表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんな世界で君は何を思う?  作者: かかかうどん
第三章 学園編
25/30

他人の空似

お久しぶりの投稿です。

 傲慢の守護者であるモーリスに一言物申した後、俺は学園の校門で待つルナの元へと戻った。


 スーフェン第一騎士学校には、アッシュという勤勉の騎士が歩いて行ったように寮が存在する。ただ残念ながらここの寮は男子寮しか無い。

 モーリスやルナ、それにルナのクラスメートであるライラといった具合に、女生徒は少数であるが存在するけれど、数が少な過ぎて寮の維持費が賄えないので、女生徒達は個人でハーメルン内の住宅の一部屋を借りることになっている。

 ルナもその女生徒の一人なので、俺達はスーフェン第一騎士学校から歩くこと、数十分程の一室を借りている。


「おかえり。」

「ああ。」

 彼女の影へと合流した俺をルナが珍しく声を出して迎えてくれた。

「いこ。」

「ああ。」

「なんかあった?」


 ルナに問われて、心臓が止まるかと思った。まぁ、ないのだが…。

「ちょっとな。」

「分かった。戻ったら教えて?」

「え?」

 普段のルナからは信じられない程、感情の込もった優しそうな声音で驚いた。驚いてルナの方へ目を向けると、彼女はいつも通りの無表情で学園の校門から、宿への帰路に着いていた。まぁ、目も無いのだけど…。


『ん?行くよ。』

『あ、ああ。』

 聞き間違いだったのか?


△△△

 所変わって、宿へと戻ってきた俺達は夕食を食べて、ゆっくりしていた。

「で?」

「でって、何が?」

「なんかあった。報告義務。」

 そうだよな。これがルナの標準だよな…。やはり聞き間違いだったか。

「で?」

 つい考え込んでしまって、無言になってしまった。


「いや、他人の空似ってやつだと思うが、前世の知り合いに似たやつを見かけたんだ。」

「知り合い?女?」

「あ、ああ。」

 これが女の勘ってやつか…。

「だれ?」

 無表情に、でもその声には不機嫌さが滲み出ていた。


「俺の好き、いや愛していた人だ。」

「えっ?」

 ルナが、珍しく人形のように動かない表情を、驚愕に染めた。俺としても、それは驚きである。そこまで動揺するものだったか?

「俺が、高校一年の時に付き合いだした彼女がいるって話はしたよな?」

「うん。」

 ルナがまた仮面を被る様に、無表情に戻し頷く。


「そう、その人だ。その人に似た人を見かけた。」

「シェイドを殺した人。」

「ああ。」

 今の俺に心臓は無いが、彼女に似た女の子を見て心臓が止まる…、いやそうじゃない。心臓を掴まれたような感覚に襲われた。付き合い始めた俺は、愛した彼女の手で、その年のクリスマスに死んだ。うん、殺された。

 清李がどうしてあんなこと、俺を殺したのかは分からない。それでも、俺は。


「今でも?」

「ん?」

「今でも、その人のこと好きなの?」

「…。」

 そうなのだろう。刺されてもなお、俺は彼女の事を…。

「その女そんな似てるの?」

「え?あ、ああ。」

「そう。」

 そして、考え込むようなそぶりを見せるルナ。


「いや、そんな気にするようなことじゃない。多分、他人の空似だ。」

「そう?」

 ああ、そうだと思う。

 だって、この世界に来て十六年程経ったが、俺は今でも彼女を、清李を忘れたことは無い。

 ならば、いやだからこそ、俺には彼女は清李じゃないとすぐ分かった。

 俺の前世で愛した女の子だ。見間違えるはずがない。彼女は別人だと、俺は思う。


「ああ、だから気にする必要なんてない。彼女は別人だ。」

「そう。」

 そこで会話を打ち切り、ルナが風呂に入り、寝るまで俺達の間に会話は無かった。別段変に意識して、ギクシャクしているとかじゃなく、普段から俺とルナはそんな感じだ。会話は無いけれど、そこにちゃんと何か在って、俺達を繋いでいる、そんな感覚。

 魔剣と守護者だからかもしれない。それでも、俺達の間には見えない何かを感じながらルナは、部屋に備え付けられたベッドに潜り込み、俺は窓から外へ、そして建物の上へと上り、星が輝く夜空を見上げる。


「俺がこの世界にいるなら、君もいるのか?」

 そんな、独り言が漏れる。独り言は、明日への英気を養うための人々が寝てしまった、街灯も消えた真っ暗な学術都市ハーメルンに、風にさらわれながら消えて行った。どうかこの声が君の元へと届け…。

「月が綺麗だ。」

 そんな言葉が漏れてしまった。人知れず、笑みが零れる。自虐に近いそんな苦笑い。

 くだらない。届かないだろうけど、それでも…。

「俺は、まだ君が…。」

 夜風が、言葉を掻き消し…、いや届けてくれ。


――――――――――――――――――


 窓際から眺める月は、ここでは見えないと思っていた故郷の月の様で、

「本当に、綺麗。」

 そう言って、彼女は微笑む。今は、目の前にいない最愛の人を思い浮かべながら…。


 

今後も不定期で更新していきますが、最後までお付き合いをお願いいたします。


感想、誤字報告などお待ちしております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ