猫かぶり【土.カヤ】
【土曜日】
==カヤ==
今日はトリプルデートの日だ。
「よしっ」
声を出して気合いを入れなおす。
「気合入ってんな」
「まあ、そうですね」
別の場所で先に待ち合わせしたセンパイと歩いて待ち合わせ場所に向かう。
彼女のフリをするだけでも気を使うのに、自分以外年上の人達かつ5人が知り合いなんて気まずい状態だから気負いがすごい。センパイはそのことに気を回してくれるとは思えないので、自分でなんとかするしかない。
駅前に4人の男女が笑いながら楽しそうにしているのが見える。センパイが「あれだ」と姿勢をくずさずにささやいた。
センパイが手を上げて合図を送ると、4人全員がこちらを向いた。
緊張する。猫を被りきるんだ、わたし。彼女のフリをやりきるんだ。
「おっす、来たな」
「今日は割と早いじゃん」
「学校以外じゃ遅刻はしねえって」
センパイの後ろに隠れながら、「こんにちは」と軽く会釈をする。消極的な彼女を演じるんだ。そうすればボロが出る可能性を減らせるはずだ。
元々積極的なほうでもないから、演じるほどではないかもしれないけれど。
「はじめましてー! あなたがヨウスケの彼女さん?」
「は、はい」
茶髪の活発そうな女性に押されながら答えた。どこかマユミと似た雰囲気を感じる。
「私はサキ、こっちののほほーんとしているのがミナね、よろしく」
「うぇえ、のほほーんって! ミナです、よろしくね」
ミナと名乗った女性が出した手をおずおずと握り返す。
「あっ、ずるい! あたしもあたしも」
サキさんは私たちの手を両手で挟んできた。ついていけずにどぎまぎする。
「カヤです、よろしくお願いします」
言って、敬語じゃないほうが良かったかも、なんて後悔する。けれど誰も気にしていないようなので、ほっとする。私が高校生であることがバレないに越したことはない。センパイが大変なのもあるし、私も面倒だからというのもある。
自己紹介だけでこんなに緊張して、今日一日やっていけるか今更不安になってきた。
ただもうここまで来たら、やり抜くしかない。
絶対、彼女を演じきってみせる。




