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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
閑章
101/153

魔力の六竜

気付けば100話を超えていました。

まぁわけわかんない区切り方してますから、当然と言えばそうですが( ゜Д゜)

魔法決闘は、単に魔法をぶつけ合えばいいというわけではない。相手の詠唱をよく聞き、それに合わせて自身の魔法を選択しなければならない。

相手より少ない詠唱で魔法を発動しても、後出しで強力な魔法によって力負けすることもあれば、長く詠唱をし過ぎることで、魔法を発動する前に、先手を打たれてしまう時もある。重要なのは、相手と発動のタイミングを合わせること。相手の魔法に対して十分な魔力と詠唱を重ねることにある。もっとも、1対多の今の状況では、そんなことも言っていられないのだけど。

「「「「雷よ、貫く矢となり駆け抜けろ!駿槍(ライオット)」」」」

雷の魔力を込めていた前方の4人の令嬢から、ものすごい速さで雷の矢が飛んでくる。直線的な軌道だけど、人が躱せる速度じゃない。こういう時のための簡易魔法だ。

「斬、炎転。」

生みだしたのは雷の鎌と、炎の小爆発。短い詠唱の簡易魔法。言葉一つで発動できる簡単な魔法だけど、込めた魔力はありったけのものだ。

雷の鎌は回転しながら雷の矢を周囲に散し、炎の小爆発は、雷そのものの熱量を上げ、空中で大きな爆発を引き起こした。後者は完全に魔法というより、科学を知っていなければ起こせない現象だ。いや、科学的にものを言えるほどの知識があるわけではないが、そもそも電気が物理的に目に見えること自体前世じゃありえない現象だ。火で過負荷を起こして暴発させたのも、単純に魔法なら何でも防げると思ったからとりあえず放っただけだ。

「「「「我らが怒りを、燃ゆる炎よ集え。・・・我らが怒りを、燃ゆる炎よ集え。」」」」

・・・怒り、か。ずいぶん古い詠唱を使うものだ。火の魔法の詠唱には、多かれ少なかれ、怒りや憤怒という言葉が使われる。詠唱とはつまり、言葉のイメージが重要になってくるということだ。煮えたぎるような感情が火と似ているから使われるのだろうけど、私からすればナンセンスだ。火とは、燃え上がるものではないと思っているからだ。まぁ、そうは言っても、それで魔法が発動してしまうのだから、センスがどうのこうのという話ではないのだけど。

後方の4人が唱えいているのは、複重魔法だ。同じ魔法を幾度も唱えることで、一つの強大な魔法に仕上げる技術。一つ一つの魔法は、適正さえあれば誰にでも発動できる基本的な火の魔法だ。確か、火の輪っかを作り出して放つ魔法だったはずだ。複重魔法によって、彼女らの頭上に巨大な火の輪が生み出されつつある。あの様子だとやがては巨大な火球となっていくだろう。

(あれで私を仕留めるつもりなのね。)

数の優位を利用した、間違いなく最大の火力だろう。

「「「「雷よ、貫く矢となり駆け抜けろ!駿槍(ライオット)」」」」

前の4人は、なおも私に向けて雷の矢を放ち続けている。それらを防ぐには簡易魔法で十分なのだけど、このまま後ろの4人の魔法の完成を黙ってみているわけにはいかない。簡易魔法では、一時しのぎにしかならない。場に残り、雷の矢を防ぎ続ける魔法が必要だ。

「斬、芽吹け。」

再び雷の鎌を生み出して、それに一つまみの細工を施す。雷の矢を弾いたそれは、満開の桜の如くの花びらの洪水と変わった。階一帯を吹き荒れる雷の桜吹雪。傍観しているジエトたちにも届いてしまっているが、この花弁は触っても静電気を発する程度だから、実害はない。

「転じよ、蝶に。」

そうやって無数に散った花びらに新たに魔法をかけていく。花弁は一枚一枚が蝶へと変わり、私の周囲へ集まってくる。

「汝は火、汝は冰、汝は光とならん。」

集う雷の蝶が、火の蝶、氷の蝶、光の蝶へと、属性を変えていく。赤、青、黄、白の蝶が色鮮やかに渦を巻いていく。

そうこうしている間にも、雷の矢が飛んでくるが、蝶たちが私を守るように壁となって散っていく。

「なんなのよ、あの魔法。」

「蝶だらけで・・・狙いが定まらない。」

そうは言いながらも魔法を放ち続けている。ただ、彼女の言う通り、狙いは外れてきているから、思惑通りではある。

「仮初の命に、我、心を与えん。命よ芽吹け、眷属となりて敵を討たん。」

火の蝶は一纏まりに、氷の蝶は一纏まりに、それぞれの属性の蝶が塊になっていく。

「守護精出でよ。聖なる僕(アルバ・ツォーネ)!」

詠唱と同時に塊となったそれぞれの属性が、それぞれの生物の形へと変じていく。火は翼の生えたトカゲに、氷は4足で尾が分かれた獣に、雷は鋭い視線と巨大な翼を持つ猛禽に、そして光は手のひらほどのウニのような妖精に変わった。さらに、私の影からぬっと姿を現したのは、体が靄状の猿、そして、地面からその姿を現し、頭部だけを覗かせた緑色の蛇。

六竜りくりゅう顕現。奇跡を我が手に・・・。さぁ、はじめましょうか。」

六体の守護精霊が、私の周囲を取り囲む。彼らは私の盾であり、剣であり、そして、この世界で私が、奇跡の申し子と呼ばれる証だ。


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