70話.イベント開始
「話は分かった。結界の補強をした玲央が言うんなら、そうなんだろう。破られる前提で動くとするか」
藤堂先生に話すと、二つ返事で進めてくれた。
信頼してくれている事に嬉しくなる。
「そんで玲央、破られる場所の検討はついてんのか?」
「いえ、そこまでは……」
俺が関与してしまった事で、すでにゲームとは違っている。
マカロンからも知らぬ方が良いだろうと言われたので、詳しくは聞いていないんだよね。
確かに俺は下手に知っているとポロリと言ってしまいそうなので、知らない方が良いと思う。
「そうか、なら三年と二年全員に警戒させるか。学生達はヴァルハラの結界を信頼しきっているからな。このまま破られれば、不意を突かれて被害が大きくなっただろう。助かったぜ玲央」
「いえ、そん……」
「玲央君、謙遜も過ぎれば嫌味になるわ。玲央君にそんなつもりが無くてもよ。称賛は素直に受け取っておきなさい」
「!!」
そんな事はないと、言おうとしたら……リーシャさんにそう言われてしまう。
「だな。俺達だけなら多分、ヴァルハラの結界に安心しきってて、対策を取るなんてこたぁなかったぜ」
「ああ。今もどこかで結界が破られるわけがないという考えもある。だが……玲央の言葉は、それを覆す説得力がある」
「そうね。これが玲央以外の奴から言われたら、鼻で笑ってたかもしんないけど……」
「ですね。他でもない玲央さんが言うのですから。それだけの信は、すでにしております」
「皆……」
俺の事を心から信じてくれている。
なら俺に出来る事は、その信に応える事。
「藤堂先生、先程は検討はついていないと言いましたけど……予想で良ければ話せます」
「おう、聞かせろ。お前の意見は何よりも参考になる。安心しろ、全てを任せるってわけじゃねぇ。決めるのは俺だ、責任は俺が取る。だから安心して話せ」
藤堂先生は笑ってそう言う。
本当に大きな人だ。
俺の尊敬する、憧れている人の一人。
「学園の地図を出してもらえますか?」
「ああ、これだ」
藤堂先生が大きな地図を机の上に広げる。
俺達はそれを囲うように集まる。
「……ここから、ここまで。ここは大丈夫だと思います。構造的に危ない可能性があるのは、ここと、ここと……」
俺のゲーム知識と、この学園を実際に見てきての意見。
魔族が狙いそうな箇所。
防衛に適した陣地、場所。
思いつく限りの戦略を伝えていく。
「……ったく。お前はもう将でもおかしくねぇな」
「え?」
「「「「「……」」」」」
皆もうんうんと頷いている。
いやいや、将って、将軍ですよね?
色んな役職の人よりも上の。
キングも確かにその位置になるのだろうけれど……。
「藤堂先生、やはり榊君は私のクラスにくれないか?」
「やらんと言っているだろが揚羽! それよりも……」
「ふふ、分かっている。こちらですでに伝えているさ。他の先生達ももう動いてくれている。三年生と二年生には筆頭達が各クラスと連携を取ってくれるはずだ」
流石は天羽先生だ。
俺からの話を、皆にすでに伝えてくれているとは。
これだけ行動が早ければ、魔族の侵攻が始まるまでに有利に事を運べるはず。
ゲームではこの戦いで、多くの生徒達が命を落とす。
その中には、一年生の生徒達が多く含まれていた。
今回はそんな事には絶対にさせない。
知り合った友人達を、誰一人として死なせてたまるものか。
俺が守り抜くなんて大層な事は言えない。
だけど、皆に協力して貰えれば可能なはずだ。
俺は皆の顔を見る。
「「「「「……」」」」」
皆が俺を真剣な表情で見つめ返してくれる。
そうだ、皆と一緒なら、必ず出来る。
ヴァルハラの皆を、誰一人死なせはしない!
ドゴオオオオオンッ!!
「「「「「!?」」」」」
突如、凄まじい爆音と共に、ヴァルハラ全体が揺れる。
間違いない。
結界に穴が開いた。
「「「「「オオオオオッ!!」」」」」
遠くからだというのに、凄まじい声量の魔族達の声が聞こえる。
とてつもない数の魔族達が、ヴァルハラ内部へと侵攻を開始した。
「チッ、玲央の予測が当たったわけか!」
「報告が来た。どうやら破られた箇所は二か所。どちらも魔族の大陸に面している側だな。藤堂先生は部屋から出ないでくれよ?」
「……ああ、分かってる……」
そう、この戦いに藤堂先生は参加する事が出来ない。
魔族側に藤堂先生が前線から引いた理由を悟られるわけにはいかないのだ。
人間側は、藤堂先生が居なくても戦えるという所を見せなければならない。
「玲央」
「はい」
「お前なら俺の代わりが出来る。一年を率いて見せろ。お前の指揮、俺に見せてみろ」
「!! はいっ!」
「期待しているぜ」
そう言って、藤堂先生は部屋の奥へと消えた。
さぁ、俺達で藤堂先生の期待に応えないとね!
「行こう、皆!」
「「「「「おう!」」」」」
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