表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

File14 -汝は人間也や?

……ん、君か。いらっしゃい。


よく飽きずに来るもんだよ。

それとも私に会いに来ているのかい?


……なんてね。話を聞きに来たんだろう?

ちょっとした冗談だよ。


勿体ぶるのもなんだし、早速始めようか。

題して「汝は人間也や?」。


◇◆◇◆◇◆


これは、ある男子高校生の話だ。

彼はタイムリープ能力を持っていた。


「時をかける少女」は知ってるかい? あれを思い浮かべてもらえばいい。

ただし、あちらのように回数制限もなければ、条件も特にない。


──そう、無制限だ。

彼は望むたびに、一時間ほど過去に戻ることができた。

ただし、まったく同じ世界に戻れるわけじゃない。

戻った先では、ほんの些細な「差異」が生まれるんだ。

テストの問題が一問だけ変わっていたり、バスの座席の埋まり具合が違っていたり。


なぜそんな超常的な能力を持っているのか、それはわからない。

……この世界では珍しいだけ、かもしれないが。


少し脱線してしまったね。

話を戻そう。


彼は、いわゆる完璧主義者だった。

その性格とタイムリープの相性は、驚くほど良かった。


だってそうじゃないかい?

0か100でしか物事を評価できない性格と、過去に戻れる能力。

一度失敗したところで、また戻ってやり直せばいい。


そうだろう?

だから彼は失敗したと感じたら、そのたびに過去へ戻った。

戻ったことで生じる差異すら計算に入れて、常に"満点"を狙っていた。


遅刻しそうな朝、テストで100点じゃなかった時、誰かと喧嘩した時……。

彼の評価を脅かす様々なトラブルや失敗を常に回避していた。

取るに足らないことでも、すべてに於いてだ。


事実、周りの評価はとても高かったそうだよ。

そつなくこなす優等生といった感じでね。


そして、その力は部活でも発揮された。

彼はサッカー部のエース。ハットトリックも決めた名シューター。

試合に負けたとしても、戻ってやり直せば「勝ち」に書き換えられる。

記録上は、申し分ない名選手だった。


──だが、ある試合で彼は壁にぶつかる。


全国高校生サッカー大会。

そのベスト8を賭けた一戦。相手は大会連覇中の強豪校。


地力の違いはすぐに現れる。

勝てないんだ。


パス回し、守備の連携、選手同士の練度……すべてが格上。


もちろん、彼は納得しない。

評価を落とすわけにはいかないし、なにより──勝ちたかった。


だから彼は、やり直す。


しかし……勝てない。

何度やり直しても、戻ることで生じる差異を考慮しても、なにをしても勝てない。


それはそうだよね。

あくまで戻るのは彼だけ。そしてサッカーはチーム競技。

彼だけ相手を"理解"しても周りに伝わらなければ意味がない。

それを知ってか知らずか――おそらく後者だが――彼はやり直し続けている。


試合終了のホイッスルは、鳴ることはないんだ。


◇◆◇◆◇◆


今回はあっさりした話だったかな。

それでも楽しんでくれたなら良いんだけど。


……タイトル?

「あれが何の問いか」ってことかい。


ただの私の感想だよ。

よく"幽霊は生前の行動を繰り返す"と言うだろう?

だとすれば、同じ一時間を繰り返して、何度も同じ行動をやり直す彼は──

本当に"生きている"のかな、って。


人間誰だって、それこそ機械だって間違いは起こすんだ。

やり直す機会が得られるのは嬉しいことだが、多少の妥協は許容すべきだと思うんだよね。


……私?

こんな話をしておいてなんだが、どうやら私も完璧主義のようでね。

戻れるならば……と思うことはあるよ。

でも失敗も、どこかで折り合いをつけて進むしかないのさ。


それにさ。

失敗しない人間なんて、本当に"人間"なのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ