第45話 前に続く道 5/6
首都方面に向かう列車は、およそ一時間後だった。
駅を出て、売店で飲みものを買った。
水の小さなペットボトル。
そして、駅に停まっている列車が気になり、もう一度時刻表を見た。
逆方向に向かう列車は、そろそろ発車時刻となっていた。
スーサリアの東海岸をぐるりと回って北上していく普通列車。
乗ってみようか?
何も用意はしていないけれど、必要なものは買えばいいし、日が暮れたら、その町で宿を探せばいい。
このまま、この国を、ぐるっと回ってみよう。
何日かかってもいい。
このまま、旅先で冬を迎えてもいい。
雪におおわれた冬、それもスーサリアだ。
まずこの国を自分の足で歩いて知ること、悪くない再スタート。
タクヤが、意を決したときには、もう発車のベルが鳴りはじめた。
まずい、切符を買っていない。
まあ、車内で車掌さんに相談すればなんとかなるはず。
タクヤはベルの鳴る中、片手に透明なボトルをもっただけで、走って列車に飛び乗った。
すぐに扉が閉まる。
車内に入ると、空席が多かった。
タクヤはそのひとつに腰掛けて、水を飲み、車窓に目をやる。
ミルといた丘が見える。
ミルとのわかれ、それも身を切られるほどつらいこと。
これも愛なのか?
わからない。
まだまだ、わからないことだらけ。
いいさ。
ゆっくりと、探っていけばいい。
まずは、列車でぐるっとこの国を回る。
スーサリアを、知る。
まずはそこから。
通りがかった車掌から終着駅までの切符を買い終わってまもなく、列車が次の停車駅に駐まった。
路線の合流駅だったらしく、7〜8人の客が新たに乗ってきた。
と思ったら、それは数人の個人客と、あとはファミリー。
そのファミリーの一人として、ユリがいた。
桜色のブラウスに、紺色のスカート姿。
しなやかにゆれる黒髪。
幼い妹や弟に気づかい、早くシートに座るようにうながしている。
なつかしい姿。
思わず立ち上がり、抱きしめに行きたくなる。
しかし、聞こえてきた声は、ちがった。
ミルとキスなんかしたからかな、と、苦笑したタクヤは、ボタンダウンシャツの衿を合わせて、腕を組み、柱にもたれて、窓の外の空を見た。
一人になると、やはり明確にわかる。
自分の中にいる、もう一人の存在。
それは、もとは宇宙からやってきたものかもしれない。
しかし、今、それは、祈り師の魂を受けとって、安らいでいる。
つまりそれは、ユリ自身が、中にいる、ということでもある。
単なる過去の記憶ではない。
ユリは輝き続けている。
そう。
これから、一生、共に歩いて行こう。
◆ ◆ ◆
ところで、そんなタクヤのことを、中にいる寄生植物のほうは、どう感じていたか?
それは人間のような思考はせず、言葉も使わない。
が、もしもその思考を言葉に変換して、文章とするなら、おそらく、こういうことだったろう。




