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第270話・竜王級アルス・イージスフォードVS道理の大天使スカッド

 

「有り得ん!! 惑星の裏側へ飛ばしたのだぞ! 今日中に来れるはずがない! こんなのは道理に反している!! デタラメだ!!」


 怒り狂う大天使は、一見して……とんでもなく強大な存在だと理解した。

 なるほど、これなら確かにあのユリアをここまでボロボロにできるだろう。


 だが––––


「デタラメだとか知んねーよ天使様、断熱圧縮とか大気摩擦とか……家族の危機の前にはちっぽけ過ぎる壁だ。俺を止める道理にはならない」


 俺は拳を握り、さっきまで発動していた竜王級の特権––––禁断の切り札を切った。


「『身体・魔法能力極限化(ブルーペルセウス)』ッ!!」


 世界に鐘の音が響いた。

 全身を蒼色の炎がバーナーのように包み込む。


 ここまで出力を上げたブルーは初めてだ……身体への負荷はヤバいが、やり切るしかない。


「驚いたな……まさか本当にそんな異次元の変身ができるとは、貴様はやはり異常存在(アノマリー)だ。排除しなければならない、竜王級という存在自体が––––」


 金色のオーラを纏ったスカッドが、俺へ拳を打ちつけた。

 咄嗟にガードした俺は、数メートル地面を削ってブレーキを掛ける。


「道理に反しているのだっ」


「はっ、神になろうとして人類に仇なす天使が……笑わせるぜ。さぁ来いよ神モドキ、この世界で一番タフな人間が相手だ」


 双方共にオーラを全開まで引き上げた。

 爆発のようなダッシュで地を蹴り、俺とスカッドは拳撃をぶつけ合う。


 蒼色と金色の魔力爆発が起こり、要塞を地面ごと揺らした。

 今ここに……大天使と竜王級の決戦が幕を開けた。


「会長ッ!!」


 爆風流れる煙の中で、ユリアが叫んだ。


「このわたしが信じたんです! 絶対に……勝ってくださいッ!!!」


 うっすら微笑む。


 ……そりゃそうさ。

 ユリア、お前が時間を作って繋いでくれたこの瞬間のために、俺はヤツを––––


「本気で殺させてもらうぞ、大天使スカッド。大事な彼女が世話になった礼をしてやる」


 俺はユリアたちを巻き込まないよう、上空へ即座に飛び上がった。

 だが、こちらの心理を読んでいたスカッドが真上から攻撃を仕掛けてくる。


 想定内と言わんばかりにかわし、こちらも神速の裏拳を顔面へ振るう。


「ッ!!」


 攻撃は大天使の頬を掠めた。

 ヤツはそのまま音速の回転蹴りを浴びせてきたが、こちらもそう簡単に食らうわけにはいかない。


 ガードしつつ後方へ下がり、互いに魔法をばら撒きながら距離を取った。

 この一連の戦闘だけで空間が揺らぎ、沖合の海の波まで逆さに立った。


 なるほど……これが最も神に近づいた存在か、時間稼ぎしたのがユリアじゃなきゃ、誰であろうと正対した時点で殺されているだろう。


「はあァアアッ!!!」


 俺はブルーの出力をさらに引き上げた。

 魔力の勢いがバーナーを超えて、噴火と言って良い状態にまでなる。


 さじ加減を間違えれば死ぬ、そんな限界を攻めたラインでの変身だった。


「はっ!!!」


 スカッドの連続爆裂魔法が向かってくる。

 回避機動は……最低限で良いっ、ここまで磨き極まったブルーなら––––


「ぐぉっ……!!?」


 俺は超重の一撃をヤツの腹へ見舞った。

 距離などもはや、あって無いようなものだ。

 さらに腕を振りかぶった。


「まだまだァッ!!」


 ガトリングも真っ青な乱打を、スカッドの全身へ浴びせていく。

 まだだっ、もっと早く……さらに強くッ。


「ぐおぁッ!!? がふっ!!」


 1発1発が大口径戦車砲に匹敵する打撃。


 最後には純白の翼を掴み、塔の残骸目掛けて投げ飛ばした。

 瓦礫が天空まで舞い上がり、気化爆弾でも落ちたような衝撃波が大気へ伝わった。


「1つ、良いことを教えてやるよ……大天使スカッド」


 煙を裂いて突っ込んできたスカッドを軽くあしらうと、俺は空中で攻撃のことごとくを避け、逆にカウンターを打ち込んでいった。


 距離を取った大天使の鼻から、赤い血が垂れる。


「『ブルー・ペルセウス』は、ネフィリムとペルセウスをただ足しただけの変身じゃない、2つの変身が持つパワーアップ倍率を文字通り……“掛け算”したレベルの値だ」


「どう言うことだッ!!」


「こういうことだよ」


 スカッドの反応速度を超越して、俺はヤツの脳天へ踵を落とした。

 要塞の外殻へ激突し、周囲の建築群もドミノ倒しを見るように崩れ落ちる。


 俺は腕を組んだまま見下ろした。


「この2つの大エンチャントを同時発動できるのは、たぶんこの世で俺だけだ……。タフさだけが取り柄の俺にしかできない変身、ブラックギルドで鍛えた甲斐があった」


「ッ、やはり君はこの世の道理にとことん反しているな……そんな神のような変身が人間ごときに許されるわけがない!」


「そうかな? 現になれてるが?」


「あり得ん!! この世で最も神に近いのはこの私だ!! 貴様ごときが近づいて良いわけがない!! そんなことは––––」


 変化は、突然起きた。


 金色の光が、柱となって天を貫いたのだ。

 ヤツの翼は神々しく光り輝き、目は黄金に染まり、頭には光輪がハッキリ浮かぶ。

 己の力を極限まで解放した、大天使スカッドの真の姿だった。


「“道理の天使”たるこの私が許さんッ!!! エンジェル・リンク––––コード3!!!」


 そうだ、それでいいっ。

 持ちうる全ての手札を切った状態でぶっ倒す、それでこそテメェに真の絶望が与えられる。


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― 新着の感想 ―
[一言] 相手が全力を出してなお勝てないって事になると、当たり前のように絶望するよな。 神にでもなりたいのなら、最も神の領域に近い、史上最強の竜王級に勝てないとなれないはずだよ。 相手の全力を、更…
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