2.うっかり女神 クオリア
突然強く光ったと思った次の瞬間、体が浮き上がる感覚と共に内臓がふわっとする感覚を味わった上に瞼を閉じたのに強烈な光に目を焼かれた。
数秒経ったくらいで足が地面に着いたし、目も多少はましになったので目を開けたが・・・そこはまさにファンタジー的な光景だった。周りを見渡せば夜空のような優しくも深い闇。その中に浮かぶ白い光が何かは分からないが数えるのも億劫になるほど見え、立っているのは謎の光の足場だった。
突然のファンタジー的な展開に、動揺を抑えられない。翼も熱心とはいいがたいがラノベは読んでいた。これは異世界転移の前振りによく似ていると思い期待する気持ちと、なんか壮大なドッキリかもという警戒や不安という気持ちがこちゃまぜになりなんとも言い難い気持ちになる。
目の前には自分と同じ位かちょっと幼いくらいの金髪の美少女と、20真ん中位の釣り目の美女がいた。真ん中には足場と同じ光でできた簡素なテーブルと椅子が2脚。一つには美少女が座り、その後ろに美女が立っていた。二人ともギリシャ神話の人が着るようなものを着ており、立っている美女は剣を携えていた。
周りを眺めている俺の事を微笑ましそうに見ていた美少女に視線を合わせる。おっとりとした顔つきの美少女は、微笑ましそうな顔でこちらを見ていてすこし恥ずかしい。そう思っていたら残っている椅子を勧めるように腕を動かしながら、透き通った声で話かけてきた。
「ようこそお越しくださいました、みやさこ様。私は休息の女神クオリア。世界の狭間であるここで、異世界の勇者となられる方の斡旋を行っております。後ろのは私の従属神のフィールです。この度はとある世界からの勇者召喚の要請を受けまして、みやさこ様が選ばれました。おめでとうございます。」
「え?いや・・・ありがとう?」
グッとくる笑顔で言ってくれる自称女神。美少女の神秘的で透き通った笑顔だけでドキッとしてしまうのは年頃の男子高校生としての性か。ただこちらの混乱は深まるばかりだった。
「一応本人確認をさせていただきます。あなたの国の文字で宮迫 多救と書きますね?多くを救うと書くとは素晴らしいお名前だと思います。」
美少女が机の上に置かれていた紙をこちらに見えるように動かしながら聞いてきた。その文字を見た瞬間から嫌な予感しか抱けないが、言わないといけないと思い訂正した。
「え?・・・いや、宮に廻る 翼と書きますけど・・・。」
「え?」
その瞬間時間が止まった気がした。二人(一人と一柱)の動きが同時に止まり何となく緊張する。そのまま数秒して神秘的な雰囲気が一気に霧散した目の前の女神さまは、目の端に涙を浮かべながら周囲を見渡し始めた。
「もしかして私・・・違う人を召喚しちゃった?」
三人の空間に自称女神の泣きそうな声が響いた。