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こんな世界で君は何を思う?  作者: かかかうどん
第三章 学園編
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授業開始前の、一悶着

 暗闇が東の空から白く塗りつぶされていく。それに釣られる様に街では人々が動き出す。それは、学術都市であるハーメルンの街であっても例外ではない。学生や教師が動き出す、そして彼らを相手にする商店を営む店主たちも、店を開く。


 空は白み、人々が動き出し始めたハーメルンで、髑髏の仮面を被った奇怪なローブの、それが通りを歩く。ただ、すれ違う人々はそれを気にした様子は無い。それが彼らに見えていない訳ではない。証拠に、それが会釈を行えば、彼らもそれに会釈を返している。

 それは異様であるが、その場所に不思議は存在していない様だ。


 やがて、それは一つの宿の前に泊まる。

「ここだね。」

 それが、音を発する。それは女性の声であった。


 それは、その宿を経営する主人に、とある部屋を借りている者の関係者であると話し、その部屋まで案内してもらう。

 コンコン。

 それが、部屋のドアをリズム良くノックすれば、木製の乾いた音が廊下に響く。その音は部屋の中にも響いたようで、部屋の住人がドアの隙間から廊下を伺う。

「女狐。」

「うっ…。ル、ルナちゃん。ひ、久しぶりだね。」

 それと部屋の住人が、言葉を交わす。どうやら本当に知己の間柄であるようだ。


△△△


 朝早くにベルが、俺とルナの泊まっている部屋へと訪ねてきた。何があったか知らないが、この二人は、仲があまりよろしくない。というか、一方的にルナが嫌っている。どうしてと聞いても、睨まれるだけなので、俺は本当に分からない。


 そんなベルとルナが、一つ屋根の下で向かい合って座っている。

「ル、ルナちゃん…、そう睨まないで?」

 ルナが視線をあっちこっちに彷徨わせるベルを睨みながらだが…。


「ルナ、止めてやれ。流石に可愛そうだ。」

「シェイドが言うなら。」

 ルナが睨むのを止めると、ベルがホッと息を吐く。


「で?」

 ルナさ~ん。それじゃ多分伝わらないです。

「え?え~と?」

「流石にそれは分からんと思うぞ、ルナ?」

「そう?」

 無表情のまま首を傾げるルナ。


「で?」

「おい…。」

「冗談。」

「笑えないから。」

「ははは。」

「笑ってる。」

「あれは呆れてるんだ。」

「そうなの?」

「そうだろ?」

「はは、えと本題を話せばいいのかな?」

「ほら。」

 伝わったけど!伝わったけど!!


「ごめん、ベル。それで大丈夫。」

「ひっ。そ、そう?」

 ベルが、頬を引き攣らせながらルナを伺いつつ、そう答える。ちらっとルナを見ると相変わらずの無表情だったが…。何を“怖がってるんだ”?


「そ、それじゃあ、私がここに来た理由だったね?」

 俺達は無言で先を促す。

「それはね。ルナちゃんに入学祝をあげる為だよ!!」

「…。渡して。」

 数秒の静寂が訪れたが、先程より不機嫌気味のルナが呟いた。

「あ、はい。」 

 そうして、ベルが自分の肩に掛けた鞄から、布に包まれたモノを取り出した。


「それ?」

「それはなんだ?」

「ふふーん。見て驚きなさい!」

 ベルが、それの布を取り外すと、そこには“卵”があった。

「卵?」

「そうだよ~。いや~、間に合ってよかったよ。」

「それが入学祝いなのか?」

「そうそう。これはね魔獣の卵なんだよ。」


 魔獣とは、本質的な部分は魔物であるが、それとは厳格ではないが区別をされる事がある。その違いは、ヒューマ、エルフ、ドワーフ、獣人等の人種に“恭順であるか”と言う点である。言い換えると、魔物は人種を襲う、魔獣は襲わないと言った感じだ。


 そんな魔獣は恭順であるが故に、その繁殖が容易い。


 そもそも魔物は、ダンジョン等の大気中の魔力が溜まった場所に魔石が生まれ、その魔石を核として産まれる場合と、同種族の魔物の交配によって卵を成し、そこに親の魔力が注がれることで産まれる場合の二つの場合がある。


 つまり、魔獣であるならば卵を人為的に作ることができるのである。


「まぁ、それは良いけど…。これがなんで入学祝いなんだ?」

「ふっふっふ。なんとこれは、魔獣の卵中でもレアな、無魔卵なんだよ。」

「無魔卵って、確か親が魔力を注ぐ前に何らかの理由で死亡した卵だっけ?」

「そうそう。因みに、この卵の親はブラックウルフと言って群れで狩りをする黒い狼の魔物なんだけど、殲滅途中に卵を産んだんだよね。」

「は?ベルの話だと、誰かが魔物の群れを壊滅させた上で、魔力を上げる前の卵があったって事になるんだが?」

「そうだけど?」

「じゃあそれ、魔獣じゃなくて魔物の卵じゃね?」

「あれ、知らない?魔物の無魔卵なら、人種が魔力が注げば魔獣が産まれるんだよ?この世界の初めての魔獣だってそうやって生まれたし。」

 あーなるほど。そういう事か。


「つまり、“魔力を注げば”魔獣の卵ってことか。」

「そうそう。ついでに言うと、魔獣は魔力を注いだモノを親又は主人って扱いにするから、ルナちゃん達にとって良いものだと思うんだけど?」

「なるほどね。」

「厄介ば…」

「げふんげふん。」

「ん?どうした?」

「ななんでもないよ?」

「そうか?」

 なんかベルの様子が変だが、まぁいいか。と思いつつ、件の魔獣の卵に近付く。


 その魔獣の卵は、白地に黒色の途切れ途切れの布が絡みつく様な模様だった。

「ん?」

 なんか黒い部分が大きくなってないか?いや、卵が大きくなっている?いや―――。

「「な?!」」

 俺とベルの声が、重なる。


 卵が大きくなっているわけじゃない。俺が卵に引き寄せられているのだ。

 気付いた時はもう遅かった。俺の意識は、卵に吸い込まれながら暗転した。


 数瞬だったか、俺が再び目を覚ました時、眩しい光に当てられ目を瞬かせる二人と、自分の体があると言う感触があった。

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