File14 -汝は人間也や?
……ん、君か。いらっしゃい。
よく飽きずに来るもんだよ。
それとも私に会いに来ているのかい?
……なんてね。話を聞きに来たんだろう?
ちょっとした冗談だよ。
勿体ぶるのもなんだし、早速始めようか。
題して「汝は人間也や?」。
◇◆◇◆◇◆
これは、ある男子高校生の話だ。
彼はタイムリープ能力を持っていた。
「時をかける少女」は知ってるかい? あれを思い浮かべてもらえばいい。
ただし、あちらのように回数制限もなければ、条件も特にない。
──そう、無制限だ。
彼は望むたびに、一時間ほど過去に戻ることができた。
ただし、まったく同じ世界に戻れるわけじゃない。
戻った先では、ほんの些細な「差異」が生まれるんだ。
テストの問題が一問だけ変わっていたり、バスの座席の埋まり具合が違っていたり。
なぜそんな超常的な能力を持っているのか、それはわからない。
……この世界では珍しいだけ、かもしれないが。
少し脱線してしまったね。
話を戻そう。
彼は、いわゆる完璧主義者だった。
その性格とタイムリープの相性は、驚くほど良かった。
だってそうじゃないかい?
0か100でしか物事を評価できない性格と、過去に戻れる能力。
一度失敗したところで、また戻ってやり直せばいい。
そうだろう?
だから彼は失敗したと感じたら、そのたびに過去へ戻った。
戻ったことで生じる差異すら計算に入れて、常に"満点"を狙っていた。
遅刻しそうな朝、テストで100点じゃなかった時、誰かと喧嘩した時……。
彼の評価を脅かす様々なトラブルや失敗を常に回避していた。
取るに足らないことでも、すべてに於いてだ。
事実、周りの評価はとても高かったそうだよ。
そつなくこなす優等生といった感じでね。
そして、その力は部活でも発揮された。
彼はサッカー部のエース。ハットトリックも決めた名シューター。
試合に負けたとしても、戻ってやり直せば「勝ち」に書き換えられる。
記録上は、申し分ない名選手だった。
──だが、ある試合で彼は壁にぶつかる。
全国高校生サッカー大会。
そのベスト8を賭けた一戦。相手は大会連覇中の強豪校。
地力の違いはすぐに現れる。
勝てないんだ。
パス回し、守備の連携、選手同士の練度……すべてが格上。
もちろん、彼は納得しない。
評価を落とすわけにはいかないし、なにより──勝ちたかった。
だから彼は、やり直す。
しかし……勝てない。
何度やり直しても、戻ることで生じる差異を考慮しても、なにをしても勝てない。
それはそうだよね。
あくまで戻るのは彼だけ。そしてサッカーはチーム競技。
彼だけ相手を"理解"しても周りに伝わらなければ意味がない。
それを知ってか知らずか――おそらく後者だが――彼はやり直し続けている。
試合終了のホイッスルは、鳴ることはないんだ。
◇◆◇◆◇◆
今回はあっさりした話だったかな。
それでも楽しんでくれたなら良いんだけど。
……タイトル?
「あれが何の問いか」ってことかい。
ただの私の感想だよ。
よく"幽霊は生前の行動を繰り返す"と言うだろう?
だとすれば、同じ一時間を繰り返して、何度も同じ行動をやり直す彼は──
本当に"生きている"のかな、って。
人間誰だって、それこそ機械だって間違いは起こすんだ。
やり直す機会が得られるのは嬉しいことだが、多少の妥協は許容すべきだと思うんだよね。
……私?
こんな話をしておいてなんだが、どうやら私も完璧主義のようでね。
戻れるならば……と思うことはあるよ。
でも失敗も、どこかで折り合いをつけて進むしかないのさ。
それにさ。
失敗しない人間なんて、本当に"人間"なのかな。




