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第一章□ プロローグ

ここから始まる村山篤志伝。

 10時方向を指した短針が視界に入ってくる、おかしいな。そういえば今日は入学式だったっけ? じゃあなおさらおかしいじゃないか。ははっ、10時ね。こいつはおかしいや。

あ、駄目だった。

「さあて、村山君。事情を話してもらおうか? いや、別にその事情が情状酌量の余地があれば私としては全くかまわないよ」

 寝坊し、11時頃に颯爽と登校した俺は生徒指導室に詰め込まれ、いま俺はこうして体育教官小沢(おざわ)清治郎(せいじろう)にいびられているのです。

「なんというか…こう、バーンってね。なったんですよ分かります?」

俺は言い訳に支離滅裂なことを言っていた。

「篤志君がバーンってなったんだ? で?」

知らねえよ。

「ええっとですね。つまりは、様々な理由が絡み合ってしまったんです」

「どんな理由かね?」

小沢のとなりに立っている黒人体育教師ジャン・リカルドがいやな笑みで聞いてくる。何も考えられないのでとりあえず言う。

「来る途中で車に轢かれてしまったり?」

うーむ、俺支離滅裂。

「よく無事でいたね」

そんな人間居たら怖いって。

「で? ホントの所は?」

しつこいなこの男。職務だから許してやるとするか。

「いや、まあ、その、意識が飛んでたんです。10時まで」

 小沢はふうっ、とため息をつきながら背もたれに大きく寄りかかる。そしてジャンに耳打ちをする。何やってんのか知らんが、物騒なことを話しているようだ。耳打ちに対してジャンは頷いた。

「この蘭高校は由緒ある名門校なのは分かっているだろう?」

「ええまあはい」

「そんな高校で寝坊なんていう事でこんな時間に登校しているような生徒が見られるとこちらも厄介でね」

「寝坊じゃないです」

一応食い下がっとくか。

「じゃあ意識が飛んでいた理由は?」

「昨日の夜の話でした―――あれは23時頃でしたでしょうか。私は布団に入っていました。そして目を閉じる。ここまでは良いでしょう。しかし、気がつけば周りは朝に、時間は翌日10時に。こんな事が信じられますか?」

「寝坊していたということかね」

「かなり遠い意味で言えばそうですが。私は国語的な表現からして…」

「寝坊で良いんだね?」

「…はい」

俺はうなずくしかなかった。体育教師のにらみって怖い。

「…で、寝坊なんていう事でこんな時間に登校しているような生徒が見られるとこちらも厄介でね」

大事なことなので二度言われたがたしかに一理あるな。俺が校長なら休んでもらっていた方が良かったと考える。もう一つ、いつの間にそう指示されたのか、ジャンはいつの間にか俺の後ろにいやがる。

「私をどうするつもりなんです?」

怖いから聞いてみた。

「何、別に体罰というのは原則禁止だからね。ここで400字詰め原稿用紙5枚分の反省文を書いてもらうだけだよ。じゃ」

小沢はジャンを残して部屋から出て行った。

「ああもう! こんなの!」

俺は自らの失敗に腹を立てながらペンを走らせ始めるのであった。背後に立つ黒人マッチョに反抗するほど腕に自信は無い。

 結局俺は反省文を頑張って書き、部屋を出たときにはすでに二時を回っていた。さらに昼飯を食っていないため、異常に腹が減っていた。

「いやな因縁ができちゃったなぁ」

体育教師に覚えられるといろいろめんどくさいからなぁ。仕方ないのでもう新入生が居なくなった校舎を見て回り、帰路につくことにした。


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