表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/226

第45話 前に続く道 5/6

 首都方面に向かう列車は、およそ一時間後だった。

 

 駅を出て、売店で飲みものを買った。


 水の小さなペットボトル。


 そして、駅に停まっている列車が気になり、もう一度時刻表を見た。


 逆方向に向かう列車は、そろそろ発車時刻となっていた。


 スーサリアの東海岸をぐるりと回って北上していく普通列車。


 乗ってみようか?


 何も用意はしていないけれど、必要なものは買えばいいし、日が暮れたら、その町で宿を探せばいい。


 このまま、この国を、ぐるっと回ってみよう。


 何日かかってもいい。


 このまま、旅先で冬を迎えてもいい。


 雪におおわれた冬、それもスーサリアだ。


 まずこの国を自分の足で歩いて知ること、悪くない再スタート。


 タクヤが、意を決したときには、もう発車のベルが鳴りはじめた。


 まずい、切符を買っていない。


 まあ、車内で車掌さんに相談すればなんとかなるはず。


 タクヤはベルの鳴る中、片手に透明なボトルをもっただけで、走って列車に飛び乗った。


 すぐに扉が閉まる。


 車内に入ると、空席が多かった。


 タクヤはそのひとつに腰掛けて、水を飲み、車窓に目をやる。


 ミルといた丘が見える。


 ミルとのわかれ、それも身を切られるほどつらいこと。


 これも愛なのか?


 わからない。


 まだまだ、わからないことだらけ。


 いいさ。


 ゆっくりと、探っていけばいい。


 まずは、列車でぐるっとこの国を回る。


 スーサリアを、知る。


 まずはそこから。


 


 通りがかった車掌から終着駅までの切符を買い終わってまもなく、列車が次の停車駅に駐まった。


 路線の合流駅だったらしく、7〜8人の客が新たに乗ってきた。


 と思ったら、それは数人の個人客と、あとはファミリー。


 

 そのファミリーの一人として、ユリがいた。


 桜色のブラウスに、紺色のスカート姿。


 しなやかにゆれる黒髪。

 

 幼い妹や弟に気づかい、早くシートに座るようにうながしている。


 なつかしい姿。


 思わず立ち上がり、抱きしめに行きたくなる。


 しかし、聞こえてきた声は、ちがった。



 ミルとキスなんかしたからかな、と、苦笑したタクヤは、ボタンダウンシャツの衿を合わせて、腕を組み、柱にもたれて、窓の外の空を見た。


 一人になると、やはり明確にわかる。


 自分の中にいる、もう一人の存在。


 それは、もとは宇宙からやってきたものかもしれない。


 しかし、今、それは、祈り師の魂を受けとって、安らいでいる。


 つまりそれは、ユリ自身が、中にいる、ということでもある。


 単なる過去の記憶ではない。


 ユリは輝き続けている。


 そう。


 これから、一生、共に歩いて行こう。



  ◆ ◆ ◆



 ところで、そんなタクヤのことを、中にいる寄生植物のほうは、どう感じていたか?

 

 それは人間のような思考はせず、言葉も使わない。

 

 が、もしもその思考を言葉に変換して、文章とするなら、おそらく、こういうことだったろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ