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九尾の狐、 監禁しました  作者: 八神響
第5章 干戈倥偬編

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第180話 再会

 鵜野達と別れてから数日後。

 東京の辺境、穴場とすら呼ばれない山中に大黒達はいた。

 ただでさえ人気のない場所な上、山中には大黒が人避けの結界と、感覚を狂わせる結界を設置している。

 一般人は当然のこと、陰陽師ですらまともに山の中を歩けない異界と化している。

 それでもいつかは核が見つけられ、結界が破壊される。

 それまでには来てくれよ、と願いながら、大黒と純は山頂に陣取っていた。

 他の仲間達は山の麓を監視しており、大黒秋人が来たら大黒に連絡する役割を請け負っていた。


 そして、とうとうその日は来た。


「思ってたより早かったな」

「そうですね。それに、想像より人数も少ないです」


 秋人が来た報せを受けて、大黒は一時的に秋人が登ってくる道筋の結界を解除していた。

 それに誘われ、秋人は山頂にたどり着き二人の前に姿を現した。

 そして、秋人と共に山頂に来たのはフードを目深に被った小さな妖怪一体だけ。

 使える手駒が少なかったのか、この妖怪だけで事足りるとの判断からか。

 迎え撃つ二人は後者だと考え、妖怪に対する警戒を強める。


「久しぶりだね、二人とも。今日は招いてくれて感謝するよ」


秋人は柔和な笑みを浮かべ、二人に再会の挨拶をする。


「そっちこそ、わざわざ殺されに来てくれて助かるよ」

「本当に。まさか歓迎されるとも思ってないでしょうに」

「おいおい、数ヶ月ぶりの親子の対面だというのに冷たいじゃないか。談笑する気はないのかい?」


 殺気に溢れた二人を前にしても、秋人は余裕な態度を崩さない。

 姿を見せているのは大黒と純の二人だけだが、他にも敵がいるのは秋人も分かっているはず。

 それなのにこの態度、よほど隣にいる妖怪の強さに信頼を置いているのか。


「談笑ねぇ……、そりゃお前からしたら対話はしたいよな。うまいこと交渉しないと死ぬ未来しかないんだから」

「対話したいのはそちらも同じだろう? 私が策も無しにお前たちの前に出てくるとは思っていないはずだ」

「…………」


 大黒は渋い顔で口を噤む。

 今すぐに殺しにかかりたいのは山々だが、秋人の企みを詳らかにしないことには殺すに殺せない。

 大黒とハクにどんな危険が降ってくるのか、それを知るまで秋人に手を出せない。

 そのことを秋人自身も分かっていた。


「お前たちは認めたくないだろうが、私たちは長年同じ家に住んでいた家族だ。お互いにある程度の考えは読める。だからいっそのこと、腹を割って話したい。その方がどちらにとっても得だと思うんだ」

「…………」


 大黒が横目で純に確認を取ると、純はコクンと頷く。

 今の秋人の言葉に嘘はない。純はそう判断し、大黒に会話を続けるよう促す。


「腹を割って話すなら、まずは端的にお前の目的を教えろ」

「それは当然、大黒家の名を上げることさ。誰もが平伏する名家として返り咲く。私の目的はそこからずっとぶれていない」

「そこはそうだろうよ。そのために俺達に懸賞金を懸けたってのか?」

「そうだ。手っ取り早く名を上げるには巨悪を倒せばいい。だれもが認める巨悪をね」

「はっ」


 大黒は秋人の目的を聞いて鼻で笑う。


「その巨悪が俺達だって? 随分買い被ってるんだな。それに懸賞金なんて懸けたらお前以外に俺達が殺される可能性だって高かったろ」

「いいや、それはありえないさ。真も純も大切なもののためにこそ一番力を発揮するタイプだ。その状況で金目当ての陰陽師なんかに負けるはずがない」


 秋人は真っ直ぐな目で二人を見つめる。その目には信頼の感情しか浮かんでいない。


「お前に褒められても不快なだけだな。お前なら俺達を 殺せると言ってるようなのも腹が立つ」

「ああ、殺そうと思えば殺せるさ。なにせ私はお前達の弱点を知っている。ただ安心してもいい、私にお前達を殺す気はないからね」

「はあ?」


 秋人の言葉には無視できない自信が感じられた。

 秋人の言う『お前達』には、大黒とハクと恐らく純も含まれてはいるのだろう。

 その三人に共通する弱点なんて、大黒には思い浮かばなかった。

 純も心当たりはない様子で、ただ眉をひそめるだけだった。


「弱点について教えると冷静に話せないかもしれないから、先に私の要求を伝えておこう。私は九尾の狐を式神にして、半妖集団を討つ。そのため、お前達には九尾を差し出してほしい。後、九尾の力を封印している呪具も一緒にね」

「……その要求を飲むわけないのは分かってるよな?」

「それは条件次第だろう? 大丈夫、ちゃんと考えているさ」


 そして、秋人は隣にいる妖怪のフードをめくる。


 頭には異形を象徴するような五つの角。

 赤みがかった肌と合わせて考えると、鬼であることは間違いない。

 大黒も純も鬼女に知り合いはいない。


 しかし、どちらもその顔には見覚えがあった。


「久しぶり、お兄ちゃん」

「は、つね」


 大黒は掠れた声で彼女の名前を言う。

 あの日、蠱毒で死んだはずの血の繋がった妹の名を。

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