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魔術大会1日目︰団体戦決勝②

「くたばれ!!」


〘 水惑刀 〙・ «干渉・消»


ガッ!!!…キィィィン…


「…は?」


「べ、ベルナール選手、ベークマン選手の渾身の一撃を止めた!!そしてあの剣はなんだ?というか剣なのか!?」


「てめえ…何しやがった!止めたとかじゃねえだろ…"消しやがった"!それになんだそれは!!」


この男、良くも悪くも脳筋タイプかと思ったが案外鋭い。


「質問にっ、答えやがれ!!」


カッ!カッ!キィィィン…


「クソっ!」


剣を交えたまま思い切り踏み込むとベークマンが一瞬たじろいだので、その隙をつく。


«飛水撃»


「グハッ!」


「ベルナール選手の剣?から水刃がいくつも飛んできてベークマン選手に直撃!あれは何なんですかロペス先生!!」

「ありゃああれだな、すい…すい…何とか刀だ!あれもベルナールの考案だ!」

「…まじですか…」


水惑刀。これが私の「奥の手」だ。私が武器として持ち込んだのは剣の(つか)のみだ。柄の先に刀身はない。じゃあどうするのかと言えば、柄の先に水で刀身を作るのである。水で剣や刀の形を作ったところで、そのままではベークマンの剣撃は刀身をすり抜けて自分に当たって終わりだ。だが、工夫すれば水でも剣撃を受け止められる。


そもそも水とは何なのか。化学的に言えばその答えは「水分子の集合体」というのが妥当なところだろう。分子というのは、まあここでは「目に見えないくらい小さな粒」と思って貰えれば差し支えない。つまり水は小さな粒の集合体なのだ(まあ水に限らず物質はみんなそうだが)。そして水をはじめとした液体に物を落とすと、そのまま液体の中に入って沈んでしまう。これは液体には流動性がある、つまり物がぶつかったり侵入したりすると、それに合わせて水分子が移動してしまうことによる。


例えとしては、ボールプールを想像し、水分子をボールに見立ててみてほしい。子供がボールプールにダイブすれば、ボールは方々に散り、子供はプールの中に沈む。


では、子供がボールプールに沈まないように受け止めるにはどうすればいいか。


答えは簡単だ。ボール同士を固定してしまえばいいのだ。そうすれば子供がダイブしてもボールが弾かれることは無い。


これを水の話に戻すと、要は水分子の相対位置を固定してしまえばいいのである。そして私は練習の結果それができるようになった。これを使って、私は水惑刀の表面のみ固定せず、内側を固定して刀身として扱っている。この水分子を固定する技術の名前は安直だが仮に"固体化"とでもしておこうか。


それがこの刀の仕組みだ。ちなみに「わざわざ水を固めなくても普通の剣に水を纏わせればいいじゃん」と思うかもしれない。実は今この状況に置いてそれは正解である。強いて言えば珍しいものを見せて相手を警戒させるという意味はあるが。だが後々のことを考えるとこれができるようになって損はないので、まあ半分練習代わりだ。


さて、この水惑刀だが、色々と«技»がある。何のとは言わないが型みたいなものだ。


先程使った«技»は2つ、«干渉(かんしょう)(しょう)»と«飛水撃(ひすいげき)»だ。


«干渉・消»は刀に与えられたエネルギーによって刀表面に生じた波と逆位相のエネルギーをぶつけることによってエネルギーを相殺する«技»だ。ベークマンが"消した"と言っていたのはこれのことである。


そして«飛水撃»は読んで字のごとく刀身から水刃を飛ばす«技»だ。


他にも色々ネタはあるが、それはそのとき説明するとしよう。それではベークマンが体勢を崩しているうちにもう1回。



«飛水撃»


「アガッ!!クソッ…」


「ベルナール選手の攻撃がまたしてもベークマン選手を襲う!ベークマン選手かなりダメージを受けているようだ!準決勝のときや刀を出す前のベルナール選手の攻撃に比べると効きすぎじゃないか?」


それは単に急所を狙っているのと、刀身を型どる水を、今回はあえて魔法で作る水ではなく普通の水を操って使っているからだ。魔法抵抗が異常に高いベークマンに魔法は効かずとも水による物理攻撃は筋肉以外防ぐものがないので無傷とはいかない。



「ふざけんなっ!!」


再びベークマンが斬り掛かる。


«干渉・増»

«鋭刃»


キィィィン!!


「ッッ!!」

「なんと!ベルナール選手の一撃でベークマン選手の大剣が折れてしまった!」


«飛水撃»

「このっ!!」


元々アランが火の魔力を付与した剣で痛めつけていたためベークマンの大剣は大分劣化していた。それに加えて«干渉・増»と«鋭刃»のコンボが上手く決まったようだ。この2つの説明は後でするとしよう。


「えい!」

「うわあ!!」


バキッッ!!

「ッッ!!」バタ…


「おおっとロバン選手とアゴーニ選手、この隙をついてH組1人を場外、もう1人をダウンさせた!H組はあとベークマン選手だけだ!!」


向こうは順調なようだ。元はと言えば私がベークマンをろくに効かない水魔法で攻撃したのは、ベークマンを挑発して私の方に気をそらせるためだ。そして2人は私の思惑通り動いてくれた。アランもジークの魔法である程度回復している。


「余所見するな!!」

「しまっ…」


バキッッ!!


「ガッッ!!」

「カナ!!」「カナさん!!」


「ベルナール選手、ベークマン選手に思いっきり殴られ吹っ飛ばされた!大丈夫か!?」


吐血し意識が朦朧とする。剣が半分ほど折れてしまい剣を使うことを諦めたのか、拳を土で覆って強化した上で、私の構えが緩んでいるうちにみぞおちに1発くらわせてきた。咄嗟に刀身の水を操作・固定してガードしたから致命傷は逃れたが、相変わらずデタラメなパワーだ。フラつきながら何とか立ち上がる。


「おらあ!!」


ベークマンが今度は私を地面に叩きつけようと拳を振り下ろす。ただえさえ運動は苦手だというのにこの怪我で余計動きは鈍っていて避けられそうにない。


「カナ!」

バサッ!!

ドゴォォォン!!


「ロバン選手、風魔法で加速してギリギリのところでベルナール選手を助けた!!」


私はジークに抱えられている。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。だが生憎今の私にキャッキャしてる余裕はない。


ふとベークマンの方を見ると地面が拳を中心に直径1mの円くらい(えぐ)れていた。殺意がすごい。あいつだけ試合じゃなくて殺し合いをしているんじゃないか?


「助かったよ、ジーク」


いや本当に。


「間に合って良かった!それより怪我大丈夫!?早く治すね!」

「まあなんとかね、ありがとう」


私がジークに怪我を治してもらっている間、再びアランがベークマンを相手取る。今度はベークマンもかなり疲弊しているので、アランが大分押している。


「ジーク、アランの加勢してあげて」

「え、でもカナの怪我が…」

「大して出血も無いし後で治して貰えれば大丈夫。ある程度回復したし。」


内出血くらいはしていそうだが。


「そうかもしれないけど…」

「それに今のうちにベークマンを倒しておかないと厄介かも。頼める?」

「…うんわかった!」


そう言うとジークが勢いよく飛び出す。


満身創痍のベークマン1人に大して、剣術の達人と入試首席が相手だ。下手に手を出すより見守っていた方がいいだろう。


――――――――――――


「えい!」

バシッッ!!

「カッッ!!チク…ショウ…」

バタッ…


「ベークマン選手ダウン!これでH組は全員失格!よって勝者、そして1年生団体戦優勝はA組だ!!!」


ワァァァァァーーーーー!!!!!!!!!


会場はいつにない盛り上がりだ。


「A組バンザイ!!」

「やったなジーク!」

「アラン凄かったぞ!!」

「あのベークマンが負けるなんて…」

「ベルナールさん、かっこいい…」

「カナ!ジークさん!アランさん!本当におめでとう!!」


また方々から声が聞こえてくる。


「カナ!」


ジークとアランが駆け寄ってくる。


「2人ともナイスファイト」

「それはこっちのセリフだぜ!全く無茶しやがる」

「ほんとだよ!早く怪我治さないと!」


ジークがまた治癒の風で治してくれる。


「ハハ、でもお互い様でしょそれは。ありがとうジーク」

「何はともあれ俺たちの勝利だ!」

「「うん!」」



「…………おい、カナ・ベルナール」

「……!どうした?」


ベークマンが地面に倒れたまま突然話しかけてきた。もう意識が戻ったらしい。


「お前、あの剣どうやって折った」

「…ああ、あれは元々アランとの戦いで劣化してた箇所を狙って、エネルギーを増幅させた上でさらに一点集中させてぶつけたんだよ」


«干渉・増» は «干渉・消» の逆で、刀身の表面に伝わったエネルギーに順位相のエネルギーを上乗せして返す«技»だ。


そして«鋭刃» は文字通り水惑刀の刃を極限まで薄くし鋭くする«技» だ。こうすることで«干渉・増» で返したエネルギーを一点集中させてぶつけることができる。


「…はっ、何言ってんのか分かんねえわ」


あんたが聞いたんだろう。


「…てめえは最初っから勝ちを確信してたのか」

「まさか。もしあなたがもっと冷静で、私と対峙してるときにジークやアランにも魔法で攻撃し続けてたら勝ち目は無かったよ。」


ベークマンは能力は化け物級だが、いかんせん頭に血がのぼりやすい。私に挑発されたことでカッとなり周りに気を配れていなかった。それがこいつの敗因だ。


「…嘘だな。てめえは俺にぶん殴られた後ですらどこか余裕があった…まだまだ手はあったんだろ?」

「………」

「はっ!だんまりときたか、まあいいさ!とにかく、次戦うときはこれじゃ済まねえぞ…!」


そう言うとベークマンは保健委員の人達に担架で運ばれていった。


「…私達も戻ろうか」

「そうだね!」

「だな」

「というかカナも保健室行かないとね!」

「え」

「え、じゃないよ!治癒はしたけどちゃんと怪我の様子診てもらわないと!」

「はい…」


―――――――――――――――――――――――――――― 続く

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