◆【Shana's Side】Moonlight Flit
ちょい短いか
「点呼」
「ちーむ1、七人いるよ」
「ちーむ2、七人おるだ」
「ちーむ3、八人揃っております」
「よし、それじゃ搭乗」
脱出は夜明け前に決行と決めたため、安全確保のため避難民を3つのチームに分けた。子供が十二人と大人が七人の、計十九人。七人チームがふたつと、五人チームがひとつ。五人チームは先頭の一番艇で、そこにジュニパーとあたしが加わる。二番艇はリーダーに元猟師のルエナさん。最後尾の三番艇はリーダーに長老のヌマグさん、後方警戒としてミュニオに付いてもらった。
「声を出さずに、ゆっくり、静かにね。なにかあったら、ぼくらが助けるから」
城砦遺跡から抜け出すと、四百メートルほどの川まで移動して水面にボートを浮かべた。いまのところ、追手や監視の気配はない。相変わらず流れが早いので、全員が無事に乗り込むまで力持ちのジュニパーに押さえていてもらう。
「シェーナ、全員乗れたよ」
「おっけー、そんじゃ最初はエンジンなしで行く」
船外機も購入はしたが、始動するとかなりの騒音が出る。流れが早いうちはデメリットの方が大きいと判断したのだ。
「それじゃ、これ構えて。フネの外側に向けてね」
念のため、各ボートの大人たちに盾を配布する。無防備な船上で矢を射掛けられたときに身を守るためのものだ。たしか南大陸で敵から奪った盾だな。どこで手に入れたかは覚えてもいないし、役に立つならなんでもいい。
最大の心配は水難事故なので、ジュニパー以外の全員に救命胴衣と軽量ヘルメットを着けてもらった。ヘルメットは真っ白で救命胴衣は派手な黄色と、逃避行で目立つことは否めないが、落水や漂流したときの安全を考えれば装着は絶対条件だ。
ジュニパーも着けたがってたけど、アンタ要らんやん。非常時に水棲馬への変化で邪魔になるし。そもそも水の中では(ほぼ)無敵だし。
でもまあ、みんなお揃いなのに自分だけ持ってないのがヤなのはわかるけどね。事前に買ってはあったので、渡すと嬉しそうに胸の谷間に収納してしまった。どんだけ深いの、その谷間。
「ジュニパー、お願い」
「はーい」
最後尾でボートを押さえていたジュニパーが手を離すと、連結された三艘がゆっくりと岸辺を離れる。彼女が先頭ボートに飛び乗ったときには、ぐんぐんと速度が出始めていた。
「できるだけ、声を出さないようにね」
スピードはどんどん速くなり、薄暗闇のなかで左右の藪やら木々が船体を掠めてゆく。激流のなかに点在する岩がボートにぶつかっては跳ね返し、乗ってる者たちに水飛沫が降り注ぐ。
アミューズメントパークの川下りよりも、よほどスリリングでエキサイティングではある。自分たちを殺そうとしてる敵からの脱出行じゃなきゃ、子供たちにはキャーキャーいわせてあげたいとこだけどな。
「シェーナ」
ジュニパーが、操船中のあたしに耳打ちしてくれた。最後尾のミュニオから、気配を感じるというハンドサインが送られてきたらしい。
右後方、距離四十五メートル、数は3。それがミエニー族だったとして、ミュニオが殿軍を守ってくれている限り、脅威になるほどではない。
「いまは無視していい。行けるとこまで目いっぱい急ごう」
問題があるとすれば、途中の滝だ。ミエニー族が最大勢力としてこの島を実効支配しているのだとしたら、島の地形や河川は把握していると考えた方がいい。
河口までの全行程が八キロとの想定で、滝があったのは真ん中より気持ち先、四キロ半といったところだ。そこでいったん足を止めることになるから、追手がいた場合はそこで迎撃するとミュニオにも避難民の大人たちにも伝えてあった。
「ヘンな感じ」
ジュニパーが小さく鼻を鳴らす。見ているのは前方で、先ほどミュニオが察知した敵の気配という風ではない。
「待ち伏せか?」
「ミエニー族っていう意味では、たぶん違う。けど……」
ジュニパーは水棲馬姿に変わって、ボートに並走するように水面を駆け始めた。
「なんかいる」




