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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第六章 新世代の争い
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やるべきことがたくさん

「アルハイゼンの死後、遺体は火葬する予定だった。葬儀では、多くの者に、参列し最後の別れを行うはずだった。特に、ロウにはな。死に目にさえ会わしてやれなかった。だが、アイツの命が無くなった翌日、遺体は安置所からなくなっていた。よもや死体が一人で動き出したのではと、我々は一縷の期待を望んだが、それ以降遺体が戻ってくることはなかった。当然、捜索はしたさ。だが、そんなことをする理由もわからないため、犯人を見つけ出すのはむずかしかった。だから、公には親族内で葬儀を行うということにし、王家の墓には、空っぽの骨壺だけが埋葬されている。遺品は全て、王城の特別宝物庫に保管されている。」

「やはり、そうだったのですね。」

当時のことは、俺もよく覚えている。親族ではあるものの、親戚であるから、そのひっそりと行われた葬儀にさえ出席しなかった。あの時は疑問にも思わなかったが、今でこそ、それをやった犯人の目星がつく。

「容疑者は、いたはずです?」

「ああ。そもそも遺体が盗まれたのは、アルハイゼンが死んで翌日のことだ。死してから翌日に、それを行えるのは、当時王城にいた者たち。それも、アイツの病室を行き来出来て、死んだことを知っていた者たちだ。」

そう。それに合致する者たちが、アルハイゼンの取り巻きでもあった者たちだとすれば、犯人は間違いなく、リベリ家のルルークを筆頭とした、魔力の固形化実験を行ったものたちだろう。もちろん、奴らの傘下の者たちかもしれないが、主犯であることは揺るがないだろう。

「エルドリック、そなたは、その目星がついているのだろう?」

「ええ。まだ確定したわけではありませんが・・・。一人目がルドゥサ・コーア、防衛大臣のノブナ・コーアの娘。二人目が、ルルーク・アーステイル・リベリ。」

「あのリベリ家の後継ぎか・・・。」

「最後に、ミラノ・エイル。彼女に関しては、情報がありませんが、ルルークの取り巻きか、単純に友人ということもありでしょうな。とにかくこの3人が、関わっているのは間違いありません。」

「コーア家に、リベリ家。リベリはともかく、コーアが裏切っているということか?」

「そこは怪しいところです。次世代の若者たちだけで、暴走しているという可能性もあります。ですが、彼らの諸々の実力は、決して侮れるものではありません。」

現状、彼らは北部戦線の魔物の侵攻や、魔獣の強襲に紛れて、その実態を掴めてすらいない。奴らが何者で、どんなことを目的としているのか。どんな組織なのか。そこが一番の問題だ。

「今回の貴族会議では、コーア家は警戒すべき相手でしょう。」

「警戒すべき相手は、五万といる。だが、全てを疑ってかかっては、我に味方する者もいなくなるだろう。」

ジエトは、唸るようにそう言って、酷く険しい表情になっていた。彼の言うように、貴族や帝国王族は、王家、つまりリンクス家に忠誠を誓い、王として見据えていた。ジエトの才覚や武力、政治的能力を評価していたから、今まで平穏な帝国でいられたのだ。

だが、それに反旗を翻そうということは、ジエトに対して王にふさわしくないと思っているか、あるいは、自身こそが、王として相応しいと考えている者が現れた。いや、そもそも王位奪還が敵の目的とは限らない。帝国そのものを滅ぼすことが目的かもしれない。

現に魔獣の被害や、北部戦線での戦いで、帝国の国力はギリギリの線を保っている。残っている戦力は、本来戦いには参加しない。ジエトをはじめとした貴族や帝国王族のみ。領土、臣民の統治を本来の役割とする彼らがその身を盾にして戦う事態は、本当に最後の手段を出してしまうのと同義だ。

「エルドリック。そなたの忠告は胸にしまっておこう。だが、我の役割は、貴族たちと協力して、この帝国を安寧へ導くことだ。」

「わかっています。ですが、今陛下のお命が、この帝国の柱となっていることを、お忘れなく。」

こんな状態で、国王が逝去すれば、それこそ敵の思うつぼになる。それだけは絶対に阻止しなければならない。なにせ、帝国には今、次期国王たる存在がいないのだから。

「あれだけの警護があれば、陛下のお命が狙われることもないでしょうが。」

「安心しろ。我とて、常に無防備というわけではない。」

「私も常に、陛下のお側におります故、貴方の心配は無用よ。エルド。」

老いても、衰えても、この国の王と妃だ。そう安々とやられることもないだろう。だがそれでも、俺からしてみれば、決して油断できないことだ。どれだけ強力な魔法を有していても、それは万能ではないということを知っているからだ。


ジエトたちとの話を終え、さっそく禁書庫の鍵を借りて、件の魔導書を回収した。書庫を出る前に、さらっと中身を確認したのだが、まるで意味が分からなかった。書いてある文字は帝国の文字だ。だけど、内容は魔導書とは呼べないおとぎ話だった。魔法の使用方法も書いていないし、図説もなければ、解説もない。魔導書というより、まるで小説のようだった。

「こんなものから、全てを焼き尽くすあの劫火を見出せるんだから、やはり彼女は特別だな。」

特別というか、・・・意味がわからない。いったいこの文章からなぜ魔法を解読できるんだ?まぁなんだっていい。これは後でエレノアに頼んで、クルルアーンへ送ってもらうとしよう。

次は、深水だ。王城の最上層。泉の階から転送魔法によって地下深くから送られてくる噴水。その水を少しばかり拝借しなければ。



読んでくださり、ありがとうございます。

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