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第27話・俺たち参加者全員分の怒りだッ!

 

 俺はここに来るまでの道中で、さらに6人のテロリストと交戦した。

 連中はなにやら自分のことを選ばれし人間と叫んでいたが、そんなのは行為の正当化にすらならない。


 魔導士モドキを1人残らず叩きのめし、ついでに元の服装へ戻してからやっと即売会ブースまで来れた。


「遅いのよ、バーカ……」


 床へ下ろしたミライが、弱々しく微笑みながら俺へ言った。


 ミライとアリサは、文字通り命懸けでこの魔導士モドキを引きつけてくれていたのだろう。

 他のブースに比べて人的被害はかなり抑えられている、ここまでやってくれれば十分だ。


「俺の……! 俺の手がっ……! クッソ、やってくれやがったなテメェッ!!!」


 手を撃ち抜かれた痛みに悶えていた敵が、周囲に大量のツルを這わせながら叫ぶ。


「やってくれた? それはこっちのセリフだ」


 ヤツは怒りに包まれているが、俺はそれ以上に怒り狂っていた。

 年に2度しかない一大イベントを台無しにされ、幼馴染と友人を好き放題痛めつけられた。


 ブチギレているのを表情に出さないだけで必死だ。


「会場で暴れているのはお前で最後だ、調子に乗りすぎたんだよ」


「ハッタリかましても無駄だ、会場中に8人はエルフ王級の同胞がいたんだぞ! そんな簡単に––––」


「だから言ってるだろ、俺が“全員片付けた”んだよ」


 顔を強張らせた魔導士モドキへ、俺は目を据えた。


「ミライ、お前の技借りるぞ」


「えっ?」


 さらに出力を上げる。


「『高速化魔法(ミーティア)』!!」


 超高速で敵へ突っ込むと、勢いそのままに魔導士モドキの胸部へ蹴りを叩き込んだ。

 骨が砕ける音と感触が直に伝わる。


「ごアァ……ッ!?」


 弾丸のように吹っ飛んだ敵は、瓦礫を蹴散らしながらフロアの端まで転がった。

 ブレーキをかけ、俺はスピードを殺す。


「あんた……、いつの間にその魔法覚えたの?」


「先週魔法実技があっただろ? その時にお前がやってたのを見てずっと練習してた」


 なお、まだ制御はイマイチできないのでスピードが出過ぎてしまう。

 なので魔導士モドキを蹴って、それでブレーキを掛けさせてもらった。


「ぐおッ……! っ! 調子乗ってんじゃねえよッ!! 青二才がぁッ!!」


 一度引っ込んだツルが、正面から10本以上束になって襲ってきた。

 すかさずハンドガンを構え、先頭のツルを中心にリアサイトとフロントサイトを合わせる。


 ––––ダァンッ––––!!


 発砲。

 雷属性魔法をエンチャントしているが、魔法力を増幅させる杖ではなくただの弾丸への付与なので、まだ加減できている。


 それでもツルの半分以上を消し炭にするが、断面部分から黄色い粉が大量に撒き散らされた。


「終わりだぜぇ……! 雑魚オタクく––––」


 見えすいた手だ、俺は手を床へついた。


「『初級炎属性魔法(レイド・ファイア)』!!!」


 自分を中心に爆炎が吹き荒れ、粉を1つ残らず周囲から燃やし尽くした。


「もしかして––––魔法の使用を阻害する神経性の毒だったりしたか? あいにく『神の矛』にいたとき、食らったメンバーを見てたから自分が吸うようなヘマはしない」


 あれは確か1年半くらい前、パーティー魔導士のミリアがこれと同じ神経毒を受けてピンチになったことがあった。

 やはり経験は宝だ。


「ちっくしょう……! ちくしょうちくしょうちくしょうッ!!! ふざけやがってぇッ!!!」


 首からぶら下げていた石のような魔導具を掴み、敵は狂乱したように叫んだ。


「こうなったら会場ごと吹っ飛ばしてやる! お前が仲間を倒したのなら、憂うもんなんてねぇっ!」


 させるわけない、俺は再びハンドガンを撃った。

 飛翔した弾丸はツルに阻まれ、ガードされる。


「拳銃なんて俗なもん使いやがって……! 魔導士に奇襲以外で通じると––––」


 言葉の途中で、銃弾のめり込んでいたツルが内側から破裂した。


「『初級雷属性魔法(レイド・スパーク)』!」


 弾へ属性魔法を付与してやったのだ。

 ヤツの周辺を、激しく雷が走り回る。


「ぐおおぁあああああぁぁああああああッ!!!!??」


 焼け焦げた床へ、膝をつく魔導士モドキ。


 ツルのガードが甘くなったのを確認して、『魔法能力強化(ペルセウス)』を解除。

 入れ替わりで『身体能力強化(ネフィリム)』を発動させる。


「これはアリサの分!」


 顎を思い切り蹴り上げる。

 前歯が砕け、血が噴き出た。


「ごぶあっ!?」


「次にミライの分!」


 全力の肘打ちを浮き上がった体……みぞおち部分へ打ち込んだ。

 血を吐き、魔導士モドキは勢いよく壁をぶち破って屋外へ飛び出た。


 敵は、最後の抵抗を試みようと身をよじっている。


「そして––––」


 俺はハンドガンを、空中の敵へ向けた。


「コミックフェスタを台無しにされた––––––俺たち参加者全員の分ッ!!」


 最後の1発を発射。

 真っ直ぐ突き進んだ弾丸は、首から下げた魔導具と......魔導士モドキの胸を一直線に貫いた。


 ハンドガン本体のスライドが下がりきり、ホールドオープンと呼ばれる状態に移行。

 全弾撃ち尽くしたということだ。


 同時にそれは、戦闘の終了を示していた。


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