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第26話・俺には全てを是正する力があるんだ!

 

 勝敗は既に決したように見えた。

 実力において、魔導士モドキがミライに正攻法で勝てる手段はない。


 なれど、決着の時は遠かった。


「まだやる気? しつこい男は嫌いなんだけどな……」


 杖に魔力を集中させながら、魔導士モドキをジッと見据える。

 早くぶっ倒してアリサの治療をしたい、こんなヤツに時間を浪費したくない。


 そろそろ終わりにしてやる!


 ミライが再び魔法を発動しようとする、だが……一歩早く魔導士モドキが動いた。


「おらよっ!」


 またしてもツルを用いた攻撃。

 既に再三退けたあとなので、怖くもなんともない。

 こんな低レベルなヤツにわたしのコミフェスが邪魔されたなんて、恨めしいったらない!


「ほんっと芸がないわねっ!!」


 苛立ち気味に叫ぶ。

 杖の魔力を放出し、細身の剣のようにして向かってくるツルを一刀両断した。


「ッ!?」


 ミライは気付く。

 切断したツルから、大量の黄色い粉がばら撒かれたのだ。

 思わず吸ってしまいすぐ、彼女は強烈な目眩を感じた。


「あ……、れ?」


 膝をつくと同時に、杖の魔力が四散する。

 なにこれ……、体に力が入らない。


「クっ……ハハ! アッハッハッハッハッハ!! ざまあああああああッ!!! ほら見たかよクソ女、思考停止して脳みそ溶けてるから引っかかるんだよ」


「なに……したのっ!!」


「凝ったことはなにも、ツルの中に軽い神経性の毒を仕込んだだけだ、まぁ、軽いと言っても数時間は魔法なんて使えないだろうがなぁッ!!!」


「あぐぁッ!?」


 上機嫌そうに笑った男は、膝をついていたミライの脇腹を思い切り蹴った。


 吹っ飛んだミライは、そのまま瓦礫に叩きつけられた。

 激痛と目眩で、手に握っていた杖が地面へ落ちる。


「これで抵抗なんて出来ねぇな、せっかくだ、同類の趣味を持つ人間への見せしめにでもなってもらうか」


 男が指をクイっと動かすと、ツルが瓦礫に埋もれていたミライの四肢へ絡みつき––––乱暴に持ち上げた。

 そのまま空中で無防備に吊るされる。


「ミライ……さん!」


 うつ伏せで倒れていたアリサはなんとか助けようとするが、ダメージで体が全く動かない。

 憤りだけが先行した。


「そこの銀髪女もよく見てるんだな、てめえらオタクの末路をよぉッ!!」


 勢いよく振られた極太のツルが、ミライの腹部へ打ちつけられた。


「ゲッホ!!」


 息が詰まるほどの衝撃に、思わず茶色の目を見開く。

 離れていったツルに代わり、今度は別のツルが真後ろからレンガ壁を砕くほどの威力で背中へ叩きつけられた。


「アガッ......ごほっ!?」


 いきなり背を殴られ、激しく咳き込む。

 休む間もなく、ミライの華奢な体をツルが襲い続けた。


「いい悲鳴だぜぇ!! いいざまだ、社会を毒する不安因子は俺の手で全部粛清してやる! 俺には力がある!! 全部を是正する能力がある!」


「ふざけんなッ……! ふざけんな!! ミライさんにこれ以上、ひどいことをするなッ!」


「お友達想いだが言葉がなってねーなぁ銀髪ちゃん? そんな頼み方じゃ茶髪魔導士は死ぬだろうなぁ」


 アリサは恨んだ、自分自身をひたすらに……!

 いくら奇襲だったとはいえ、自分が初撃をマトモにくらわなければあんな魔法全部無効化できるのに……!


 ミライを庇った上で、もっと最適な動きさえできていれば。


「クフッ、んぁ……」


 数十発の猛撃を受けたミライは、痛みで全身の感覚を無くしていた。

 口端から吐き出した唾液が滴っている。


「仕上げだな」


 コートから魔導カメラを取り出した魔導士モドキは、頬を吊り上げながらそれを瀕死のミライへ向けた。


「てめえのこの無様な姿をバッチリ収めて、ユグドラシルにばら撒いてやるよ。そうすりゃ大陸中に散らばる同類のクソ共も思い知るだろうなぁ」


 ミライは薄っすらと目を開けるだけで、もはや抵抗をしていない。


 憤慨でアリサは目尻に涙を浮かべる。

 自分にはなにもできなかった…….、友達がテロリストの餌食になるのを見ることしかできない。


 誰か、誰か!!


「たすけて……!!」


 指でシャッターが押される瞬間、轟音が響いた。

 見れば、魔導士モドキの持っていたカメラが右手ごと撃ち抜かれていたのだ。


「あっ、ガアアァァアアアアァァァアアッ!!!??」


 それは銃声だった。

 血塗れの手を押さえる魔導士モドキ。


 バラバラになったカメラが床へ落ちると同時、ミライを縛っていたツルが木っ端微塵に切り刻まれる。


 落下した彼女を––––私服姿のアルス・イージスフォードが靴裏でブレーキを掛けながらキャッチした。


「アル……ス?」


 朦朧とする意識の中で、小さくつぶやく。


「他に暴れてたアイツの仲間を全部片付けてきた、遅れて本当にゴメンなミライ、アリサ」


 ゆっくり地面へ下ろすと、アルスは全身に赤い魔力を激しく纏った。


「後は任せろ」


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