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召喚されたのは、まさかの校門!?

放課後の校門前、私は最後の生徒たちを見送った。日も傾き、校庭の影が長く伸びている。

「ふう……今日もなんとか無事に終わった~。」

肩の荷を下ろし、伸びをしながら靴を脱いで中庭のベンチに腰かけた。


私は高校の体育教師。日々の授業に部活指導、生徒指導と毎日奔走していた。

日々の疲れは抜けないし、疎まれがちだが、それでもやりがいはあると感じている。

今日は部活オフの日。ここで軽くストレッチでもして帰ろうと思ったが、妙に体がだるい。

思えば昨日も夜遅くまで部活の指導、今日も授業で生徒に叱咤と根性論をぶつけて……体も心もヘトヘトだった。


「はぁ……家に帰って、ゆっくりお風呂に入りたい。」

そう呟いた瞬間、ベンチの下の石畳が淡く光り始めた。

 

「え……?」

思わず後ずさると、地面が波打つように揺れ、視界がぐるぐる回る。


「……ん?」

びくっと体が跳ねる。次の瞬間、周囲の景色が渦巻き、目まいがする。

視界が揺れ、背中の筋肉が緊張する。息を吸おうとしても空気が震えて届かない。

息が詰まりそうになった瞬間、まぶしい光に包まれ、気がつけば私は見知らぬ空間に立っていた。


黒い大理石の床、赤い炎が揺れるランタン、高くそびえる天井――すべてが非現実的で、まるで絵画の中に迷い込んだようだった。


 「う、嘘……ここは、どこ……?」

 慌てて辺りを見回すと、玉座の上に黒髪・黄金の瞳を持つ男性が座っていた。背筋をピンと伸ばし、漆黒のマントを翻す姿は、圧倒的な威厳を放っている。


「そなたは私の運命の人だ、結婚してくれ。」


――え、今なんて言った?

頭が真っ白になり、思わず手で口を押さえる。初対面の相手に“運命の人”? しかもその相手は……

「魔王!?」


彼は自らをレナトス・ヴァルガード、魔界の魔王だと名乗った。

「あ、あの……私は白瀬しらせ れん、高校の体育教師です……」

震える声で名乗ると、魔王は満面の笑みで頷いた。


 「その輝き、見逃すわけにはいかなかった。」


いやいやいや! 私の“輝き”って、毎日生徒の前で根性論叫んで疲れ顔ですよ!?

心の中でツッコミを入れるが、口には出さない。とにかく、冷静に対応しなければ……。


「……えっと、突然呼び出すって、どういうつもりですか? 魔界とか、私、そういう趣味ないんですけど。」

やっと声が出た。怒りでも恐怖でもなく、ただの困惑。


魔王レナトスは首を傾げ、少しだけ眉をひそめた。

「趣味……ではないな。ただ、君に会いたかっただけだ。」


なんというか、回答がますます意味不明。しかも笑顔で真剣に言われると、ツッコミも半分あきらめモードになる。

「ふぅ……この人、本当に何を考えてるんだろう……」

深く息を吐き、まずは状況を把握することにした。


その時、後ろの扉が開き、角のある獣人、小柄な魔族、妖艶な女性――ちらっと視界に入るだけで、魔界っぽさが漂う。

だが、彼らは敵意のない目で私を見つめている。威圧感はほとんどなく、どこか興味津々の雰囲気だ。私を興味津々で見つめている。


「……えっと、私、元の世界に帰りたいんですけど。」

必死に落ち着こうとするが、魔王の瞳に釘付けになり、言葉が出ない。


「君にはここで、私の側にいてほしい」

魔王は穏やかに言った。強制ではなく、どこか優しい口調で。

その瞬間、不思議と恐怖は薄れた。むしろ、この人は悪人じゃないと直感した。


「いや、そうじゃなくて。帰る方法を教えて。私はどうしたらいいの?」

思わず尋ねるが、魔王は答えない。微笑むだけで、何かを期待している様子だ。


――突然の召喚、突然の恋愛フラグ、そして、ちょっとした興味。

こうして、蓮の異世界生活は始まった。


体育教師の私が、根性論と愛情で魔王の心をつかんでしまい、異世界の秩序を整えていく……そんな波乱万丈な日々の幕開けだった。




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