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夏を振り返って【日.ヨウスケ】

【日曜日】

==ヨウスケ==


 一日経ってようやく実感がわいてきた。

 やりきった。俺は恋人がいるフリをやりきったのだ。

「あー」

 蒸し暑い部屋の中で天井を仰ぎ見ながら、昨日の出来事を振り返る。

 総合遊戯施設へ行って、スポーツ、ボウリング、カラオケと遊びつくした。

 ただただ騒いで楽しんだだけで、途中から彼女だの恋人だのをあまり気にすることを忘れていた。タカシ達も恋人達と一緒にいるというより、普通の友達と遊ぶようなテンションで、いつもと雰囲気が変わらなかったからかもしれない。


「なんかなー」

 トリプルデートとは言いつつも、昨日一日ただ友人達と遊んだだけで終わった印象がある。

 デートという言葉で身構えていた部分があるけれど、その実は普段の遊びと変わらない。イチャイチャする姿を見せられたり見せたりする場面があるだなんて思っていたけれど、そんなものは一切なかった。


「そっか」

 振り返ってみて、一つの答が思い浮かんだ。

 親しい間柄、その延長上に恋人がいるんだ。

 親しい友人達との間のやりとりと恋人とのやりとり、種類が違うわけじゃない。親しみの度合いが違うだけなんだ。

 だから、恋人だから友人だからって振る舞いが極端に変わるわけじゃない。コミュニケーションのやり方は同じなんだ。

 イチャイチャなんてのは恋人同士だけでやるものだろうけど、それは2人だけのコミュニケーションだ。見せるものでも見せられるものでもない。お互いさえ通じ合えればいいものなんだと思う。


「なんかこれ、滅茶苦茶つらいな」

 今更ながら、胸に虚しさが募っていく。

 彼女がいるフリをして、それを周りに見せて証拠にしようだなんて、何から何まで間違っている。頭がよく見られたいがために、自作の解読不可能な暗号のそばに解説書をわざわざ置いていくような阿呆な行為だ。

 自尊心の塊というのは、俺のような奴のことを言うのかもしれない。



「もう虎にでもなりてえ気分だ」


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