でそれらしい方にはまだ会ってないです。どんな人なんですか?」


「前にも言ったけど合理主義の権化みたいな人でね、普段は本職の仕事をやっていて学園顧問は兼業なんだ。校内で会わないのはそのせい」


「なるほど、マスターとはどういう関係で?」


 俺の質問に、数秒黙ったマスターはゆっくり口開いた。


「僕を救ってくれた恩師であり、僕が唯一勝てなかった相手だ」


 マジか。

 この人は王国で大英雄グラン・ポーツマスの名で知られており、数年前……2つの都市国家を壊滅させた“魔獣王”と呼ばれるモンスターを倒している。


 そんなマスターが一目置くどころか、勝てなかった人間。


「今では一緒に“色々”やっててね、実は喫茶店地下にある重火器は彼から貰ったものが多いんだよ。きっと––––いや、君とは必ず良い関係になれる」


 車は角を曲がり、1つの建物を正面に捉えた。


「っ!?」


 思わず身を乗り出す。

 ライフルで武装した兵士に守られ、重厚なゲートに仕切られた厳重な施設。


 看板には『アルト・ストラトス王国 在ミリシア大使館』と書かれていた。

 いや待て待て待て、俺はてっきり学校に行くのかと思ってたぞ。


「許可証をお見せください」


 近寄ってきた警備は、ユグドラシルの動画でしか見たことのない銃を持っていた。

 名前はたしか……『STG44』、向こうの国の主力自動小銃だ。


「これを」


 マスターが許可証を提示すると、ゲートが開き奥へと誘われる。

 そのまま降車し、オシャレな外装の大使館内へ入った。


「王立魔法学園の生徒会長になるなら、その時最強の人脈を持っているとより有利になるだろう。使えるカードは相手より強い方がいい」


 1つの部屋の前で立ち止まり、マスターは2回ノック。


「入っていいかな?」


 気さくな問いに、中からは「あぁ、いいぞ」と同じノリで返ってくる。

 入室した場所は執務室––––整然としていて、部屋の主の性格がよく伺えた。


「ようこそアルト・ストラトス大使館へ、噂はかねがねそこのグランくんから聞いているよ」


 奥の机に座っていた男は、真っ黒な軍服に身を包んだ金髪碧眼の男性。

 年齢は20代後半だろうか……端正な顔立ちで、マスターに引けを取らない風格だ。


「初めまして、アルス・イージスフォードです。貴方が件の特別顧問という?」


「あぁそうだ」


 席を立ち、前に出た男は俺と握手した。


「初めまして、王立魔法学園特別顧問 そしてアルト・ストラトス王国陸軍大佐 在ミリシア駐在武官を務める––––ジーク・ラインメタルだ」


 海の向こうにある超大国––––アルト・ストラトス、そこの駐在武官って。

 なんというか、とんでもない規模から人脈作りしようとしちゃってるなぁ……俺。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ