勤勉の最年少騎士
僕には、前世の記憶がある。別に大した記憶があるわけじゃあない。日本という国で、高校生をしていたという記憶だ。
特に何か優れていたとか、誰かに誇れるものなんてない人生だった。
そんな僕の十八年の短い人生が終わったのは、高校三年目の12/26だ。
その日も、僕はぼーっとしていた。ぼーっとしていても、赤信号で止まるぐらいはできているほどだけれど。
そんな僕は、車に轢かれた。
僕が信号待ちをしている対面から飛び出した女の子を助けるために、体がいつの間にか動いていた。
何故そんなことを、自分がしたのかは多分ぼーっとしていることに関係しているだろう。僕が心ここにあらずでいるのは、彼女のもとに行きたかったかもしれない。
僕には、幼馴染が“いた”。名前は、木村ショウリ。長身のイケメンの彼氏ができてご機嫌だった彼女がクリスマスつまり12/25に死んだ。どうやら、彼氏の家に泊まった際に強盗にあったらしい。彼、彼女の心臓は同じ包丁で貫かれていたそうだ。
それを聞かされてから、僕はどうしたか記憶が曖昧だった。気付けば、女の子を突き飛ばし、代わりに迫った車に轢かれた。
それが、僕の第一の人生。
僕は悔しかった。幼馴染を、いや好きな女の子を守れなかった自分が、情けなくて悔しかった。だから、今世では守れる力が欲しいと願った。願いは達成される前に、また今世の僕は、幼馴染を自分の前から失った。彼女は傲慢の使徒の守護者になるらしい。
僕は、悔しかった。悔しくて、悔しくて願った。でも気付いた。願うだけでは、ダメだと。僕は前世も含め凡人だ。そんな僕が望むものを手に入れるためには、努力するしかない。ひたすらに努力するしかない。
そして、僕は全使徒の騎士中で最年少の騎士になった。
さらに、十五歳になって通うことになったスーフェン第一騎士学校で、思わぬ再会をした。
最初に、入学生代表で挨拶をしたモーリス、僕の今世での幼馴染だ。身長も伸び、綺麗になったけれど一目見て分かった、彼女は僕の幼馴染だ。
次に再会ではないけど、見た目が前世のショウリままの子。名前はミオ・リリアーナ。つい二度見をしてしまい、すれ違った際に、
「ショウリ?」
って声をかけてしまった。
そしたら、何を言っているのという顔をされたので、他人の空似だったんだろう。何せ彼女が死んでから、僕にとって多くの年月が経っているのだろうから、見間違えたのだと自分を納得させた。
取り敢えず、ミオさんについては後回しにして僕は、今世の幼馴染モーリスを追った。彼女は、軽い自己紹介の後クラスを出たからだ。
数年ぶりに彼女と話がしたくて、逸る気持ちを抑えて…、抑えきれない気持ちのまま彼女を探した。彼女は隣のクラスであるBクラスにいた。そこで、赤髪のイケメンと話していた。
「モーリス…。」
気付けば、声をかけていた。彼女を守りたくて強くなった自分を見て欲しいとそう願ったから。違う。他の男と話している彼女を見たくなかったからだ。醜い感情だ。僕と彼女は只の幼馴染でしかないというのに。
△△△
騒ぎになりそうだったので、僕とモーリスはBクラスの前から離れて、人気の少ない校舎裏に来た。
「久しぶりだね、モーリス。」
「あ、ああ。そうだな、アッシュ。私が、守護者になって以来だから…。」
「七年だね。」
「そうか…。」
正直、驚きを隠せないでいる。身長も伸び、綺麗になった。それ以上に彼女の口調の変化に、僕は…。
「変わったね…。」
「む?そうか?」
「ああ、綺麗になった。」
「なっ!そ、そうかな?」
「へ?」
「いっいや、何でも無い。」
気のせいだったかな?
その後は、軽い雑談を交えた自分の近況を伝え合い、帰路に着いた。本当は送っていくべきなのだろうが、この後に用事があるとのことで、別れて一人で学園内の男子寮に歩いていく。辺りは夕日によって徐々に暗くなってきていた。
――――――――――――――――
勤勉の騎士、確かアッシュだったかは、モーリスと別れて一人、闇が広がりつつある寮への道を歩いて行った。
ふむ、用事があるとはいえ人のいないこんな所に置いてくかね?まぁ、傲慢の守護者相手に何かできる相手なんて他の使徒の配下だろうから、問題はないか…。
「居るんだろう?」
おろ?
「む?まさか…。いないのか?」
ああ、別に気づかれたわけじゃないと…。
『怠惰の守護者は目立ちたくない。』
「…、やはりいたか。しかし、能力か?」
俺の能力は教えてないのか?ほいほい教えるものじゃないか。
『そんな所だ。』
「ふーん、変わった能力だな。で?要件はなんだ?」
『さっきも言ったが、怠惰の守護者に関わるな。』
「若干違う気がするが、私が接触することで目立つという意味でいいか?」
分かっているじゃないか。
「ふむ、一応了承しよう。それにしても、なぜそこまで目立たない事に拘る?」
『お前に関係あるか?』
「力を持っていることを隠す意味が分からないだけだ。多くの人間を救う為ならば、それは枷にしかならないだろう?」
…こいつは知らないのだろうな、力を持つ責任と持たない己への自責の念を。
『それから逃げているから、なお性が悪いがな…。』
「む?」
『何でも無い。取り敢えず、“俺達”に関わるな。』
「む?それは、ど」
返事を聞かず、俺はその場を後にしルナがいるだろう場所へと向かった。
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