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066

「おっ、その声は! ヴィっちグバラッ!?」


「戦闘中によそ見なんて、いい度胸ね」


 男と剣を交えていた黒髪の少女がそう言っていた。少女といっても私と歳はあまり変わらなそうだ。


「っいちち。おお! ルナっちもいるじゃないか、2人とも久しぶりだな」


 少女が持つ剣は、片手でも扱えるほどのロングソードだとは思うが、それに思いっきり斬り飛ばされてにもかかわらず斬られた様子がない人は、テンション高く喋っていた。


「エルちゃんも久しぶり!」


「ん? エルっちまでいるのか。これで全員集合か! もう勇者なんて怖くないな」


「全員お集まりになられたのですか。これはこれは喜ばしいことですね」


 小柄のゴブリンが流暢に人語を話したことに私は驚いた。人語を理解して片言で喋っているゴブリンを先程見たばかりだったが、ここまで綺麗に喋られると何か怖くなる。


「何でエルちゃんはそっち側にいるの?」


「ハンナ、どうしてここにいるんだ?」


 ルナ様とコウ様の声が重なる。ルナ様はローブの人の方を向いて、コウ様はハンナ様だと思われる人の方を向いて喋りかけていた。


「あっ、えっ、な、何でコウ兄さんが?」


 確証はなかったが本当にハンナ様だった。身長が伸びているのか少し大きくなった感じがする。


「あ、あの……ですね、これには色々と訳がありましてです……はい」


 エルちゃん、とルナ様に呼ばれた人も気まずそうに答えていた。先程のグルグア……というゴブリンはエルシー様という方の名前も上げていた。という事はこの方がエルシー様でいいのだろうと私は予測する。


「あぁん、途中から入って来て何事だ? てか、あんたたちは何者だ?」


 格闘家の様で、身軽な防具を纏っている人が声を出し、次に様々な場所から声が飛び交う。

 戦闘は中断していた。いや、戦闘は暴力から言い争いに移り変わったのかも知れない。


「いやー、エルっちもいたのか。なんだよ声かけてくれればいいじゃないか」


「そ、そんな事できるわけないでしょ! 今は敵同士なんだから」


「危ないだろ、何でこんなとこに来たんだ? 勇者か? 勇者が悪いのか?」


「ち、違うよ兄さん! わたしが連れて行ってって言ったの、ユウさんは悪くないの!」


「見てたけど素早いのな。どんな動きしてるんだ?」


「ありがとうございます。これは魔王様の影響もありますね、以前の(わたくし)でしたらここまで早くないですよ」


 色々な場所で輪ができつつある気がした。


「ねぇ貴女」


「は、はい、私ですか?」


 ポツンと1人取り残されていた私に声がかかる。


「貴女たちは敵なの? 味方なの?」


 声をかけてきたのは黒髪で凛とした少女だった。近くに立ってわかったが私の方が身長は高かい。だけど彼女の方からは威圧感があった。


「え、えーっと――」


 今は魔王軍の助けのために来ているけど、説得できればとも言っていたし……。


「――敵かも知れないけど、戦いたくはありません?」


「何で疑問形なのよ!」


「ひゃぃ!? わ、私はただの奴隷ですから。ご主人様に委ねてますから!」


「……そう。じゃあご主人様はどこよ」


「あ、あっちです」


 迫力に負けてコウ様のいる方向を示してしまった。

 うぅ、思ったけどこれじゃ駄目だわ。


「で、でも今は駄目です」


 進もうと体を翻した彼女の腕を掴み、動きを止める。


「なによ、私は早く魔王を倒して帰りたいの。離してくれる?」


 一朝一夕で倒せるような言い方だった。


「もう嫌なのよ、知り合いが死ぬのは。それに私だって……」


 少女は涙を流していたのだ。


「えっ、あっ、だ、だだ大丈夫ですか」


「……ええ、ごめんなさい。ちょっと感情的に」


 掌で片目ずつ少女は拭っていた。

 その後の少女の顔はさっきとは違く感じられる。


「…………」


「あっ、どこ行くんですか!?」


 少女は無言で進み始めた。方向はお城の奥へと繋がるドアの方角だ。

 私は辺りを見回したがコウ様はまだハンナ様と話しており、ルナ様たちも同様にお喋り途中のようだ。イーロ様はゴブリンの方々と仲良くなっているようで、話している姿が見えた。

 ……ど、どうしよう。

 そう思うも少女はどんどん進んでしまう。1人で魔王の所まで行く気なのだろうか? もしそうだったら止めた方が良いのではないか? それともコウ様に一言いってから……。

 少女の近くには2人の人が増えていた。格闘家のような人と鎧を着た重騎士のような男2人組だ。この2人も私のように2人で孤立していた姿を最初に見ていたが、いつの間に少女に近づいていたのだろうか。

 少女の仲間だからか、少女は2人の姿を見るなり何も喋らず、進むスピードも変えずにドアに向かっていた。

 ……うん。

 私は行動を決めた。少女……いや勇者の後を追うことに。



 ----



「危ないだろ、何でこんなとこに来たんだ? 勇者か? 勇者が悪いのか?」


 俺はハンナに説教のようなことを言っていた。


「ち、違うよ兄さん! わたしが連れて行ってって言ったの、ユウさんは悪くないの!」


 勇者の名前はユウというようだ。だがそんな事、今はどうでも良かった。ここにハンナがいる。危険。どうしてきてしまったのか。それだけが俺の頭の中をぐるぐると渦巻いている。


「そうか。……15歳になっていたら俺も何も言わない。冒険者になっても良い。本当は危ない事しないでほしいけど、そこは堪える。だけどな、まだハンナは15歳じゃないだろ! もう少し勉強してからでもいいじゃないか!」


「そんなこと言ったって、わたしは色々知ってるよ! 兄さんが知らない事だって知ってるもん。ファンセントでユウさんに出会ってお話してたら一緒に来ない? って言われてわたし嬉しかったんだもん! わたしだって早くお父さんやお母さん、コウ兄さんのように強くなって――」


「そんな軽く誘われてついて行ったのか!? それでもし騙されていたらどうするんだ!」


 俺はハンナの言葉を遮って話し出していた。


「でも、自己紹介してくれたとき勇者ってこっそり教えてくれたもん! もちろんわたしだって最初は警戒したんだよ!!」


「ハンナ、自己防衛はできるようになったのか?」


 トーンを少し落として俺は聞く。


「えっ、で、できるよ!」


 話を変えたからか、一瞬戸惑った様子のハンナだったがそう言葉を返してきた。


「じゃあ俺と戦おう」


「え!?」


「それで俺がやられたらハンナを一人前と認める。だが俺に防がれたら俺はハンナをここから連れて帰る」


「…………わかった」


 不満そうな顔をするもハンナは了承した。

 その言葉を聞き、俺はハンナとの距離を取る。


「いつでも良いぞ」


 右手を柄にかけ、姿勢を低くし戦闘準備は万端だ。


「………………」


 ハンナは右手に持っていた小さな杖を、両手で胸の辺りに持ってきた。

 口が動いているから何かを唱えているのだろう。声が小さく何を言っているかは聞こえない。


「発動時間が遅いと自分は守れんぞ!」


 そう言いながら俺は足を動かした。

 ハンナのいる方向へ一直線で突き進む。距離を取ったと言っても10メートルほどだ。そのくらいならすぐ埋まる。そして首元に刀を突きつけて引っ張り、連れ返る! もう魔王なんてどうでも良い。

 そう考えた時だった。

 ハンナの周りに新緑の色の何かが6個浮いていたのが視界に入った。大きさは握り拳2つ分くらいだろうか。丸のような形状で、中で黄緑、薄緑がぐるぐると動いている。


「わたしだって強くなっているんだから!」


 その言葉と共に新緑の色をしたものが一斉に襲いかかって来た。

 ハンナとの距離を半分ほど詰めていた俺は、少しだけスピードを緩め飛んできたものを迎撃する態勢に入る。

 一番初めに飛んできたものを抜刀しながら切り裂く。

 新緑の色をしたものは空で2つに別れ、そこで風が舞った。


「ぬっ!?」


 どうやら風を圧縮しているようだな。

 俺はそう読み、飛んできた2つ目も切り裂いた。

 風が舞ったが風圧は弱かったのだ。だから俺は気にせず飛んできていた全てを斬り落としハンナへと足を進めた。

 ハンナはハンナで新たに魔法を唱えている途中のようだ。

 発動前に討つ!

 という意気で俺は残りの距離を詰めに走った。

 しかし、足を動かせど進めない。

 後ろを振り向くといつ出したのか、新緑の色をした球体があったのだ。しかも大きさが先程斬り落としたものの倍以上。半径50センチはあるだろうその球体は俺吸い込もうとしている。

 足を止めると体は下がっていってしまうだろう。

 前には進めず、足を止めれば後ろに下がってしまう。ならこの場で攻撃をするしかないだろう。

 俺は剣を鞘にしまった。

 ――我流、波動斬!

 無言で俺は鞘から剣を抜き、右上まで振り上げた。

 すると思った字のごとく斬撃の波動が前へと放たれたのだ。

 この技はヴィートさんの技を元に完成した技だ。原理は理解していないが、魔力を飛ばす技なのだ。遠距離技としては有能だ。魔力の少ない俺の場合は威力も弱く、スタミナも大量に持っていかれ、更に魔力不足で大体1日1回しか使えないのがネックだけどな。でも驚かせる事はできる。そうそう、魔力の放出は個人の適正もあるようだ。

 放った半透明な波動斬はハンナへと向かっていた。


「まだだよ!」


 ハンナはそう言うと、俺の後ろにあるのの半分ほどの大きさの球体を自分の前に出現させた。

 その球体に当たり俺の波動斬はあっけなく消え去り、ハンナの姿も隠れて見えなくなる。

 驚かせて魔法の詠唱を止めようとしたのだがそれは失敗だ。だがしかし、こっちから姿が見えないということはあっちからも見えないはず。

 そう思い俺は体を翻した。

 後ろにある鬱陶しい球体に、吸い込まれる力も利用して全体重をかけたの剣撃を加える。

 大きかった球体は予想よりも簡単に風となり散布した。

 これで体も自由に動かせる。

 俺はハンナの方を振り向いた。


「むっ!」


 振り向いた時には無数の小さいものが飛んできていたのだ。


「これしきっ!」


 剣を両手で持ち、斬り、弾き、流し、俺は飛んでくる魔法の弾丸を防ぎに入った。

 何十発も防いでいるが、弾は尽きることなく俺に向かって来ていた。1発1発の威力は強力ではないが、防ぎ損ねた弾が俺の体にぶつかり体力を奪っていく。そして、さっき使った波動斬のせいかスタミナが切れてきてしまっている。


「グっ」


 剣さばきがワンテンポ遅れ数発の弾を食らう。そのせいでもうワンテンポ遅れてしまう。体には無数の魔法の弾丸を貰ってしまった。

 両手で持っていた剣を右で手持ち、勢い良く振るって数発の弾丸を防ぎつつ俺は横へと転がった。弾丸の射線外へ出ようとしたのだ。

 しかし、弾丸は俺を呑みこもうと方向を変えてきた。

 見えているのか!

 そう思ったときにはもう遅い。先程と同じように弾こうとするが体勢を整えるのが間に合わない。

 剣を右手で振り回すが数発弾くのが精一杯だった。


 カランカランと俺の後方で何かが転がった音がした。そして魔法の弾丸は止まったのだ。


「こ、これでわたしの勝ちでいいかな?」


 ハンナがそう言う。

 俺の愛剣は弾かれ、後ろへ飛んでいってしまったのだ。


「……ああ、俺の負けだな」


 右手を握り、俺はそう呟く。


「か、勝った……兄さんに、勝てちゃった」


 勝ちの喜びより驚きが(まさ)ったのだろうか、ハンナはしゅるしゅるという擬音が合いそうな形で地面にハの字座りをしていた。

 その姿を見てから俺は自分の右手を見る。

 最近右手で持ったものを落とすことが多い。ハンナには悪いが、あのくらいの威力なら弾かれることはなかったのに今回は握力が尽きてしまったのだ。

 戦闘をしなさすぎて鈍っているのか?

 右手を握り、開き、を数回してもあまり力が入らなかった。

 ……魔力の使いすぎかもな。

 そう自己回答を導き、俺は座り込んでいるハンナの下へ足を進めた。


「に、にい、さん……」


 疲れているのか口で息をしているハンナの前でしゃがみ、俺はハンナの頭に左手を置いた。


「強くなったんだな」


 そう一言を言い俺は左手を動かす。

 その一言が嬉しかったのか、はたまた違う事かも知れないが、ハンナの顔は歪み、俺に跳びついてきた。

 俺も体力はほとんど使い切っている。呼吸は整えていたが、今ハンナの抱きつきに耐えられる程、足の耐久力はない。

 結果、ハンナに跳びつかれた俺は、ハンナをキャッチしながらも背中から地面へと倒れる。

 よしよし、という気持ちで倒れたままハンナの背中をさする。声は出ていないものの微かにハンナの体は震えていた。


「悪かったよいきなり怒ったりして」


 ハンナは声無く、俺の首元に顔を埋めたまま首を横に振っている。


「……ちょっと休憩したら追いかけようか」


 さっき周りを見たらこの部屋にいるのは俺とハンナだけだったのだ。みんなすでに先に進んでしまったのだろう。

 俺の言葉を聞いたハンナは、今度は縦に首を振っていた。



 ----



「いやー、エルっちもいたのか。なんだよ声かけてくれればいいじゃないか」


 ダンジオはさっきまで戦っていた相手を放置し、エルっちと呼んだ弓を持つ女性に近づいて行った。


「そ、そんな事できるわけないでしょ! 今は敵同士なんだから」


 エルっちと呼ばれた女性は弓矢を構える事もなく、口で反論している。


「いやー、でも久しぶりだな。サム坊にはもう会えたのか?」


 ヴィートとルナも2人に近づいていた。


「まだよ。ここにいるんだからサムナに会えているわけないでしょ」


「わっはっはっは、それもそうだな」


「おっ、何かその笑い方懐かしいな」


「うん、そうか?」


「そうそう、エルちゃん本気で戦ってなかったよね?」


 ルナがヴィートたちと同じように、軽い感じで質問をする。


「えっ」


 しかし、彼女の反応は重かった。


「だって元は仲間だったのよ、なのに倒すなんて私にはできなかった。だから最初の部屋で私はみんなに先に行ってもらって倒さないように戦闘不能にしたのよ! 次の部屋は間に合わなかったのだけど……」


 俯きながら彼女はそう答えていた。実際、彼女を残して進んだ勇者パーティは次の部屋までの道中に出て来たゴブリンたち倒してしまっているのだが、その事は彼女は知らない。


「というか、どうして勇者のパーティに入っているんだ?」


 雰囲気が重くなっていたからか、ダンジオは話題を変えようとしていた。


「ああ、それはね、みんなと別れた後、私は別に世界を回ろうと何て思っていなかったのよ。だからここからだと……南東方面ね、北の都市近くの森の中で1人で暮らしていたのよ」


 彼女はエルフの外見だが、龍人族とのハーフなのだ。そのせいで色々あり、魔王ことサムナと出会ったのだが、それはまた別のお話。


「森が懐かしくてね、数ヶ月かけて小屋を建てて、そこで暮らしていたわけよ。建てるまではもちろん都市の宿で寝泊りしていたけれど」


 彼女は器用なのだ。北の都市で必要な材料道具を買い森の木も使い小屋を建てていた。このお城の設計をしたのも実は彼女なのだ。

 彼女は一息入れてから再び話し始める。


「3ヶ月くらい前かしらね、お金がなくなってきたからうちの近くで魔物を討伐していたのよ、換金しようと思って。そしたら運が良いのか悪いのか特異種の魔物が現れてね、その時はラッキーと思っていたんだけど、戦い始めた時に勇者さんたちが戦闘に入って来て私と共闘したのよ。そこで知り合って、私が強かったから良かったら一緒に来ないかと言われて……いや、凄い勢いで数日間迫られて渋々了承したのよ。そうして私は今ここにいるわ」


 話を聞いていた3人は一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、その後一斉に笑い出した。


「わっはっはっは。すげぇな、どこに行くかも聞かずについて行っていたのか」


「だ、だってしょうがないでしょ、貴女の力を貸してほしい。って真顔で何日も言われてみなさいよ。私が必要とされている、それならば少しくらいは……って思っちゃったのよ!」


「エルっちらしいな」


「さすがエルちゃん! 押しに弱いのは健在だね!」


 ダンジオは笑いすぎたのか目尻に涙を浮かべながら、ルナは彼女の首元に抱きつきながら言っていた。


「てことは、エル坊が魔王の知り合いってことを勇者たちは知らないんだな?」


「……ええ」


 ばつが悪そうに彼女は答える。


「勇者だと聞いた時に言おうとは思ったわよ! でも言うタイミングがなくてずるずると……、話を聞くとユウの方にも事情があって言うに言えなくなってしまったのよ」


 ユウというのは勇者の名だ。


「……あれ? リーゼちゃんがいないね」


「ん? ほんとだ。しかもコウ坊と誰かが戦ってるぞ」


「あっ! なんでハンナちゃんと戦ってるの!?」


「そんなこと聞かれてもなぁ。あの2人は知り合いなのか?」


 と、コウたちの事を少ししか知らないダンジオは答えた。


「うん! 妹みたいなものだって言ってたよ」


「じゃあ兄妹喧嘩か」


「……なるほどねぇ」


 ぼそっと言い、1人納得したようなヴィートは言葉を続ける。


「勇者さんとそのパーティの2人もいなくなっているぞ」


 どこ行ったのかと部屋を見渡しても勇者の姿はなかった。だが、次に進むドアが開いているのが視界には入っていた。


「先に行っちゃったのかな?」


「わ、私は行きます!」


 慌てた様子で彼女は駆け出した。


「勇者が心配なのか、それともサム坊か……」


「どっちもじゃない?」


「だと思うな。エルっちはお人好しだからな」


「だな、魔王軍なんか向いていないよな」


 そう言いながら3人も彼女の後を追うように部屋から出て行った。



 ----



「見てたけど素早いのな。どんな動きしてるんだ?」


 インディロは近くにいた背の低いゴブリンに話しかけていた。


「ありがとうございます。これは魔王様の影響もありますね、以前の(わたくし)でしたらここまで早くないですよ」


 低姿勢で答えるゴブリンに内心驚きつつもインディロは言葉を返す。


「魔王の力?」


「はい、魔王様は近くにいる魔物に力を与えてくれるのですよ。代わりに理性が奪われる事もあるのですが」


 淡々とした口調でゴブリンは答える。


「へぇ~……因みに理性を失った奴らはどうなるかとかって聞いてもいいのか?」


「もちろんですとも。初代魔王軍のお仲間様なのですから(わたくし)たちはもう仲間だと思っておりますので。して、どうなるかと言いますと、理性のなくなった者たちは処分されます。これは魔王様の下した事で(わたくし)たちは全員理解の上でここにいるので気にしないでくださいませ」


「そ、そうか」


 苦い表情でインディロは返事を返していた。


「我ラハ何ヲスレバイインダ?」


 そんな所に巨体なゴブリンが入ってくる。


「そうですねぇ、(わたくし)たち単体で戦っても勝てそうもないですし、幹部2人が殺られているのは悔しいですがここは様子を見ましょうリーダー」


「……ソウカ」


 リーダーと呼ばれた長身のゴブリンは、片手ずつで持っていた自分の同じほどの長さの2つの大剣を定置の背中へとしまっていた。


「……2人は勇者たちが憎いか?」


 インディロはそう聞いていた。


「ええもちろん」


「仲間ヲ殺ラレテイルンダカラナ」


(だよな。でも俺たちは勇者たちを殺す気で来ているわけではないんだよな……)


 止める、という名目でここまで来たわけだ。飯屋の人に言われた言葉を思い出しどうしたものかと表情には出さずインディロは悩む。


(戦闘不能にしてしまえばいいのか。そして勇者たちを担いで帰れば……駄目だな、魔王の力もあるし勇者たちはまたここに来ちまうかもしれねぇな)


「あいつらを殺さずに追っ払う、という事をしようとか思うか?」


「……魔王様直々のお言葉でしたら(わたくし)たちは何も言えませんね、なんせパワーアップしたのは魔王様のおかげ、昔のままでしたら(わたくし)共は既に勇者共にやられていたでしょう」


「そうか……」


 小さいゴブリンの言葉に耳を傾けつつ、言い策は出てこないかとインディロは辺りを見回していた。

 リーゼロッテと勇者、魔王の四天王、コウとハンナ、勇者の兵士たちというグループに分かれているのが見て取れる。

 その中でコウとハンナが距離を取っている姿に目が行った。


(何してんだコウの奴は?)


 コウは距離を取り少ししてハンナ目掛けていつでも抜刀できる姿勢で走りだしていた。ハンナは小さい杖を持っている。


(……何で戦ってんだ!? こんなとこにいたから叱りに行ったのかと思っていたのに…………あっ、もしかしてシュリカと重ねちまったのか!)


 冒険者では良くあることなのだ。大事な人を戦いの中で亡くすと他の人もそうなってしまうと思い込んでしまう。それで戦闘をやめる人も多いのだ。


(……まぁ2人はほっておいても大丈夫だろう)


 そう思い再び周りを見るとリーゼロッテと勇者、勇者の兵士の姿がなくなっていた。魔王の四天王の人たちがこの部屋から出て行く瞬間も見えた。


「オレたちも行くか」


 そう言葉を発したがインディロの周りには誰もいない。今この部屋にいるのは、部屋から出て行こうと走っているゴブリン2体とインディロとコウ、ハンナだけであった。


(あ、あいつら、声くらいかけていっても良いんじゃないか?)


 インディロも先へと進もうと動き出す。

 部屋を出た頃に、さっきまでいた部屋の真ん中あたりに新緑の色をした球体が出現していた。



遅ればせながら、あけましておめでとうございます! 閲覧ありがとうございます!!


はい、更新が遅くなってしまいました、すみません。

言い訳を言うと、年末年始忙しく、それプラス集中力が続かない&良い展開が思いつかないという事により遅くなりました。なので、今回はゲームのせいではありませんよ。……最後の一言はどうでもいいですね。

それとそれと、前回の話数ずれていたのを8日に気づきこっそり直しました。


もう少しで終わると言っておいて更新が遅くて中々ストーリーが進んでませんが、今年もよろしくお願い致しますm(__)m

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