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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第六章 新世代の争い
135/153

打って変わって、傲慢な令嬢の方へ

手配しておいた荷馬車にシャルリエと乗り込み、連れてきた侍従たちもみんなキャラバンに乗せて、帝国南部へ通ずる山道を下り始めた。生憎、天気は悪く、暗い夜の山道を下るのは少々危険だが、時間が惜しい。

「まるで夜逃げのようですね。」

対面で座りながら、窓の外を眺めているシャルリエが言った。確かにそうなのだが、今の状況でそんなことを言われてしまったら、まるで彼女と駆け落ちでもしているみたいに聞こえてしまう。一応、合理的な判断の元、決断したつもりだが。

「ブリジット渓谷に着いたら、今後の俺の、いや、我々の計画についてを話そう。」

「計画、ですか。んー。エルドリック様は、帝国を脅かす敵と対峙するおつもりなのですよね?」

「ああ。だが、それそのものが目的じゃない。」

「では、いったい何が目的なのですか?」

「ふむ、そもそも、帝国を脅かす敵、というのは、いったいどういうものだと思う?」

「え?・・・それは、ジエト陛下に、王家に反するということでは?」

「あぁ、その通りだ。じゃあ王家に反して、我こそが新たな王になる、という行為は、この国で悪とされることだと思うか?」

「・・・・・・。」

言葉に詰まるシャルリエ。この問い堪えられる者は、なかなかいないだろう。良くも悪くも実力主義という暗黙の了解が、その判断を鈍らせているのだろう。

「力があるのであれば、上へ成り上がるのは当然のことだ。君も、力ある者に打ちのめされた経験があるだろう?」

「・・・ええ。」

「俺も、そういう経験がないわけじゃないし、力ある者が王になるという慣習を否定するつもりもない。俺たちが敵と呼んでいる奴らが、陛下に取って代わってこの国の王に成ろうとしているのなら、こんなに躍起になることもなかっただろうさ。」

「つまり、敵の目的はそうではないと?」

「この国には今、次期国王候補がいない。それがどういう意味があるかわかるか?」

「・・・今、陛下がお亡くなりになれば、次の国王はいない。」

「そうなれば、奴らがしようとしているのは、王位の簒奪だけに留まらない。帝国そのものを牛耳ることだってできるだろう。」

「ま、まってください。それは些か、話しを誇張し過ぎではありませんか?帝国を牛耳る?それだけの勢力が敵側にあるというのですか?」

シャルリエは、貴族会議に参加するにあたり、帝国に仇名す敵の存在については詳しくはわかっていないのだろう。表向きは、魔獣や北部戦線の状況の改善のために招集されたのだから、無理もない。だが、彼女の言う通り、リベリ家やコーア家が今王城に集まっている勢力を全て相手取ることなどできないだろう。今、ジエトを獲られてしまえばその可能性も合るというだけで。

「ないだろうな。だが、魔法一つで、戦況が一変することだってある。たった一人の強大な存在に、全てをかっさらわれてしまっては遅いのだ。」

「はぁ、わたくしにはまだ、何が何やら・・・。」

「ブリジットに着いたら、いろいろと話してやる。君の父親のことについても、話を詰めよう。」

ロウが、潜入を無事成功させていれば、奴らのやろうとしていることもわかるだろう。ある程度は予想しているつもりだが、事実を知って、より明確な対策を打たなければなるまい。



安穏としながら、しとしとと降りしきる雨を切り裂きながら、純白の姿態が流星のように空を舞っていた。白い体の翼竜の背には、人の影があり、彼女からも僅かに輝く白い筋が伸びているように見えた。

真っ暗な夜の、しかも雨の中を高速で飛び回るのは、いささか無茶が過ぎたかもしれない。だけど、私はともかく、スノウがどんな天候にも慣れてもらわないと、今後の行動で問題が起きるかもしれないから、こうして訓練をしているのだ。


――― 寒くないの? ―――


「ええ。平気。私も翼があるからね。包まってると、意外と温かいの。」

人間に翼があることに、しばらくは興味津々だったのだが、今では話に出しても聞いてこなくなった。この速度で夜の空気をかき分けていくのは、真冬に素肌を晒しているようなものだ。一応、ローブは来ているし、服も半袖だけど厚地のものを纏っているから、それほど気にはならないけれど、雨水が衣服を伝って肌にたどり着くと、さすがに体が震えてくる。

「さぁて、そろそろ戻りましょう。疲れたでしょう?」


――― うん、帰ろう ―――


背中をポンと叩くと、スノウは緩やかに降下を始めた。早めに戻らないと、体に障る。なんだかんだ調子がいいから、元の生活に戻りつつあるけれど、変わってしまったこの体とは、向き合わなければならないことがたくさんある。

帰り際、ふと下を見下ろすと、強い灯りが見えた。こんな夜中に、こんな高高度まで光が届くのは珍しい。ブリジットの渓谷街ではない。クルルアーンの方だ。

「なにかしら?」


――― 見に行く? ―――


「お願い、スノウ。」

空路を修正して、明かりが灯っている方へスノウは降下していく。やがてクルルアーンの上空へ来ると、その灯りが、明かりではなく、巨大な火の手であることに気づいた。

「火事?こんな夜中に。」

既に周囲は人で溢れかえっていて、大きな騒ぎになっていた。雨が降っているとはいえ、燃えているのは木造の建物らしく、火は大きくなる一方のようだ。帝政の敷かれていないこの街では、魔導士なんているはずもないから、消火方法も原始的なのだ。建物自体が相当大きなもので、あれでは自然に沈下するのを待つしかないだろう。ただ、私はその建物と周囲の地形を見て、それがあの児童保護所であると気付いた。

なぜ?と考える前に、あの中には多くの身寄りのない孤児が暮らしていたはずだ。それを想像した時、嫌な汗が背中を伝っていくのが感じられた。

「急いでスノウ!」

降下する角度を少しばかり傾けて、現場へと急行した。ある程度の高さになってから、私はスノウの背中から飛び降りた。ローブの襟紐を緩めて、体に巻き付けていた翼を大きく広げた。残念、かどうかはわからないけど、飛べるわけではない。ただ、上手く翼を操ることで、速度を落としながら滑空することはできるようになったのだ。火事が起きているすぐ傍では、人目もあるから怪しまれるので、少し離れた場所にふわりと着地した。少し見立てが甘かったのか、着地したときの足への衝撃がズシリと全身に響いてきた。そんなこと気にしている場合じゃないのだけど。

現場へ駆けつけると、既に住人の子供たちが外へ逃げていいたが、それにしては緊迫した空気だった。

「まさか、まだ残された子が・・・。」

周囲の住人らが、井戸から持ってきた桶をリレーしている。これだけ火の手が上がっていれば、建物自体は、もう助からないだろうに。やはり逃げ遅れた人がいるのかもしれない。

「我が眷属よ来たれ、親愛なる聖獣(アルバ・ス・ツォーネ)!」

生憎魔法の触媒は持ち合わせていないため、直接氷の魔法を放つことはできない。

「スイレン、行って!」

呼び出したのは、氷属性の守護獣。三又の尾を持つ狐の姿をした青い守護獣だ。青いというより、流動する氷が、守護獣の形を成しているだけだが。

スイレンは、火に水を注いでいる住民たちの前に割って入って、燃える建物と対峙した。雄たけびのような遠吠えを発すると、口元にどこからともなく水が集まってきて、小さな氷の塊へと変わり、それは徐々に大きくなっていった。人の背丈を優に超える巨大な氷塊になったとき、スイレンは三又の尾を氷塊へ叩きつけ、燃えている建物へと殴り飛ばした。

氷塊が、火の中へと放り込まれると、じゅー、という水気が蒸発する音が聞こえてきた。

「建物から離れて!早く!」

私がそう叫ぶと、周囲の住民たちが怯えながら火の手から逃げていった。火によって急激に蒸発していく氷塊から、高温の水蒸気が噴き出し始め、やがてそれは、周囲一帯を吹き飛ばすほどの暴風を生み出した。

爆発音は果たして、暴風が生み出したものだったのか、建物の残骸が吹き飛んだものだったのかはわからないが、耳を塞ぎたくなるような轟音が響き渡った。しかし、それでも建物全体が崩れることはなく、まだ半分くらいは火の手が回りきっておらず、煙を吐きながら原型を留めていた。

私は爆発で僅かに開いた空間へ向けて駆けだした。戦闘にスイレンを構えて、火の中に飛び込んだ。ローブも衣服も雨でぬれていたため、かろうじて燃えずに残ってくれている。あまり時間は駆けられない。

「逃げ遅れた人は大声を上げなさい!」

身を低くして、可能な限り声を張り上げ、耳を澄ました。バキバキと木材が崩れる音に紛れて、子供が泣いているような声が聞こえたような気がする。

一度入った建物の構造を覚えているはずもないが、先ほど吹き飛ばしたのが児童保護所の玄関口だとしたら、奥の方に子供たちの寝室があったはずだ。

「スイレン、先に行って。」

守護獣であるスイレンは、正しく魔法で生み出された生物ではあるが、鼻が聞いたりするわけではない。だが、スイレンが放つ冷気を間近に感じていなければ、この灼熱の中をまともに呼吸することすら出来ないだろう。

スイレンの後をぴったりとついて子供たちの寝室までやってきた。天井付近は煙が充満していて、所々から赤い火が見える。おそらく屋根は既に燃え始めていて、燃えた残骸が落ちてくる可能性がある。部屋の隅っこに、3人の幼い子供と、少し大人びた少女が、幼子を庇うように抱えていた。

「大丈夫!?」

私が声をかけると、不安そうな4人の子供の表情が私を捉えた。四つん這いで彼女たちの元へ辿り着き、4人の状態を確認した。

4人とも意識ははっきりとしている。ちびっこのおかげで、煙の影響をあまり受けなかったのだろう。一番年上の少女も、それなりに知識があるのか、ハンカチを手に持っている。

「あ、あの!?」

「もう大丈夫。絶対に助けてあげるから!」

私がそう声をかけると、幼子たちの表情に僅かな余裕が伺えた。とはいえ、魔法触媒もない状態で、どう脱出したものか。今の体の状態も考えて、壁を破壊できるほどの威力を放つ魔力があるかどうか。


――― 助けてあげる ―――


唐突にスノウの声が頭に響いてくる。

「助けるって、どうやって?」

そもそもスノウは私がいる位置を正確に把握しているのだろうか?スノウは私の問いかけに答えず、嫌な予感がしてきたが、案の定天井がミシミシと悲鳴を上げ始めた。

「ちょっ、嘘でしょ!?」

所詮は翼竜の知力ということか。下にいる私たちの心配を考慮できていない。おそらくスノウは、燃える屋根を強引に剝がそうとしているのだろう。確かに今天井が開けば、煙も外へ放出され、逃げ道が出来るかもしれないが。

「我が眷属に命ずる。我らを守る盾と成れ。」

スイレンに魔法をかけると、守護獣は傘のような姿に代わり、私と子供たちを覆い隠すようにかぶさった。とはいえ、薄い氷の傘だ。すぐにでも溶けて意味をなさなくなる。私は、3人の幼子を抱えている少女の上からさらに自分の体をかぶせて、翼で彼らを抱きしめた。あとは祈るしかない。

がしゃがしゃとやかましい騒音の後、空気がぶわっっと空へ流れるのを感じた。同時に背中にいくつもの熱い破片が降りかかっているのも。熱をこらえながら、音が止むのを待っていると、


――― もう大丈夫だ ―――


と、スノウから声が聞こえてくる。

恐る恐る顔を上げると、見事に天井が開かれ、建物の壁からスノウが首を伸ばしてこちらを覗いていた。

「・・・うまくいったからよかったものの・・・。」


――― ん? ―――


まぁいいだろう。スノウに壁を力ずくで壊してもらい、逃げ道を確保した。

「他にお友達はいない?」

「は、はい。たぶん、いないと思います。」

少女に確認すると、少なくとも彼女は知らないという。これ以上はさすがに私の体も持たないし、スイレンも溶けてほとんど原型を留めていない。そろそろ維持するのも難しくなるだろう。万全の状態であれば、この程度の火災どうってことないのに。未だ魔力欠乏症の弊害を克服できていないのが悔やまれる。とにかく、他に逃げ遅れたものがいないなら、無理に探す必要もないだろう。

「さぁ、いって。大丈夫。この子は優しい翼竜よ。」

ちびっこ3人は好奇心が優っているからか、さして怯える様子もなくスノウに襟を加えられていたが、少女は少しばかり怯えていた。無理もない。自分たちが住んでいた建物よりも優に大きい獣だ。

「大丈夫だから、ね?」

彼女と一緒に、スノウの翼に手を伸ばしてあげた。彼女の手に私の手を重ねて、固くごつごつとした甲殻の感触を確かめた。僅かな熱量と、触れても決して襲ってこない翼竜の姿に、少女もいつしかその美しい生き物に目を奪われていた。

「さぁ、急いで離れましょう。」

スノウに風よけになってもらいながら、ちびっ子たちを火の手が届かない保護所の庭まで誘導した。庭の方には、住民たちが既に待っていて、児童たちの世話をしているらしき人物が泣きながら出迎えてくれた。

「ありがとうございます。このような辺境の地に、貴族のお方がいらっしゃるとは、なんとお礼を申せばよいか。」

魔法を使うところを見られてしまったから、貴族であることは隠せないだろう。まぁ、隠す必要もないのだが。

「子供たちが無事でよかったです。あとを任せてよろしいですか?」

「はい。子供たちのことはお任せください。」

世話係の者は、そういって子供たちに囲まれながら、去っていった。

「さて・・・。」

どうして、この児童保護所が火事になっているのか。偶然であれば、特にいうことはない。だが、ここには多くの秘密が眠っていた。私たちが潜入したことで、探りを入れられないよう、保護所ごと火をつけたのだろうか?そんなことをせずとも、あの魔法で繋がっている空間との接続を着ればいいだけのことのように思えるが。

「沈下したら、あの身隠しの魔法が施されていた場所を確かめないとね・・・。」


――― ロウ、見られてる ―――


「えっ?」

スノウの警告に私は、その視線を追った。スノウが見ていたのは、野次馬の中でひっそりと身を潜めているマントにフードを被ったいかにもな人物だった。


――― さっきから、見られてた ―――


犯人は現場へ戻ると、よく言うが、あんなあからさまに姿を隠していては逆に目立つというものだ。おそらくプロの隠密ではない。私自身もプロというわけではないが、その私でも見つけられるのだから、相手も並のものだろう。

スノウは、私を見ていたというが、子供たちを見ていた可能性だってある。犯人の目的が子供たちごと証拠隠滅を図ろうとしたのなら、私は犯人の思惑を壊したことになる。とにかく、捕まえて聞き出せばいいだけの話だ。こちらには翼竜がいる。人間が逃げ延びる手段は存在しない。

スノウの背中に飛び乗ろうとしたとき、住民たちの間を乱暴にかき分け、一人の男がこちらへ進み出てきた。先ほど隠れていた、容疑者の者と似たようなローブとフードを纏って。しかし、その男の右手がこちらへ向けられているのを見て、私は咄嗟に自分の翼を盾にした。

「輝石のつぶてを与えん!輝きの玉(ホーリージェム)!」

彼の手から放たれたのは、光り輝く石ころだった。その勢いは翼を容易に貫くほどの速度で、体に風穴が空くような痛みが横腹を襲ってきた。

「ぐっ!」

「燃えよ、輝石。炎転せよ。爆ぜる玉(ファイズニッパー)

男は続けざまに詠唱をしてきた。私が得意としてきた六竜顕現とおなじ、展開型の魔法だ。異なる詠唱を次々と展開し、魔法に魔法を重ねて、魔法そのものを変化させていく。どこかで反撃に転じ、奴の詠唱を止めるなりしなければ、男の魔力が尽きるまで攻撃されてしまう。

光の速さで刺突してきた石ころが、私の足元へ転がったのち、それらは癇癪玉のように、火花を散らしながら小さな爆発を起こした。

私は、一つだけ持ってきていたクレスの薬瓶を懐から取り出し、それを一気に煽った。どれだけ持つかはわからないけど、魔法の規模、威力を見た所、どれも人の命を奪うほどの致命的な威力はない。そもそも、奇襲を仕掛けた時点で、一撃で仕留められない魔導士など、私からすれば格下もいい所だ。例え魔法触媒がなくとも・・・。

「眩い閃光、日いずる時をここに。朝日(メニッバン)!」

「・・・慄け、消え失せよ。消失(クリア・デルト)。」

男の手には、光属性の触媒が輝きを放とうとしていたが、その光はぱっと消えてなくなった。

「・・・は?・・・」

「ふぅ、その程度の魔法。まだまだ研鑽が足りませんね。」

男は何が起きたかわからないといった様子だった。

「くっ。輝石のつぶてを与えん!ホーリージェっ・・・。」

消失(クリア・デルト)

再び石ころを飛ばそうとしてきた魔法を、私は再び同じ魔法でかき消した。

「展開型の魔法の欠点は、展開の最中に一部の魔法を発動せずにいると、一からやり直さなければならないということ。それに比べて複重魔法は同じ言葉を口にするだけで、威力や効力が強まっていくのだから、単純でありがたいわね。」

「?、?、?。」

男の表情からして、何が起きているのかわからない様子だ。相手の魔法そのものを消し去るのは、魔法に込められた魔力量を把握する必要がある。十分な魔力が集まっていなくとも魔法を発動することはできるが、不安定な魔法になってしまう。不安定な状態になると、魔法はちょっとした刺激を受けただけで、壊れてしまうのだ。

男が放つ魔法は、確かに魔法として成立しているのだが、私の魔力に影響を受けてしまうほど、不安定なものだったのだ。だから、本来自身の魔法を一瞬で消し去る消去(クリアランス)の魔法が、自身以外の魔法にも反応して、消え去ってしまうのだ。

(まぁ、高等技術なのは間違いないけど・・・。うまくいってよかった。)

「ちっ。」

男は魔法が放てないことにいら立ち、踵を返して住民たちの中へとかけていく。悲鳴を上げる住民たちをかき分け、男は暗い街の中へと消えていく。


――― 大丈夫?ロウ ―――


「平気、よ。あいつを追って!」


――― どっち? ―――


スノウの背に飛び乗りながら、先ほど私を見ていた者を探したが、どうやら見失ったようだ。上空へ飛べば、まだそっちも追うことが出来るだろうが、今は確実な方を追うべきだ。

「あの男よ。お行き!」

竜鞍の手綱をしっかりと握り、私はスノウを低空で飛翔させた。地上から驚きの声が上がっているのを他所に、逃げた魔導士の男の姿を捉えていた。私が見えなくなっても、スノウが見失うはずがない。

そして、翼竜から逃げ延びることが出来る人間など、この世に存在しないのだ。




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