第90話 北方騒乱編 ~えっ? ハイエルフですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「お昼にするぞー!」
「ランチなのー!」
国境の警備兵を蹂躙した幼女、ハイガンベイナ4歳です。
私達はランチボックスを広げる場所を探していたのだが、適当な場所を見つけたのでこれからランチタイムなのだ。
場所は周囲よりもやや小高く、丘のようなポイントだが、周囲にデイジーの様な物が咲き乱れており、雰囲気としては悪くない。
尤も見晴らし以外には長所らしい点は無いし単純にランチボックスの誘惑に勝てなかっただけなのだから、特に文句もありはしないのだ。
ただ難点を言えば、近くに屍が転がっている事くらいだし。
「ご開帳ー」
「サンドイッチなのー」
最初に目を引くのはオイルサーディンとレタスっぽい何かのサンドイッチだ。 正直、ピーナッツバターのサンドイッチすら覚悟していたので嬉しい誤算である。
「うまうまー」
「うまうまなのー」
オイルサーディンと言えば、パスタも捨てがたいのだが、サンドイッチも悪くない。 そもそも内陸部なので魚は貴重だし、入手経路が気にはなるのだが、そんな事は些細な問題なのだ。
「なっ、何か食べ物を…」
「ん? 幻聴かな?」
「気のせいなのー」
「そうだな」
何か聞こえた気がするが、大した問題では無いので、このまま食事を続けるとしよう。
「ちょっと待てやーっ!」
「あっ、ただの屍が動き出した。 ファイヤーボール」
「うぎゃぁぁぁぁ~っ!」
何となく転がっていた屍が復活したようだが、やはりアンデッドには炎系の攻撃に限るな。 効果は覿面だ。 周囲に燃え移る事もなく、継続的にダメージが入っている様で何よりである。
「ぎゃぁぁぁ~っ! 熱い、燃える、死ぬ、焼死するっ! 誰かこの火を消してぇぇぇぇ~っ!」
五月蝿い屍だな。
「フリーズ」
「ぎょえぇぇぇ~っ! 凍る、凍え死ぬ~っ!」
「最近のアンデッドって、随分流暢に喋るんだな」
「アンデッドとちゃうわーいっ!」
何だ、じゃあゾンビか何かかな?
「行き倒れのハイエルフであって、アンデッドでもなければゾンビでもないわよっ!」
「その行き倒れが私達に何の用なんだ?」
「ここに可愛そうな行き倒れのハイエルフがいます。 そして貴方は食事中です」
「うん、そうだな」
「情けは人の為ならずって言葉をご存知?」
「それくらいは知っているぞ」
「じゃあ貴方の最適解は?」
何を言っているんだ、コイツは? ハイエルフって草食だったけか? それなら牧草代わりになりそうな雑草なら、周囲に幾らでも生えているだろうに。
いや、違うな。 私達が彼女の食事を邪魔しているのか。
ならば、ここに拘る理由も無いので、移動するのも否ではないな。
「ハトリ、ここは彼女の牧草地らしい。 少し移動しよう」
「仕方がないのー。 移動するのー」
「待て待て待て、何でそうなるのよ?」
「草食エルフに配慮した結果だが?」
「あー、なる程。 エルフって草食のイメージなんだぁ。 因みに遊牧民のイメージでもあるのかな? 私は見ての通り、家畜なんて連れていないのだけれども」
「つまり新芽以外は食べないとか?」
「誰が?」
「草食エルフが」
「食えるかぁぁぁぁ~っ! 新芽だろうが何だろうが、雑草なんて食えるかぁぁぁ~っ!」
「周囲には木の実も果実も存在しない様だが?」
「食料を分け与えろって言っているのよっ!」
「納得した。 だが断る!」
「どうして断るのよぉぉぉ~っ!」
「だって赤の他人だし」
私は慈善事業家じゃぁないんだがな。
「もう3日も何も食べていないの。 何か恵んでよっ!」
「ウォーターボール」
「うぎゃっ! イキナリ何するのよっ!」
「人間、水さえあれば2か月は死なないらしいぞ。 ハイエルフなら光合成で何とかなるんじゃないのか?」
「ならないわよっ! ハイエルフは草食でもなければ、植物でもないわっ!」
「その割には元気になったようだが?」
「怒っているだけで、元気になったワケではないわっ!」
面倒くさい奴だな。 ポンコツエルフに需要なんて無いんだが。
「もういいわよっ! 大人しく食料を差し出しなさい! さもないと、精霊魔法で攻撃するわよっ!」
「サンダーレイン」
「ぎょぇぇぇぇ~っ! 死ぬ~っ! お茶目な冗談だと思って許して~っ!」
何がしたかったんだ、コイツは? 尋問するのも面倒だし、アレをやっておくか。
「マジックスキャン」
「うぎゃぁぁぁぁ~っ!」
ん? 転生者だと?
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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