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次はセーターにしよう

 食の改善に伴って、樹海の探索範囲をさらに拡げる。今まではオー窟と押入れ草の群生地を結ぶルートと、崖に向かって右方向のルートにしか探索していなかった。なので今度は左方向にいってみることにした。手作りシャツの上にローブを羽織り、ズタ袋を背負う。腰にナイフを差して用意は整った。崖に沿って進んでいく。


 およそ1時間程進むと、さらさらと水の流れる音が聞こえてきた。今は相変わらずの鬱蒼とした樹海の中だが、前方からは明るい光が差し込んでいる。急ぎ足で近寄っていくと、少し開けた場所に幅1mぐらいの清流が流れていた。深さはひざ下ぐらいまでしかないが、大発見といっていいだろう。

 疲れていたこともあって、少し休憩をとり喉を潤す。美味い。魔法で出した水もいいが、自然の水はまた格別だ。前者に味はないが、自然の水はほのかに甘みがある。そういえば家の水道水もそうだ。オー窟の水道ってここから引かれているのかもしれない。

 ふと、この清流を辿っていけば、何処かの村に着くかも知れないという思いに至ったが、その村が以前出会った第一村人がいる村だったらどうするという思い(トラウマ)に至り、断念した。許せ、全ては俺の弱さが原因なんだ・・・。

 清流を辿って少し降ると徐々に支流が集まり広がって滝となっていた。滝壺は半径10mぐらいの楕円の形をした水溜りだった。魚がいそうだ。いい所を発見した。よし、今日はここまででいいか。




 オー窟に戻ると、早速網の準備に取り掛かった。網を編む技術を何故俺にあったかというと、小学校4年生で親父と一緒に参加した『夏休み親子ふれあい体験教室 ~投網(とあみ)をつくろう~』に参加したからだ。昨年の結果に一定の評価を示した父親が、既に夏休み前から申し込んでいた。申し込む内容は、多分何でもよかったんだろう。ワークショップの最後は、手作り投網を近所の川で投げる所までいったのだが釣果はゼロだった。それまで馬鹿みたいにはしゃいでいた俺も流石に現実をみた。そして子供ながらに思ったものだ。お父さん、物事には慎重にあたってね、と。懐かしい思い出だ・・・。


 ・・・うん、なんとかいけるか。ストックしてあった荒い麻糸をとりだす。まずご理解頂きたいのは、網を編むためにはこれまで行っていた普通に布を編む方法ではできないということだ。投げた時に形でいうと円錐に広がらなければいけないのだ。しかも、投げてから網の端が沈んでいく速度が全て平行でなければ魚に逃げられてしまう。つまり投網は、投げて網の端をどれだけ同時に水面に着水させ、かつ魚が逃げられないほどの強度と細かい目をつくるかに掛かってくる。要するに、投げる技術、編む技術、細かい目、網の強度、網につける重しの重量の5点が重要だ。


 重しは土魔法で均一の岩がつくれる。似たような石を使えばいいのだろうが、コンマ何gというと、やはり魔法を使った方が正確だ。投げる技術は回数をこなすことで解消できるだろう。強度は荒い麻糸では問題ない。水を吸うと超硬い。細かい目は、ワークショップで学んだのだが、簡単な定規が必要だ。しかし、これも土魔法で補える。最後に残った編む技術だが・・・かろうじて"本編み"と"蛙また結び"は覚えていた。これらの結果から総合的に判断すると、つまりイケると。


 まず糸で円をつくる。その円を魔法で造った定規を当てながら測った同じサイズのUの字で囲っていく。一周したらさらに編み方でいう本編みでU字の下の部分に更にU字をつないで一段つくる。次の段からは上の段のU字の下に蛙また結びを結んでU字をつくる。3m×3mぐらいになったところで止め、網の端に土魔法でつくった200gの岩を結びつけていく。石10個を結び、一気に重量が増えた。抱えてみると結構な重さだ。腰がやばい。片手で持って身体の一方に負担をかける使い方はよした方が賢明だ。出来た網をズタ袋に入れ、その日はイメージトレーニングだけにしておく。今使うと明日筋肉痛になりそうだ。早めに就寝した。




 ・・・夜明け前、魚を釣るには早朝だろとの意気込みの元、滝より少し手前の清流にいた。ズタ袋から取り出し、とりあえず第一投を投げてみる。感覚がよく分からない。案の定、手前が早く着水し奥はだいぶ遅く着水した。ずる、ずる、ずる、ずる、引き上げる。物の見事に一匹もひっかかってなかった。了解した。第二投を投げ入れた。・・・第20投を投げ入れて、ようやく一匹かかった。15cmぐらいのニジマス似の魚だ。やっとかかった。腰が限界に近い。太陽?はすっかり空へと顔を出していた。

 では、本日の漁の締めくくりにと、念願の滝壺で投網を試みる。ずる、ずる、ずる・・・やった、4匹かかった。あんまり狩りすぎても魚が集まらないだろうし、釣果としては上々だろう。ズタ袋に移し帰途についた。



 エプロンを引っさげ、今日の釣果を調理台に並べる。ニジマス似の魚5匹。さて、どうするか。2匹は刺身、2匹は焼き、1匹は煮込みか。どれも食欲をそそる。早速やってみよう。調理に於いて焼き物が一番時間がかかるためまず細い木の棒をW←魚がこんな形になるよう通し火にくべる。何故こんな形に通すのかというと、焼きの途中で身がやわらかくなり崩れ落ちないようにするため骨に串を絡ませるからだ。刺すには意外とコツがいる。学生時代に調理場のバイトをやっててよかった。2匹を火にくべると、土鍋に一匹入れどんな出汁がでるか確かめてみた。・・・うん、味噌が必要だ。和食に味噌は不可欠だ。味付けに味噌絡ませたら大抵なんとかなるもんだ。魚臭さも消してくれ、野草臭さも消す。鍋に適当な食材放り込んでも味噌入れとけば味噌鍋で済む。ぶっちゃけ、ちゃんこって全部味噌の御蔭じゃないか?味噌の有り難みを改めて思い知る・・・。

 無い物は仕方ない。川魚のスープが食えるか否かの瀬戸際だ。現時点では・・・無理だった。

 2匹を刺身にしようと思ったが、川魚は寄生虫が多かった事を思い出し魔法を唱える。

 「炎が川魚の寄生虫を焼く」

 片方がびくびくと動く。・・・やっといてよかった・・・。

 安心して身を開き洗って、刺身にする。切れないナイフでやるため身はボロボロだ。付けるものは何もないが、結構美味い。焼き魚は大層美味かった。鍋の中身は大地にお戻り願った。



 ・・・醤油で思い出したが、人間の生活には塩が必需だ。次の目標は塩にするか。

プロット達成率9.2%

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