転生はよくある話。
「大体こんな感じだよね。」
「そうだが…。こうして見ると碌でもないな。」
俺は、今四方を壁に囲まれた空間で、小学校高学年位の少年と、一緒にある本を読んでいた。
その本の題名は、僕の一生。著 僕、原作天利浩二だ。つまり、俺、天利浩二の一生を、目の前の黒目黒髪の少年が、小説風にしたものだ。
どうしてこうなったかというと、この本の通り、俺は付き合って一ヶ月の彼女に包丁で心臓を貫かれたことに起因する。
あの時の俺は、清李に刺された後、気を失った。次に目を覚ました時、僕はこの四方を壁に囲まれたこの部屋にいた。辺りに光源らしきものは見当たらなかったけれど、不思議と周囲を見るのに苦労はしなかった。そう、苦労しなかった、体の感覚が無いのに。十七年の馴れ親しんだ僕の体の感覚がない。
そもそも、自分は死んだはずだ。それは間違いない。自分の体を切り裂き侵入してくる異物。そこから出る赤い液体。急速に冷えていく体。視界の色は失って、灰色へと変わる世界。微笑む彼女。
どれも確かに現実だと思う。あれが夢でこれも夢だとするなら、(いや、そうあってほしいというのが俺の本音だ。)状況はおかしい。
一つ目、俺が目を覚ますと、さっきの小説もどきを音読し始めた少年。こいつに俺は面識はない。
二つ目、体の感覚がないことに、俺が不自由を感じてないこと。
三つ目、どれもが現実味を帯びすぎている。最近の技術でもここまでは進歩していない。
以上のことから、夢とは考えるのは、妥当でないことは判断が付く。
「で、現在の君の状況について話そうか。」
「ああ、頼む。」
俺は、これが夢じゃないという仮定で行動すべく、現状を一番理解しているだろう少年の話を聞くべきだと判断した。
「君は、あの世界で死にました!勿論、愛する彼女の手によってね。」
「っ!」
分かっていたことだが、やはり俺は、清李に刺されたんだな…。
「そんなわけで、救いのない君の魂を救済しようかなと、思うんだよね!」
「救済?」
「そそ、君には僕の“守護者”の武器、魔剣になってもらいまーす!」
「は?魔剣?」
ちょっと待て。剣?俺が?
いやいや、まぁ、清李に刺されて死んだ、そんで転生っぽいことになっているそれはいい。ただ剣とは何ぞや?
「混乱してるね~。実際、剣ではないよ。魔剣っていうのは通称でね。君、怠惰の魔剣は、影だ。」
「かげ?」
「そうそう、影。物体に光が当たるとできるやつ、あれね!」
「は、はぁ。」
いかん、訳分からん。なんか分からんうちに、さらに分からんことを言われている…。
「続けるとね…。」
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「つまりだ。人の魂を魔剣や聖剣という器に入れて、守護者だっけ?そいつの武器として、お前の配下になると…。」
「そうそう。」
「んで、その魔剣、聖剣は各使徒で形、能力がバラバラ。」
「うんうん。」
「だから、怠惰の魔剣たる俺の形は影。能力は守護者の“気配の濃度を変えられる”っていう唯一の非殺傷魔剣と…。」
「そうだよ!いや~、飲み込み早くて助かるよ~。」
「ついでに現在俺はその守護者が居ないから、ただの魔力の塊だと。」
「そう!だから君に、至急守護者候補に会いに行ってもらいます!」
「ああ。ん?候補?」
「そう、候補。君が気に入らなければ、別の候補を探すことになるね。」
「それってすぐ見つかるものなのか?」
「う~ん。魔剣との親和性が鍵だからなかなか見つからないかも?」
ふむ、非殺傷武器なのはいい。能力も、それらしくて結構だ。ただ守護者候補か…。変な奴だったらいやだな…。
「あ!候補の子はね、まだ生まれてないからね?」
「はぁ?」
すまん言っている意味が分からん。生まれてもないのに、至急どうやって会えと?
「いや~、ごめん。至急ってのは語弊があったね。その子が生まれる家は分かってるから、そこに行って、産まれたら契約結んじゃってよ?」
「契約?どうやってやるんだよ?その子生まれたばっかなんだろ?」
「相手が契約に同意してくれれば、契約完了さ。それに、その子も転生者だから大丈夫だよ。」
「転生者?もしかして転生ってよくあることなのか?」
「そうだよ~。この世界はね、何個かの世界の中間に存在しているから、各世界の輪廻のシステムに事故が起きると、だいたいこの世界に転生しちゃうんだ。」
ふむ。転生者が結構いるらしいならば、現代知識によるチートなんかはできないのかな?まぁ、俺の知識がチート級になることはないだろう。
「あとは質問ある?」
「いや、特には思いつかないな。」
「そっか。じゃあいってらっしゃい。」
「ああ。あれそう言えば、どうやって俺はその家に行けばいいんだ?」
「ん?それはこうするの。」
そう言うと、あいつを中心に床が光り始めた。よく見ればそれは幾何学的な模様を描いていて、色も紫色でなんか毒々しい印象だ。
「これで転移してもらうから。じゃあ、改めていってらっしゃい。」
転移…。なるほど、さすが魔法のある世界。
「ああ、いってきます。」
なんか、恥ずかしいな…。お、床の輝きが強くなった。
「そうだ、守護者の母親黒目黒髪で名は…だ。」
視界を紫の光が埋め尽くした。
光が晴れたとき、そこは廃墟だった…。?!
「家は?!」
俺は、つい叫んでしまった。
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