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悪夢の始まり②

こうして私は眠りについた。




………


……………


…………………


………………………


…………ザッ…………


…ザザッ!……ザッ!…


ジーー!!…ザザッ…ザザザッッ!!ジーッ!!!



ブォン!!………



…私は今日、ラインハルト様、そして双子の姉ミラ様の18歳のお誕生日の祝賀会に出席するため、王城へと来ていた。


会場に着くと、ラインハルト様が私を迎えてくれた。


ラインハルト「やあ、カナ。今日は来てくれてありがとう、嬉しいよ。」


カナ「こちらこそ、ご招待頂きありがとうございます。」


ラインハルト「さて、せっかくだから一緒に回ろうか。ついでにここに来ている人たちを紹介するよ。」


カナ「はい!」


そこから私は、ラインハルト様に連れられて色々な方達に挨拶をしてまわった。


ラインハルト「それじゃあ次は…あ、ラクア!」

カナ「あ…!」


ラクアと呼ばれた人物は、かつて私が街で野党に絡まれていた所を助けてくれた水色髪の男性だった。


(助けてくれたのはありがたいんだけど、態度が上から目線でちょっと苦手だったんだよね…)


ラインハルト「カナ、彼は僕の弟で第2王子のラクアだよ。とは言っても異母兄弟だけどね。もしかして2人は知り合いかい?」


ラクア「いえ、知りませんね。会っていたとしても、こんなのはいちいち覚えていないと思いますし。」


カナ「な…!そんな言い方…!」


ラインハルト「そうだよラクア。そういうこと言うからお友達できないんだよ?」


ラクア「別に、友達などいりません!」


ラインハルト「ごめんね、カナ。態度はちょっとアレだけど、決して悪い子じゃないんだ。」


ラクア「…兄上…アレとは…」


カナ「ふふっ…!大丈夫ですよ、"アレ"でも!」


ラクア「……」


(やっぱりラインハルト様は誰のことも思いやれるいい人だな…)


ラインハルト「じゃあまたね、ラクア」


ラクア「…はい」


私はラクア様に軽く会釈しながら、またラインハルト様について行った。


ラインハルト「あと紹介してないのは…第2騎士団の騎士団長さんくらいかな?えーとロバン伯爵は確か…あ、あそこだ」


ラインハルト様の目線の先を見ると、黒髪に緑色の瞳をした男性が立っていた。


しかし、何となく元気がなく、顔は少しやつれてしまっている。


(何かあったのかな…?)


ラインハルト「お久しぶりです、ロバン伯爵」


騎士団長「…おおこれは、ラインハルト殿下ではありませんか。本日はお誕生日おめでとうございます。」


ラインハルト「ありがとう。」


騎士団長「それで、どういったご用件で?」


ラインハルト「大したことではないんですが、この子に色々紹介してまわってるので、ロバン伯爵にも会わせておこうと思いまして。」


騎士団長「おや、そうでしたか。……」


騎士団長様は私の顔をじっと見てくる。


(あ、自己紹介しないと…!)


カナ「あ、あの!カナ・ベルナールです!すみません、自己紹介が遅れてしまって!」


騎士団長「カナ殿ですか。いえ、名前を名乗らなかったのを(とが)めたかったのではありませんよ。ただ、あなたくらいの年齢の子どもを見るとどうにも思い出してしまって…」


ラインハルト「……」


カナ「思い出すとは、何を…?」


私は恐る恐る聞いてみる。


騎士団長「実は……」





"騎士団長「私にはジークという16才の息子がいたのですが、裏組織の人間に襲われて…


…1ヶ月前に亡くなりました」"





え……?


カナ「そん…な…」


騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…私が至らぬばかりに、魔術学院の他の生徒まで…それに、未だに捕まっていない犯人もいますし…」


騎士団長様はとても辛そうに顔を歪める。


ラインハルト「あれはあなたのせいではありませんよ。もちろんジーク君や犠牲になった少年たちのことは悔やみきれませんが、あなたやラクアがいたからこそ被害が最小限に抑えられました。」


ラインハルト様も淡々と話してはいるが、その顔はとても悲しそうだ。


騎士団長「…お気遣い感謝致します。」


カナ「申し訳ありません、そんなことがあったとは知らずに不躾(ぶしつけ)に聞いてしまって…」


騎士団長「いえ…大丈夫ですよ。元はと言えば私が言い出したのですから。」


カナ「………」


返事をしなくてはいけないのに、私は俯いたまま黙ってしまう。


騎士団長「カナ様、お顔をお上げください。」


私は無言で顔をあげる。すると私に優しく微笑みかけてくれている騎士団長の顔が目に入る。


騎士団長「確かに、もう息子達が戻ってくることはありません。しかし、それでも今生きている人のために、私は少しでも役に立ちたいと考えています。ですから必ずしも悲観ばかりしている訳ではないのですよ。」


カナ「……!」


騎士団長「カナ様も、そのお力を困っている誰かのために使っていただけると幸いです。それで助かる人が大勢いるはずですから。」


カナ「…はいっ!」


私は、騎士団長様はとてもお強い方だなと思った。そして、ラインハルト様のために、皆のために、何ができるかを考えよう。そう決意したのであった。


ザザッ!!ジッジーーー!!



――――――――


「っ!!!………」


私は最後の雑音と共に目を覚ました。寝室の窓に目をやると、日が登り始めていた。これは夢だったようだ。


今のはラインハルト殿下が中心で出てきており、私が体験した覚えのない記憶であることから、「Amour(アムール) Tale(テイル)」の第1王子ラインハルト・リアムールルートの一節だろう。


第1王子ルートはプレイしたことがあるはずだが、全く記憶になかった。まあ、そんなに真面目にやっていなかったし、プレイした時期の私は全体的にボーっとしていたので当然と言えば当然だが。


そんなことより、やっと"ゲーム画面"の文面の完成形を見ることができた。


"騎士団長「私にはジークという16才の息子がいたのですが、裏組織の人間に襲われて…


…1ヶ月前に亡くなりました」"


これが今まで見えてこなかった箇所だ。


…正直、この内容にはさほど驚いてはいない。ジークの身に起こる"何か"が"死"であることは、ゲーム内で"ジーク"という人名は出ているのに攻略対象者の中にはいないという時点で、ある程度覚悟はしていた。…もちろん想定した中で最悪の事態ではあるが。


問題は、ジークの死因とその時期である。


騎士団長は、ジークは裏組織の人間に襲われたと言っていた。"裏組織"というのが曖昧だが、いずれにせよ死因は事故ではなく人為的なものだとわかる。


また、このシーンが第1王子ラインハルト殿下の誕生日会であることから、事件はラインハルト殿下の誕生日の1ヶ月前に起きたことになる。ただ他の生徒も巻き込まれていることを考えると、その組織の生徒殺害自体はもう少し前から行われていた可能性もある。


そして実際、


"騎士団長「事件より前から組織の存在には勘づいていたのですが…"


というフレーズがあることから、何らかの動きは見せていたことが伺える。もっともそれが生徒殺害なのか、もっと違うことなのかは分からないが。


ここからまず確かめるべきは、ラインハルト殿下の誕生日がいつなのか、ということだ。私はラインハルト殿下の誕生日を知らない(ゲームで見た事があったとしても覚えていない)ため、誰かに確認する必要がある。


王族の誕生日なら一般市民でも知っている可能性はあるか…?それならとりあえず…


私が着替えて1階まで降りると、ママはいつものように朝食の準備をしていた。


「おはよう、ママ」

「おはよう、カナ!」

「ねえママ?」

「ん?」

「ラインハルト殿下の誕生日っていつか知らない?」

「ラインハルト殿下って…第1王子様のこと?うーん知らないわね…」

「そっか…じゃあ知ってそうな人物に心当たりは?」

「う~ん…平民で知ってる人はあんまりいないんじゃないかしら?貴族の方達とか王子様のお友達なら知っていそうだけど!」

「なるほど…わかった、ありがとう」


となれば、やはり聞きに行くしかないか、ラインハルト殿下の弟に。


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