10.生きてるって素晴らしい
「動いちゃダメ!!!」
少し離れた所から知らない人の声が聞こえる。今にも振り降ろされそうな斧に恐ろしさを感じるが、動かない・・・のではなく足が震えて動けなかった。
そしてついに斧が振り下ろされ始めた。死への恐怖から顔を庇って小さくなってしまう。耳元ではギャアギャア、ギヒギヒと謎の生物の喚き声。俺は何もできずに縮こまるだけで、その瞬間が来るのを待っていた。だが数秒経っても痛みは来ず、[ガキン]って感じの硬い何かに金属を押し当てた音が聞こえてきた。
「え?」
間の抜けた声が聞こえた。いや今のは自分の声か?だが目の前の生物は俺に斧を叩きつけられなかったのが大層ご不満らしく、なりふり構わず斧を光の壁?に叩きつけている。
「何だ?これ・・・壁?」
「それは守護神の壁。外からの攻撃を完全に防いでくれるものよ。足元の魔法陣から一歩でも出たら効果がなくなるっらしいから出ないようにね?」
足元を見る。教室で見たような複雑な模様の魔法陣が足元で光を放っていた。つい女神さまに感謝を捧げてしまう。何とか周囲を見る余裕が出てきた。目の前の生物を無視して見渡すとどうやらどこかの森の中らしい。この周囲は伐採されたのか何もない空間が学校の体育館位・・・かな?広がっている。祭壇的なものは一切ない。
で、視線を横に向けると俺と同じくらいの女の子がいた。というかブレザータイプの制服着てるし、俺と同じ勇者の一人だろう。その子の前にも緑の生物が錆びの目立つ剣で壁を叩いていた。黒髪のショートヘアーが似合う、童顔の可愛い女の子だ。
「えっと君は?・・・あ、俺はたす・・・じゃない、ツバサだ。」
もう宮廻 翼じゃないことを思い出す。女の子も何とか聞こえるくらいの声量で返してきた。
「私は・・・マリア・・・です。」
女の子にしては低めの声で名前を教えてくれた。とりあえず聞きたいことはたくさんあるから一つずつ聞いていくか。
「マリアって呼び捨てでいい?こいつらが何かわかるか?」
「構わないわよ。私もため口で話すから。で、こいつらについては私も知らないわ。」
「そっか。・・・あ、じゃあちょっと待ってくれ。」
怪訝な表情でこっちを見るマリアを無視して〈鑑定〉を使おうとする。意識を緑の生物・・・ぶっちゃけるとゴのブのリンなんだろうけど、ステータス見たいし。
そうするといつか見たウィンドウとぎゃあ!?って叫んで周囲を見渡す生物を視界に収めた。・・・見たくなかったよ・・・。




