第13話:魂管理システムはバグだらけ!?
「——で、なんで俺が“4人同時に死を迎える”っていうバグ指令を受けてんだよ……!」
真一は端末を睨みながら、思わず叫んだ。
表示されていたのは、同一時刻に4件の魂を同時回収せよという指令。
しかも対象はそれぞれ別の地域、別の種族、別の死因。
「物理的に不可能だろこれ!」
「まあ、あるあるよ」
あっさり返したのは、もちろんリリスだった。
「あるあるって……お前、これのどこが“よくある”だよ!?」
「魂管理システム、通称“C.S.S.”はね、たまに“死の時刻”が被るバグを起こすの。
原因? 知らないわよ。作ってる部署が違うし」
「お前のとこじゃねえのかよ!」
とにかく確認だ。真一は慌ててホログラムを操作する。
だが、エラー音と共に浮かぶのは「情報取得不能」「上位権限が必要です」の文字。
「……この世界、ユーザビリティって概念ないのか?」
「“魂優先・死後処理後回し”が基本思想だからね」
「意味がわかんねぇ」
* * *
結局、3件の回収が“誤配信”だったと判明したのは、
その日の夕方、リリスが管理課に突撃してきた後だった。
「無断侵入は処罰対象です!」
「うるさい! クソ仕様のせいで死神一人削除されかけたのよ!」
「……すみません」
管理課の技術員たちは、ホログラムパネルに囲まれた空間で
コーヒー片手に魂データをいじっていた。
そのくせ一人はスパゲッティコードの山に埋もれ、
もう一人は「死神評価集計AI」にソリティアを仕込んでいた。
「お前ら、世界の死を支えてる自覚あるのかよ……」
真一のつぶやきに、誰も反論しなかった。
「ていうか、なんで“魂データ”の管理してるのにExcel開いてんだよ」
「うちは一部レガシー対応でして……」
「それで魂バグらせたら意味ねえだろ!」
* * *
その夜、真一は廃屋のベンチで天井を見上げていた。
回収作業は一件延期。
つまり今日の進捗は——ゼロだ。
「なあ、リリス」
「ん?」
「この世界……案外、しょうもないな」
「ふふっ、ようやく気づいた?」
リリスが紅茶をすすりながら笑う。
「世界の根幹って、案外こんなもんよ。
“厳格なシステム”の裏側は、だいたい人手不足とバグと無関心でできてる」
「それ、社畜時代と何も変わんねえ……」
「ブラック企業も異世界も、根は一緒ってことね」
真一は思わず苦笑した。
命を預かる“死神制度”も、蓋を開ければバグまみれ。
完璧なシステムなんて、幻想にすぎない。
「でも、バグってるからこそ——お前みたいなのが必要なのよ」
「……ん?」
「決まり通りにしか動けない死神ばっかりだったら、
誤配信された回収先で、誰かが間違って死んでたかもしれない」
リリスは、そう言ってコーヒーを差し出す。
「はい、ブラック。お疲れ様」
「いや、もっとホワイトなやつよこせよ……」
「あなたに似合うのはこっちだと思って」
「うるせぇよ」
二人の笑い声が、夜の街に小さく響いた。
《魂回収数:4/100》
進まない。でも、まだ終わらない。
(第13話・完)
「あ、あの、今回はほんとに……すみませんでした!
いや僕たち、決してサボってるわけじゃないんです!ただその、仕様が……!
え、感想とブクマ? えっと、それも魂管理データの一部になるので、よ、よろしくお願いします……!」




