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第1章 試合前 その7

主な登場人物(カッコ内は登場人物のエピソードを紹介している部分)

小林龍也・・北江ジャガーズファン。(第1章その1、その2、その7、その8)

滝沢忠・・・北江ジャガーズのエース(第1章その5、その6)

土井勘太郎・北江ジャガーズ監督(第1章その4、その9、その10)

田中香織・・毎朝スポーツ北江ジャガーズ担当記者(第1章その3〜その5、その10)

秋山めぐみ・独占スポーツ北江ジャガーズ担当記者(第1章その3〜その5、その10)

畠山正・・・第7戦の主審(第1章その2)


*お断り*

この小説は2008年に行なわれた日本シリーズ第7戦、埼玉西武ライオンズ対読売ジャイアンツをベースにしています。モデルになっている選手の経歴や試合進行はかなり忠実に再現していますが、選手の性格及び言動、また登場する審判、記者、ファン等は全てフィクションです。その旨ご了承いただきますようお願いします。


 滝沢がダッグアウト裏に引き上げたころ、ちょうど龍也はスタジアムに到着していた。一番乗りを目指していたが、龍也が到着したときには、すでに20人程度のファンが並んでいた。

「ほら、みろ。アイツがモタモタするから後れを取っちまった」。龍也は思わず小さく愚痴をこぼしたが、実際には一番乗りのファンは前日の試合終了後そのまま並んでいるわけだから、妻・美佐子のせいにしたところでせんなきことだった。

 龍也の席は三塁側のダッグアウトの上あたりだ。試合そのものを見たいときはなるべくバックネット裏の席を購入するのだが、今日は応援のほうに重きをおきたいという気持ちがあって、ダッグアウト上の席を購入していた。

 根っからのジャガーズファンの龍也だが、実は外野スタンドでの応援はあまり好きでなかった。もちろん、応援団の存在自体を否定するわけではなかったが、自分も一緒になって応援することはほとんどなかった。

ファン一人一人がそれぞれで応援すれば良い。それが龍也の応援の信条だった。全員が一緒になって応援するだけが応援ではないと思っていた。

 それでも、すでに外野席に並んでいるファンからはラッパの音に合わせて、打順に合わせた個々の応援歌が聞こえてきていた。それを聞くことで龍也の気分も盛り上がっていたのも事実である。

 龍也が列の最後尾に並ぶと、直前に並んでいた男性が龍也のほうを振り返り声をかけてきた。

「お一人ですか?」

「いえ、女房と一緒なんですが、化粧しているのを待ってられなくて先に来ちゃったんですよ」

「アハハハ。その気持ちわかりますよ。僕も本当は彼女とくるつもりだったんですけど、彼女が『6時開始の試合なら5時にいけば十分じゃん』って言うので、じゃあ、後から来いって、一人で先に来ちゃったんですよ」

「やっぱりそうですよね。この大一番に臨む選手と少しでも一緒の空気を吸いたいと思うのがファン心理っていうもんですよね」

「そうそう。関係ないって言われればそれまでだけど、ファンってそんなもんですよね」

「あ〜良かった。同じ考えの人がいて。女房に馬鹿にされてきたから、ずっとイラついていたんですよ。ちょっとすっきりしましたよ。これで試合に集中できる」

「そうそう、今日は試合に集中して、ジャガーズを一生懸命応援しましょう。絶対優勝できますよ」

「そうですね。お互い精一杯応援しましょう」

 見ず知らずの二人がすぐに仲間になれる。それも同じチームを応援しているファン同士ならではの光景だ。


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