表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第六章 新世代の争い
127/153

真実の在処

王城でやるべきこと、その1。とある禁書の回収である。

「それって、確かあの子が王妃教育を受けていた時に漁っていたものね?」

やはり、フィリアオールは知っていたようだ。だが、今ここでロウ自身を匿っていることを話すわけにはいかない。それとなく嘘をついて、これを聞いている者たちに、情報を与えないようにしないといけない。

「彼女、ロウ殿は多くの魔法を駆使して、問題に対処していました。彼女の原点を知っておきたいのです。」

「それは構わんが、・・・そなたでは禁術を使いこなすのは無理ではないのか?」

「別に俺が使うわけではありませんよ。知識として持っておくことで、誰かに伝授することは出来ましょう。もっとも、俺が使えればそれに越したことはありませんが。」

おそらく無理だろう。おおよそ、彼女の魔力量と、才覚あって完全に行使できる魔法だろう。個人的に興味があるけれど、実際に目にしたこともない魔法を、魔導書を呼んだだけで扱えるほど、自分の能力がないことはわかっている。

目的は単純。それを彼女へ届けることだ。どれくらい彼女に力を授けられるかはわからない。だが、彼女に力を授けるには、他に心当たりがない。翼竜に、彼女の魔法のルーツである禁書。それだけでこの難局を乗り切れるかはわからないが、必要な物は全てそろえるべきだ。

王城でやるべきこと、その2。深水の調達だ。

「泉の階にある、転送魔法を少し利用させてください。深水をいくらか使いたいのです。」

「・・・魔法触媒でも作るのか?」

「ええ。今後の戦いに備えて、ストックは多い方がいいでしょう。」

「そうだな。転送魔法については、どうこうすることは我にも難しい。だが、泉の階から採取するならば、好きにするといい。」

僅かな動揺。目の瞳孔が揺れた。あまりにも突拍子な申し出に、少しばかり警戒されたのかもしれない。ジエトにとって、俺自身も敵か味方かを探るのは当然だ。この時期に、こうしてわざわざ出向いた甥っ子が、敵ではないと信ずるのには、親族の情だけでは足りないだろう。

王城でやるべきこと、その3。これが最も重要で、ジエトか、あるいはフィリアオールしか知らない事実だ。それを素直に聞き出せればいいのだが、話してくれるかは賭けだ。これを聞けば、もはや何を疑われても仕方がないが、それだけに重要なことなのだ。

「最後に一つ、陛下たちにお聞きしたいことがあります。」

「・・・。」

「王子殿下、・・・アルハイゼンの墓は、どこに隠したのですか?」

「・・・・・・エルドリック、そなた・・・。」

「怪しいと思うなら、すぐにでも護衛のものに、俺を拘束させて構いません。」

当時から今日に至るまで、誰もこれに関して、言及はしてこなかった。そもそも王家の墓は、歴代の王族たちにしか知らされておらず、他言はされていない。だが、アルハイゼンが亡くなってから、正式な葬儀は一回も行われていない。親族のみで、ひっそりと行われた、と公にはされているが、それ自体異例なことだ。王族でなくとも、権力者の葬儀は、相応に大きく執り行われるものだ。だが、その頂点に至るアルハイゼンの葬儀が行われなかった。まともな思考があれば、何かしれれたくないことがあった。知られてはいけない事実があると考えるのが自然だ。

「それを聞いて、そなたはどうするつもりだ。・・・何を企んでいる?」

「企みなどはありません。俺はただ、敵が何をしようとしているか。それを確かめているだけです。」

「敵、だと!?そなた、何を知っている。なぜ我々にあの話を聞きに来た!」

あの話、と口を滑らせたのか、思わず出てしまったのか。どちらにせよ。やはり、アルハイゼンの死について、あるいは遺体については、何か裏があるようだ。

「陛下、俺は、ただ誰もが疑うことを、言葉にして問いただしているだけです。そして、それを知ることで、いろいろと繋がるのですよ。」

「繋がる?エルド、貴方、何か良くないことをしようとしているんじゃないでしょうね?」

「ご安心ください。フィリアオール様。俺はただ、アルハイゼンの遺体の在処を知りたいだけです。神聖な亡骸に、手を出すようなことはしないと約束しますよ。」

そう言っても、二人はなおも俺のことを疑いの目で見ていた。なにせ、個々には俺たち以外にも、護衛が多数いるのだから、彼らにも何か裏があると話してしまったも同然だ。

「・・・一つだけ、話せ。エルドリック。そなたは、我らの敵か?」

「・・・それに答えたところで、陛下の疑いが晴れるとは思えませんが・・・。答えは至って簡単です。俺は陛下の敵でも味方でもありません。」

「なに!?」

「俺はただ、帝国の未来のために動くだけです。それを守るためならば、例え陛下やフィリアオール様であっても、説き伏せて見せましょう。」

俺の目的はただそれだけ。それを言えば、信頼してもらえるとも思ってはいない。だが、言葉の通り、ジエトやフィリアオールに反対されようと突き進むだけだ。

だが実際には、二人はなんだか呆れたような表情になっていた。

「はぁ、そなたといい、ロウといい。どうしてこうもう同じことを言うのか・・・。」

「本当ですね。頼もしさを通り越して、可笑しくなってきました。」

「ん?」

「よい。全て許そう。そして、アイツの遺体についても、話しておこう。皆、済まぬが一時部屋を開けてくれるか。誰も部屋に近づくな。周囲の人払いも頼む。」

ジエトがそう言うと、護衛の者たちは、何も言わずに部屋を出ていった。宰相のクリスハイトの指示で動いているらしいが、ここまで従順ならば、よからぬことも起きないだろう。全員が出ていった後、念をおしてフィリアオールが静寂(クワイエット)の魔法で部屋中の音を内側に遮断した。

「これでいいだろう。」

「陛下、俺は、何も考えなしに、疑ってかかったわけではありません。ある程度の情報をもとに導きだしただけです。そして、俺の推測が間違っていなければ、アルハイゼンの遺体は、どの墓にも埋葬されていない。何者かに盗まれたと考えていますが、いかがでしょうか?」

「・・・・・ああ。そなたの言う通りだ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ