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第14話:補助員申請、通りますか?

 「なあリリス、ちょっと提案がある」


 その日、真一は夕食後にふと思い立って言った。

 廃屋のテーブルに簡易ホログラムが浮かび、魂回収ログが淡く表示されている。


 


「補助員って制度、あるんだよな?」


「……あるにはあるけど、申請面倒よ?」


「エルナを補助員にできねぇかって思って」


 


 エルナが「えっ」と小さく驚いた声をあげた。


 


「もちろん、無理強いはしない。でもさ——」


 真一はホログラムを指でスワイプする。


 そこにはこれまでの回収進捗が記録されていた。


 4件。進みは遅い。


 


「……正直、俺ひとりじゃ限界ある。

 お前と組んでなきゃ、今頃“存在削除”コースだった」


「わたし、わたしでよければ……!」


 


 エルナが、ぱっと顔を上げる。


 表情には緊張と、どこか嬉しそうな色が混ざっていた。


 


「死神様のお手伝い、これまでもちょこちょこしてましたけど……正式にできるなら、もっと頑張れます!」


「ほらな、前向きだ」


「……はあ」


 


 リリスはおでこを指でこめかみグリグリ。


「言っとくけど、補助員制度って“お飾り”よ?

 補助員は基本、死神の影で記録係とか補佐に回るだけ。

 現場で判断はできないし、責任も取れない」


「それでも、“誰かと一緒に選ぶ”ってのは大事なんだよ」


「……意外と、感情論で動くのね」


「うるせえよ。社畜なめんな」


 


* * *


 


 数日後、管理局からの返信が届いた。


 《補助員仮登録 処理中》


 要は、書類審査中ということらしい。


 


「異世界でも書類社会……変わんねぇなぁ……」


「ね、意外とペーパーレスじゃないのよ」


 


 リリスが端末を弄りながら呟く。


「ま、仮登録中は補佐行動は可能。正式許可が出るまでの間は“影の補助”ね」


「つまり、今までと変わらないってこと?」


「……あえて言えば、“許されてやってる”か“勝手にやってた”かの違い」


「合法か非合法かの違いって言え」


 


 その日、エルナはノートを持ってやってきた。


「回収対象リスト、今朝分も確認済みです!」


「仕事できるなぁ、補助員」


「うふふ、がんばりますっ!」


 


 リリスが、わずかに視線を外す。


 そしてぽそり。


「……調子に乗らないでよね。補助員はあくまで補助。

 真一に無理はさせないための存在なんだから」


 


 その言葉に、エルナはぴしっと背筋を伸ばす。


「はいっ、もちろんです! “死神様の背中を守るのが補助員”ですから!」


「……ふん。偉そうなこと言うじゃない」


「リリスさんが教えてくれたんですよ?」


「……」


「“死神って、孤独な仕事だけど、誰かがそばにいるだけで、変わるの”って」


 


 リリスは、一瞬だけ目を見開いた。

 だがすぐに視線をそらし、そっとカップに口をつける。


「……あーあ、また余計なこと言っちゃってたのね、私」


 


 真一はその様子を見て、くすっと笑った。


「ま、悪い気はしねぇよ。

 たぶん——今が一番、死神やってて“人間らしい”気がする」


 


 ホログラムの数字が更新される。


 《魂回収数:5/100》


 少しずつ、でも確実に前へ進んでいる。


 今度は、三人で。


 


(第14話・完)


「仮だけど、補助員になれましたっ!

でもまだまだ勉強中だから、失敗もあるかも……えへへ。

感想とかブクマとかも“魂”としてカウントされてるらしいです!

死神様のモチベにもなるので、よかったらぜひお願いしますっ!」


挿絵(By みてみん)

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