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第7話 報酬の支払い

俺はソフィネの父親に出血と痛みを軽減させる煙瓶と、睡眠効果のある煙瓶をつかった。


少しすると父親の吐息が聞こえた。


「リュッセル様、今回は私の無茶なお願いをお聞きしていただいてありがとうございます」


「こちらこそ、ソフィネ様のおかげで自分がさらに成長出来ると希望がもてました。ソフィネ様には驚かされてばかりです。これほどまでに心が動いた事は初めてかもしれません。不思議な気持ちです」


「リュ、リュッセル様……わ、私も……」


「あの……ワシ、まだ寝ておらんのだが、その話ワシが寝てからにしてもらえるかね?」


父親はそう言って気まずそうな表情をした。

そのすぐ後に父親は眠りについた。


「では、分解と合成を行います」


俺はソフィネに伝えた。



頭の中でイメージした。


合成して肉と石が混ざり合ったものでは無い。 


これは肉と石でただ切り離すのだ。

きっと血管や神経、骨や肉がブツリと切断されるだろう。


スピードが必要だ。


俺は父親の腰の辺りを左手で、石化した太股を右手で触った。


分解!


力を使った瞬間、石化部分と体の面している部分から血が滲んできた。今この瞬間は石によって血管が塞がれているのだろうが、次の瞬間には血が溢れてくるのだろう。


俺はすぐさま石を動かそうとするが、ただでさえ慣れない分解の力で、さらに普段と違う分解をした事でかなり集中していたらしく、石を動かすという容易な事に体が追いつかずに苦戦した。


ただほんの一瞬の出来事なのだろうが、きっとその間にも血は出るし、痛みは訪れるだろう。

クソっ……


ソフィネがすぐさま石化された太股を移動させた。


「リュッセル様、合成をお願いします!!」


ソフィネの声が体全身に行き渡った。


合成だ!しかも人で合成が出来る!データがとれる!人と人の相性は良い!薬や煙が混じると不安定になる!死にかけた人は合成させると自我を失うと暴走する!睡眠状態であれば合成しても精神は安定する!

フラン、貴様は俺にとってあまり有益な存在ではなかった!パーティー解体の原因だった!貴様のせいでクソ共に絡まれるはめになった!だが、レイスとの合成で、そして今この父親の肉の一部となって合成される事で貴様に感謝したい!フラン!死んでくれて心より感謝している!!


俺は嬉々としてフランの生首の髪を左手で鷲掴みにし、血が溢れて太股部分だけぽっかりと凹んだところに詰め込んだ。

生首も軽いものではない。石化した太股よりも一回り大きいし重いはずだったが、ようは気の持ちようなのだろう。


すぐさま合成し、一瞬で傷口は塞がった。

傷跡は無いのにもともと凹んだ部分が血まみれになっていた。


移植手術と呼べるのかわからないか、それは10秒とかからなかった。



俺はソフィネを見た。


「成功したようですね」 


石を持ったソフィネが目に涙を浮かべながらなんども頷いた。


それから血の付いた布を片付け、父親が目覚めるまで待つ事となった。


ソフィネがまたお茶を入れ直してくれたのでそれを飲みながら待つ事にした。


お茶を飲みながら、お互いの事を話した。

これまでの生い立ち、仕事の話、好きな事……



煙が良く効いていたのか、心労からの解放からか、父親が目覚めてたのは3時間ほどしてからだった。


おかげでその間にソフィネの手作りの夕食をご馳走になった。





父親がリビングに現れて開口一番にこう言った。


「リュッセル殿、あんた、報酬としてうちの娘をもらってくれ。報酬だ」


なかなか唐突だった。



「とてもいい話ですね、喜んで」


願ってもない話だった。

ソフィネは美人だし、料理もうまい。

なにより、彼女には俺に無いものを持っている。



「ただ、それはお父上の独断ではなく、ソフィネ様の意志を尊重されてはいかがでしょう?」


「ソフィネ、お前はどうなんだ?」


「私は……」


ソフィネは俺の方を見た。


「リュッセル様がよろしければ、これならもおそばにいたいと思います」


「よし!決まりだな!リュッセル殿、あんたは心は無いが腕は確かだ!商人はそれでいい!!」


「私は商人ではございませんがね」


「リュッセル様、私思ったのですが、商人になられてはいかがですか?リュッセル様の作られた道具はどれも素晴らしく、他の合成師の方にはとても真似の出来ないようなものばかりですよ」


「なんだ?うまい話なのか?うちで独占できるのか??」


「お父様、病み上がりなのにもう商売の話?」



報酬はソフィネという事だよな?


待てよ……


ソフィネを俺が嫁に貰い、

ソフィネは俺を商売にさせ、

俺は父親の店で働く……


俺は報酬をもらったようで、ソフィネと父親は何の報酬も払わず、むしろ俺を取り込んだだけだった。



「お二人ともさすが商人ですね。参りました」


俺は笑って答えた。


「私としても合成師として冒険者を続けるよりも商人として合成した商品を考える方が面白そうです」


「で、では……リュッセル様……」


「ええ、ソフィネ様、私とご婚約いただけますか?」


「喜んで!」




出会って1日以内に婚約に至った。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 水晶と人間を合成した時は、目玉や髪の毛、腕や内蔵などが残っていた。なら、太腿を頭部と合成したら、やはり髪の毛や目玉・耳・鼻・口、頭骨などが残ったのでは? それらを含めて状態を確認したで…
[良い点] 非常に分かりやすく明快な回答を示してくれている。 正常と異常の違いは定義によるもので、定義する人がいなければ正常も異常もない。 承認の娘も損得勘定がとても分かりやすかった。 [気になる点]…
[良い点] 会社で横領とか素行不良とか 現実の追放はされる方に問題あることが多いんだけど 追放側が頭おかしい、主人公は悪くないパターンが多いなろうの中で 追放側が正当なの珍しいね 何気にソフィネも…
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