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065

「みんな装備は万全か?」


「もちろんよ」


「おう」


「うんっ」


「は、はいっ」


 俺が聞くと1人だけ緊張が混じっているのか声が裏返っていた。

 雪化粧をした森にそびえ立つ城。城そのものも雪を被り白く染まっている。

 その城の前に、今俺たちは立っていた。

 この城は俺たちが街を出た北門の所からすでに見えていた。外壁のせいで街中からは見えなかったのだろう。

 俺たちは街を北から出て5分ほど歩き、森へと突入した。街道をそのままずっと歩くと海沿いの港町につくらしいが、そっちに行く用事はないからどうでもいいな。

 森の中ではヴィートさんが先陣を切り、雪を飛ばし草木も切り……いや、殴り飛ばし道を作ってくれていた。魔物も出たが、前方から来たのは虫を潰すがごとくワンパンで仕留め先に進む。他の方向から来たのはルナが魔法で蹴散らしていた。

 向かうとこ敵なしだなこの2人……。


「そんじゃあ行きますか」


 ヴィートさんがそう言って、俺たちは城の門をくぐる。

 この城には裏口はないらしい。どうしてかというと、そんなこと考えもしなかった。だそうだ。それに、ここに冒険者たちが入って来るということも想定してなかったので、トラップを作ったのは良いが自分たちにもその脅威がある事になり、出掛けたりすると、避けるのに慣れるまではよく壊してしまい、エルちゃんに起こられていたよね。とのルナ談だ。最終的には、行きは窓から飛び出していたそうだ。

 トラップを作れるのならどこかに新しくドアを作っていも良いと思うのだが、それほど他の人に入られたくなかったのかな? 確かに人の家に入って来て倒しに来たとか言われたら嫌だしな、それが裏口からだったら寝首を掻かれてしまうかもしれないし、良い判断なのかも知れない。

 ドアに鍵を、とも聞いたが昔やってたけど壊されちゃうんだよね。との事だ。

 ……なんか悲しいな。

 まぁそんなことはさておいて、城に入った俺たちがまず目にしたものは通路の真ん中で止まっている大槌だ。次に目がいったのは通路の両脇に一定間隔で置いてある蝋燭。窓は視認できない。蝋燭が無く、入口のドアも閉まっていたらここは真っ暗になってしまうと思う。


「……あれ? 壊れてるね」


「ほんとだな。こりゃ楽っちゃ楽だが、誰かが侵入してるな」


「あの店員が言ってた人たちか?」


「……かも知れないな」


「だけどよく止めたよね。これ動きだしたら常に動いているから誰かが受け止めたりしないと真ん中には止まらないのに」


 常に……メトロノームみたいな感じなのかな。今は壊れているらしいが、本当はこれが動いて、来た人を壁に叩きやるようだな。


「早く奥に行くか」


「うん!」


 ヴィートさんとルナはそう言うと先に行ってしまう。


「あ、ここに落とし穴あるから気をつけてねー」


 先に行っていたルナが教えてくれた。

 俺はルナが言っていた場所まで行き下を見てみる。


「ひっ」


 隣でリーゼがそう漏らしていた。

 そこには鋭く尖った円錐の、銀に光る針が幾本も敷いてあったのだ。中には錆びているのか赤銅色になっているのもある。だが、リーゼが声を出した理由はそこではないだろう。

 そう、下にはいくつもの頭骸骨が落ちていたのだ。

 穴の近くに道はない。この穴を飛び越えるしか通る方法はなさそうだ。足が竦んだり、躊躇してしまうと飛距離が足りず落ちてお陀仏、なんてこともあるかも知れない。


「下を見ないで走ってジャンプすれば余裕だよ」


 隣で下を見ていたリーゼに言う。

 この穴の幅は2メートル程だろうか。助走をつければ余裕そうだ。

 というわけで、最後まで落とし穴の前にいた俺とリーゼだが、俺が数歩下がり、走って落とし穴を飛び越えるとリーゼも真似をするように走って飛び越えることに成功した。それから先に行っていた3人に追いつこうと足早に進んだその先には部屋があった。ドアは開いている。その部屋の前でルナたち3人が立ち尽していた。


「こりゃ、また……」


 ヴィートさんがそうぼやいている。


「……こいつらは魔王軍ってことでいいのか?」


 イーロも困惑した口調だ。

 部屋を覗き込むとゴブリンが倒れている姿が見える。消えていないということは死んではいないのだろう。その近くでゴブリンを介抱しているゴブリンの姿も見られた。


「グァ……オマエタチモココヲトオルノカ」


 ――!!?

 俺は息を呑んだ。1体のゴブリンが俺たちの方を見てそう言葉を投げかけてきたのだ。


「ま、まじかよ。これが魔王さんの力……なのか?」


「あ、あたしはこんなのは知らないよ」


「ああ、おっちゃんもだ」


 みんなが聞こえているということは俺の翻訳能力ではないらしい。イーロが驚くのはわかるが、ルナとヴィートさんまで驚いているとは。

 人語を喋ったゴブリンの近くで他のゴブリンが慌ただしく何かを喋っているようだが、俺の翻訳能力をもってしても魔物の言葉わからない。


「コレイジョウハダレモトウサン。ワレハ、マオウグン、ゴブリンタイガシテンノウノヒトリ、グルグア、ダ! ココヲダマッテトオスワケニワイカナイノダ!!」


 傷ついた体を起こし、ゴブリンはそう言ってきた。

 グルグア……名前まであるようだ。


「新たな四天王みたいだな」


 イーロがそう言いながらゴブリンに近づいて行く。


「オレたちは魔王の仲間だ! まぁそう言っても信じられないと思う。だが聞いてはいないか? 魔王軍にも四天王がいたということを」


「グルグアガキイテイルノハ、ルナサマ、ダンジオサマ、ヴィートサマ、エルシーサマ、ダ。ダンジオサマハスデニキテイル。オマエタチハダレダ」


「はーい、あたしがそのルナって人だよ」


「で、おっちゃんがヴィートだ」


 イーロに続いて歩いていたルナとヴィートがそう答えた。もちろん俺とリーゼも2人の後ろを一緒について行っている。

 確かめるように2人をジッと見つめたグルグアは再び近くのゴブリン同士で話し始めた。俺たちには何を話しているかわからないが、相談してくれているんだろう。


「カカ。トオレ、グルグアタチハユウシャニヤラレタ。ナカマモイッパイウシナッタ。カタキヲトッテクレ……」


 そう言うと、グルグアは無理して立っていたのか力尽きたように後ろへ倒れていってしまった。


「お、おい」


 ヴィートさんがそう声をかけると片腕をあげ、親指を上げている。


「取り敢えず大丈夫そうだね」


「なかなかの根性だな」


「んじゃあ通らせていただきますか」


 介抱しているゴブリンたちの横を通り、俺たちは部屋から出た。

 もし、ここにいたのが偽物のルナやヴィートさんだったらどういう反応をしていたのだろうか? 同じように通していたのだろうか? そんな事を考えながら俺は前に進んだ。

 出た先には階段がある。


「……そういえばダンジオ、さんが来ているそうじゃないか」


 俺は先程の言葉を思い出し、そう言った。


「ダンちゃんは意外と情報通だがらね」


「そうだな。なんでも冒険者は情報も大事だからな。とか言ってたよな」


 階段を上りながら話していると先程と似たようなドアに突き当たる。


「……中から音はしないな」


「勇者……様たちはもう進んでしまったということなのでしょうか」


 リーゼの事だから勇者に様をつけるのはどうなのかと思ったのだろう。今は魔王軍に加勢しているからな。それでも結局様をつけるところがリーゼらしいとも思うぞ。


「かも知れないな。入ってみよう」


 入ってすぐ戦闘ができるように体勢を数秒で整え、ヴィートさんのアイコンタクトを受けてからドアが開かれる。

 俺たちは一斉に入り辺りを見渡すが、この部屋はもぬけの殻となっていた。


「……新しい戦闘痕があるね」


 ルナがそう言う。

 この部屋には黒く焦げた跡や地面に入った亀裂など、俺から見ても新しそうだと思える傷が入っていたのだ。


「じゃあここを守っていた奴らは全滅か……」


 と言うヴィートさんの声が聞こえた。

 そう考えるとゴブリンたちが生き残っていたのは凄いと思う。最初の部屋で勇者たちも全力で戦える場面だぞ。魔王の魔物の凶暴化の力はそれほどなのか。


「ってことはすでに魔王さんと戦ってるかもしれないってことか?」


「!! 早く行かなきゃ」


「簡単にやられはしないと思うけどな。まぁ早く行って戦う前に和解したいものだ」


 思ったのだが、聞いている話だと魔王の人も何も悪い事やっていないんだよな。ただいるだけで害悪とか災難すぎる……あっもしかしてこれが呪いってやつなのかも知れないな。昔リーゼから簡単に聞いていたがすっかり忘れていた。……ということはルナも呪いなのか?


「コウちゃん、置いていくよ!」


「あ、ああ今行く!」


 考えていたら足が止まってしまっていた。

 ルナに呼ばれて俺は考えるのを後回しに、この部屋を抜けてみんな駆け足となって通路を進んでいく。


「ここが次の部屋だ」


 そう言うや否やバンッ、と勢いよくヴィートさんは扉を開けた。


「……何もないですね」


 リーゼが最初にそう言った。


「戦った痕跡もなさそうだな」


「だね」


 イーロの言葉にルナも頷く。


「次で最後の小部屋だ」


 ヴィートさんはそう言いながら部屋の出口へと進んでいた。

 ……これ俺いらないんじゃね…………。

 今更ながらそう思ったが、ここで置いていかれるのも困るので最後尾をリーゼと共について行く。

 部屋を出ると今度は螺旋階段だ。くるくると階段を上ると再び部屋に突き当たる。


「ここにいなかっ――」


 ヴィートさんの言葉の途中でどこからか激しい金属音が聞こえてきた。続いて爆発音なのか、ドカンドコンボコンとも音が聞こえる。


「……戦闘中か?」


 俺がぼそっと呟いた。


「みたいだな。勢いで入って一旦沈黙させるか」


「その前に状況確認できないのか」


「ちょっとだけドア開けて見ようよ」


「だな」


 ヴィートさんが音をたてないように気をつけながら微かにドアを開けた。

 そこから俺たち全員は縦になり覗き込む。下からルナ、リーゼ、俺、イーロ、ヴィートさんという順だ。

 ………………。

 誰も言葉を発さなかったが、部屋の中は予想通りの戦闘中。

 奥のドアを通らせないように3人の……1人と2体の人とゴブリンが、俺たち側にいる人たちと戦っているのがわかった。人の方がダンジオという人なのかもしれない。それに、ゴブリンたちは、高速で動いている小さいゴブリンに、堂々と二刀を振り回している巨体なゴブリンと体格差が激しい。

 俺たちに近い方の人たちが勇者様方なのだろう。人数は女3人に男2人の5人パーティだ。


「………ん?」


 覗き見てから俺が一番に口を開いていた。

 一番後ろで支援のような事をやっている人の後ろ姿を見たことがあるような気がしたのだ。


「どうかしたか?」


 上にいたイーロからそう聞かれる。


「……あれ? あれってエルちゃんじゃない? それにあの子は、ハンナ、ちゃん?」


 俺がイーロに返事をする前にルナがそう言った。


「やっぱりハンナなのか!!?」


「エル坊だと!!」


 俺とヴィートさんが大きめの声を出してしまったが、戦闘音にかき消されたのかまだ見ていることはばれてないようだ。


「す、すまん」


「わるい」


 大声を出したことについて、俺とヴィートさんは小声で謝る。


「あのローブを着た弓使いか? でも何でエル坊が冒険者側にいるんだ?」


 どうしてハンナがいるんだ? 学校は? もう卒業したのか?


「わかんないよ。でもフードまでかぶって顔隠そうとしてるし、何かあるんじゃないかな?」


 第一、なんで勇者のパーティに入っているんだハンナは?


「良くわかんないけど、あの弓使いが元魔王軍で支援職の娘がハンナちゃんだと。……まあ言われてみればハンナちゃんっぽい後ろ姿だけど……」


 てか、ハンナはまだ15歳じゃなくないか?


「な、何でハンナ様がこんな所にいるんですか!?」


 冒険者にもなれないのに何でいるんだよ、危ないじゃないか!


「もう乱入しようぜ! 元仲間同士の戦いとか胸糞悪くなりそうだ」


 ハンナは自分から行きたいと言ったのか? それとも無理やり誘われて従わざるおえない状況だったのか?


「だな! 行こう」


 状況によっては勇者に一言文句を言ってやらんと気がすまんな。


「うんっ」


 勇者はどいつだ? あの鎧を着ている男か? それとも小柄なゴブリンと戦っている格闘家っぽい男か?


「わ、わかりました」


 いや、お店の人は女の子って言ってたな。じゃあダンジオとかという人と戦っているロングソードの持ち主が勇者なのか? それとも小柄なゴブリンに援護射撃をしているローブの人か?


「ようよう、みなさんお揃いで!」


 大きな声で我に返った。


「ん? ……あれ?」


 気づくと俺の上と下から部屋の状況を見ていた人たちは部屋に入っていたのだった。


閲覧ありがとうございます!


とあるゲームにはまってしまっていて執筆速度が遅くなっております、ゴメンナサイm(__)m

……なので今回は短めです。

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