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第三十一話 会敵

遂に作戦開始。紅たちは4つの部隊に別れ、《影の箱庭》を壊滅するため、魔物の蔓延る島を進む─────

『...おい悠仁(ゆうじ)。今いいか?』


「?はい、大丈夫です」


太刀川(たちかわ)隊』の悠仁(ゆうじ)の元に、珀治(はくじ)から個別無線での連絡が入る。


「どうしたんですか?こっちは問題なく上陸しましたよ」


『あぁ。それはこっちも順調だ。それより、お前には言っておくことがある。』


いつになく神妙な調子に悠仁(ゆうじ)は疑問が浮かぶ


『いいか、よく聞け。お前の班にいる佐々木銀次(ささきぎんじ)は、例の裏切り者の可能性が高い。』


その言葉を聞いた瞬間、悠仁(ゆうじ)は驚きと共に戦慄する。


「は!?何を急に...」


『詳しいことは後で話す。とにかく、奴の動向には注意しとけ』


そして無線が切られる。


(最後の希望(ラストホープ)が、裏切り者...?)


今、目の前で胡散臭い笑顔で(はやて)にだる絡みしている(完全に無視されている)男が、件の裏切り者の可能性がある。悠仁(ゆうじ)は密かに、銀次(ぎんじ)への警戒心を強めた



「スキル!『爆炎咆哮(ばくえんほうこう)』!」


桜花(おうか)の爆炎が、魔物の群れを木々と共に焼き払う。


「ねぇ、なんか魔物ばっかりだけどホントにあってる?」


「本来ここはそういう所なんだよ...」


上陸から数分。魔物相手ばかりで飽きてきた桜花(おうか)(こう)に愚痴る。

先程から出てきているのはC危険度(レート)級魔物のワイドウルフや、ハイコボルト、オークなどの三等級の上位や、準二等級程度が部隊を組めば難なく倒せるレベルばかりで、先日二等級に上がった桜花(おうか)ならば大群を相手にしても物足りないだろう。とは言え島全体が《(ゲート)》の影響を受けているだけあって油断できる場所でもないことは確かである。


「まぁ確かに、少々手応えがないな」


「ワタシ達にかかればなんて事ないデース!」


(かなめ)とアリューシアも、油断しているわけではないが、気が抜け気味である。

というのも今回の作戦に参加している選抜メンバーは最低でも二等級以上の実力者、加えて南部戦線は、他戦線に比べても血気盛んな隊員の割合が多く、実力も折り紙つきである。それだけ戦力が揃っていれば、難攻不落と言われた与那国島の攻略も容易ということである...あくまで()()()()()()()であればだが。

その時、(こう)は目の前からどす黒い殺気を感じ取る


「全員跳べ!」


瞬間、大量の海水が押し寄せてくる


「な?!...ぐぁぁぁぁ!」


反応が遅れた隊員の数十名が水圧で吹き飛ばされる


「チッ!早速お出ましか...!」


そこには身の丈程の三又槍を携えた少女が森から歩いて来る


「やっと来てくれた...また会ったね、桜花(おうか)お姉ちゃん?」


レビアタンが、屈託なく笑う


「レビアタン...!」




「チッ!ほんとにこれで合ってんのか」


魔物の大群を切り開きながら珀治(はくじ)はぼやく。


「まぁ現状これで行くしかねぇでしょう。おい、霧女、霧濃すぎだ。」


射手座ノ加護(いてざのかご)』で魔物を撃ち抜きながら、王介(おうすけ)が答える


「はいはい、戻しますよーだ。でもぉ確かにさっきから魔物ばっかりよねぇ」


(かおる)が霧に惑う魔物を切り裂きながら同調した

すると、後ろから複数の魔術が飛来して、魔物を焼き払う


「もう!皆さん、集中するのですよ!」


水木(みずき)が呆れ半分に注意する。


「ったくわーってるよ...奴らが出てきてくれりゃあ早いんだがなぁ」


そんなことをボヤきながら、珀治(はくじ)は裏切り者と疑う銀次(ぎんじ)の方に意識を向ける


(今回の作戦中に正体を暴きてぇんだが、悠仁(ゆうじ)には頑張ってもらわねぇとな...)


そんな思考にふけっていると、突然、目の前の空間が歪む。

さらにそこから全身刺青の男が出てくる...と同時に珀治(はくじ)に拳が飛んでくる


「クッ...!?」


「な!?一体何が...!?」


珀治(はくじ)さん!」


すると拳の主は怒声をあげる


「あぁ?!クッソが!止められたじゃねぇか!」


全身に刺青の入った大男、サタンは、後ろに向かって言い放つ


「サタンさんのパワーが足りんかっただけでしょう。八つ当たりは勘弁してください。」


気だるげな細身長身の男、ベルフェゴールがだるそうに息をつく


「...いってぇな。いきなり殴るやつがあるかよ」


何とか受けきったものの、少しよろけた珀治(はくじ)が大剣を構え直す。


「おうおうてめぇら!俺様は《七大罪(しちたいざい)》が1人、《憤怒の罪》サタンだ!よく覚えとけ!今からてめぇらをぶっ殺すやつの名だ!」


サタンも、背中にかけた大剣を片手で引き抜く


「お前ら、あいつは俺がやる。お前らは向こうの長身を頼む。」


「!...了解!」


そして王介(おうすけ)達はベルフェゴールの方に向き直る


「え、こっちもやんの?めんどくせぇなぁ...」


するとベルフェゴールは、だるそうに長杖を構える。


「さぁ!名乗れ!そして殺し(やり)合おうぜ!」


「...《MAA》南部戦線第一戦隊戦隊長、泉珀治(いずみはくじ)だ!」


サタンと珀治(はくじ)の大剣が激しく打ち付け合う



太刀川(たちかわ)隊』悠仁(ゆうじ)は、ずっと銀次(ぎんじ)を警戒していた。だからか、本来の敵への警戒を怠ってしまった。

眼前、ギザギザと牙の生えた子供が大口を開けて突進してきた


「!?」


「いっただきま───」


すると、間に(はやて)が割って入り、双剣で弾き返す。


「いったぁ!おにーさんひどいよぉ!でも今のすごいね!どうやったの!?」


まるで好奇心旺盛な小学生のようにはしゃぐ少年、ベルゼブブがルンルン気分でとびまわる


「すみません!太刀川(たちかわ)さん...」


「...気にするな」


すると、今度は後ろから妖艶な美女がゆっくり歩いてきた


「また来ました!」


「なんや、えらいべっぴんさんやないか」


すると女、アスモデウスはやけに色っぽく微笑む


「あら、お上手ねぇ。でもごめんなさいねぇ、あなたたちには死んでもらわなきゃ。ほんとにもったいないわぁ」


(はやて)は双剣を再び構える


「皆、構えろ...戦闘開始だ」



その頃、『桜隊』も《七大罪(しちたいざい)》と会敵していた。


「おいおい!あん時の最強さんじゃあねぇか!俺様は運がいいなぁ!」


両手に鋭利な鉤爪の生えた男、マモンが高笑う。


「それは、不運の間違いじゃあないかい?」


愁翠(しゅうすい)も刀に手をかける。その時、マモンの視線が、僅かに別の方に向いたのを、瑛介(えいすけ)は見逃さなかった。


「へぇ、じゃあその言葉、そっくりそのままお前に返すぜ。ほんと()()()()()()


それが()()()()()()()()()()()()()()


「総隊長!」


すると、愁翠(しゅうすい)の胸を、後ろから刀が貫いた。


「ガバッ...!...そうか、お前、だったか...」


そのまま、愁翠(しゅうすい)は、血を吐き倒れる


「え...なんで...?」


朱音(あかね)は完全に困惑していた。

代わりに瑛介(えいすけ)がその男に声をあげる


「裏切り者はあなただったんですか!十四郎(とうしろう)さん!」


十四郎(とうしろう)は、返り血に染った刀を払うことなく、ただ静かに、どこかを見据えていた。

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