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『凡人の俺、一万円札に転生して最強の幼馴染の財布を目指す』  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第3話:無糖峰からの招待状

母親との感動の再会を果たし、ようやく「人間としての日常」を取り戻した佐藤駆。

しかし、穏やかな時間は長くは続かない。経済界の頂点に君臨する無糖峰が仕掛けた巨大なチェス盤の上で、駆を待ち受ける次の展開とは――?

迎えるシーズン2第3話では、再び世界の表舞台へと引き戻される瞬間を描く。


それでは、シーズン2 第3話「無糖峰からの招待状」の本編をどうぞ!

アパートの食卓に並んだ温かい味噌汁の味は、三年前の記憶のままで、しかしどこか懐かしく染み入るようだった。

母は何度も駆の顔に触れ、本当に生き返ったのかを確かめるように涙を流し、そして笑った。バイトに明け暮れ、いつも財布の軽さを気にしていたあの頃の生活からは変わってしまったが、この温もりこそが自分が戻ってきた現実なのだと、駆は噛り締めていた。


だが、その平穏な夜が明けた翌朝。

リビングのチャイムが軽快に鳴り響いた。


「はーい」とエプロン姿の母がドアを開けると、そこに立っていたのは黒スーツに身を包んだ見知らぬ屈強な男だった。男は深々と頭を下げ、一通の上質な封筒を差し出した。

「佐藤駆様ですね。無糖様からのご招待状をお持ちしました」


「……みねから?」

ダイニングから顔を出した駆は、怪訝な顔をしながらその封筒を受け取った。

封を開けると、厚手の便箋には万年筆の美しい文字でこう記されていた。


——『今夜、都内某所のホテルペントハウスにて。君が財布のなかで見てきたものと、僕が数字で築いてきたものの答え合わせをしよう。新しい勝負の始まりだ』——


「まったく、相変わらず回りくどい野郎だ……」

苦笑いを浮かべつつも、駆の胸の奥では、あの札束として駆け抜けた旅の記憶が熱く疼いていた。

お金の視点から人間社会の表と裏、欲望と絶望、そして温もりを見てきた自分だからこそ、見えているものがある。無糖が自分を呼んだのは、単なる旧友との再会などではない。


「母さん、ちょっと出かけてくるわ」

「おや、もうお友達とお出かけかい? 無理しちゃ駄目だよ」

「大丈夫、ちょっと勝負してくるだけだから」


駆は軽く手を上げ、家を飛び出した。


指定された場所は、都内でも一際そびえ立つ超高層ビルの最上階ペントハウスだった。

シーズン1の最後に一万円札として舞い降りたあの場所とよく似た、しかしさらに洗練されたガラス張りの空間。眼下には、東京の夜景が宝石を散りばめたように広がっている。


「よく来たな、駆」


窓際に佇んでいた無糖峰が、グラスを傾けながら振り返った。その足元には、かつて自分が滑り落ちたのと同じような、しかし今は何もない綺麗な大理石の床が広がっている。


「わざわざカッコいい招待状まで送りやがって。で、何の用だ?」

駆がソファに深く腰掛けながら尋ねると、無糖は静かにグラスを置き、一枚のタブレット端末をテーブルの上に滑らせた。


画面に映し出されていたのは、複雑に入り組んだ企業の株主構成図と、見慣れない海外ファンドのロゴマークだった。

「これが、今僕たちが直面している敵だ。『ブラック・オプス・キャピタル』。世界中の富を吸い上げ、国家すら意のままに動かすと言われる巨大金融カルテルだ。彼らは今、僕が築いたすべての資産と、この国の経済インフラを丸ごと飲み込もうとしている」


無糖の声音には微塵の焦りもなかったが、その瞳の奥には鋭い闘志が宿っていた。

「奴らの手口は徹底している。感情を排し、すべてを冷徹なアルゴリズムとマネーの暴力だけで支配する。かつて君が財布の中で見た、多重債務者の絶望も、政治家の裏金も、すべて奴らが作り出したシステムの一部だ」


その言葉に、駆はハッと息を呑んだ。

あのとき、一万円札として巡ったすべての景色。泥まみれの路地裏も、ヤクザの組事務所も、老夫婦の穏やかな笑顔も――すべてがこの巨大な経済の歯車と繋がっていたというのか。


「僕の計算能力と資産のすべてを投じても、奴らの予測不能な『非人道的な罠』の数々には手を焼いている。だからこそ、君が必要なんだ」

無糖はまっすぐに駆を見据えた。

「お金としての旅を経験し、人間の欲望の底と、温もりの両方を知っている君なら、奴らのアルゴリズムの裏をかける。……どうだ、駆。僕と一緒に、この世界をひっくり返す最後の勝負に乗るか?」


かつて勝てなかった天才が、今、対等な相棒として自分に救いを求めている。

いや、救いではない。これは、世界を相手にした最高の「ゲーム」の始まりなのだ。


駆はフッと不敵な笑みを浮かべ、テーブルの上のタブレットに手を伸ばした。


「いいぜ。紙切れになって散々人間の本性を見てきたんだ。今度は、その札束を武器にして、あの傲慢な連中に目にもの見せてやるよ」


二人の少年の手が、再び強く重なり合う。

凡人と天才の反撃が、今、静かに幕を開けた。

シーズン2 第3話「無糖峰からの招待状」をお読みいただき、ありがとうございました!

無糖からの招待を受け入れた駆が、世界を揺るがす巨大金融カルテル「ブラック・オプス・キャピタル」の存在を知り、本格的に経済戦争へと身を投じる展開となりました。

次回、第4話「再会のペントハウス」では、敵側からの最初の刺客、あるいは本格的な作戦の全貌が明かされます。どうぞお楽しみに!

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