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悩める者

誤字脱字や誤った表現がありましたらご指摘くださると助かりますm(_ _)m

『勝者!如月 夕陽!』


私は、如月 夕陽に敗北した。









目を覚ますと、そこには見慣れない部屋だった。


おそらく病院か、それとも学園の医務室のどちらかだろう。


答えは後者だ。身体を起こして、窓をのぞき込むと、帝学のものと思われる校舎が見えた。


医務室と言っても、設備はかなり充実していて、手術もできる。


時刻は夕方の5時過ぎあたりだろうか。夕日が差し込み、少し、眩しい。


私…負けたんだ…。


彼女を傷つけまいと手を抜いたわけではない。本気でやってこのざまだ。


情けない…ほんと情けない。


後輩に負けたことだけではない。


陽向の教えをまともに実行できず、挙句の果てにはボロ負けするという大失態だ。


私は頭を抱えていると、部屋のスライド式のドアがガラリと開いた。


「やあ、空里、調子はどうだ?」


陽向だ。


「ほっといてよ。」


正直、今一番会いたくない人物である。


だから私は顔を背けながら言った。


「あ、じゃお(いとま)しますね〜。」


と言って陽向は出ていこうとするが、


「あ、待って!」


気づけば私は陽向を引き止めていた。


「ん〜?ほっといてほしんでしょ?」


「そう…だけど。」


本当は一緒にいたい。だが、合わせる顔がない。


「どうして負けたと思う?」


陽向がそう聞いてきた。答えなくてはと思うが、答えられない。


陽向は続ける。


「君は強い、でも負ける。なぜだかわかる?」


わからない。わかるわけがない。


私は無言で首を横に振る。


「そうか、なら、君はこれ以上強くなれないし、勝てない。」


「じゃどうしたらいいのよ?!?!」


私は陽向に訴えていた。


「君は…強くなりたいかい?」


「なりたいに決まってるじゃない!!」


私の目から涙が溢れた。


「君が強くなれない理由、教えようか。」


「お願い…私は…どうしても強くならなくちゃいけないの…。」


如月派のひとりとして、如月派の者ののために、如月のために、陽向のために。


私…好きなんだなぁ…陽向のこと。


元々自覚はあった。でも、今確信し、そして決意した。


私は、陽向のために強くなる。


「それは、誰かのため?」


といきなり指摘されたので、私は顔を赤らめて驚いた。


「え、えぇ。そ、そうよ。」


私は涙を拭いながらそう言った。


「そっか、じゃ、強くならないとね。」


陽向はそれ以上言及してこなかった。


「まあ、まずは傷を癒さないとな。傷が癒えたら、色々教えるよ。」


「あ、うん…。」


陽向が部屋を出ていこうとしたが、


「ねぇ…陽向。」


「ん?どした?」


引き止めてしまった。


「えっ…と。」


私は顔がさらに熱くなっているのを感じた。


「もう…少し…一緒に…いてほしいな…って思って…。いい…?」


すると陽向は、


「うん?いいよ?」


と言って陽向は私が横になっていたベッドに腰掛けた。


…ち、近い。


自分の身体のすぐ横に、陽向の身体がある。身体と身体が密着しそうだ。


「どした?顔赤いぞ?」


と陽向に指摘され、自分の顔が紅潮しているのを再認識した。


「ば、ばか!違うわよ!」


「え?!」


陽向はわからないといいたげな顔をしている。


そしてまあいいかと頭をかいた。


「で、なにか話したいことでも?」


「え?!あ、いや…。」


陽向が私に向き直って話しかけてきた。


正直、話すことなどない。


ただ、陽向と一緒にいたかっただけ。


「ふうん…。」


しばしの沈黙。


そしてその沈黙を破ったのは私だ。


「え、えっと…ひ、陽向…?」


「ん〜?どした〜?」








と言って返すと。


空里が俺の胸元に身体を預けてきた。


「ふえ?!あ、ちょっ、空里さん!?!」


すると、


「うぐ…ひっく…うぅ……。」


と空里が少し嗚咽混ぜながら泣いていた。


「ど、どした…?」


と俺が戸惑いを隠せずにいながら尋ねると、


「…うぅ…ごめ…ん…なさい…。ごめん…なさい…。」


「え?あ、いや、なんで謝んの?!」


いや、むしろ謝らないといけないのはこっちだと思うんだが、


まあ、それは置いといて、


「えと…悔しいかったの?」


「悔しいよ…悔しいに…決まってる…。」


「まあ、そうだろうね…。」


俺は空里の身体を両腕で抱いた。


「そんな日もあるさ…。悔しかったら、思いっきり泣いてもいいんだよ?」


空里は俺の胸元に顔を埋めて、嗚咽をもらしはじめた。


俺はそっと空里の頭に手をやり、優しく撫でた。


その涙が、枯れるまで。








「はぁ…。」


とさっきから口から出てくるのはため息ばかり。


時刻は夜7時を回ろうとしていた。


「おにいさまったら、すぐに帰るとおっしゃいましたのに…。」


私の兄である、如月 陽向は、少し早めの夕食をとった後、早乙女 空里先輩の見舞いに行った。


だが、出ていったのが夕方の5時頃だったのに、一向に帰宅する気配がない。


「せっかく2人きりでしたのに…。」


と言いながらまたため息を漏らす。


双子の妹である夕陽は念のためと医務室にいき、一晩安静。


それは空里先輩も同様である。


「夕陽の見舞いにでも行かれたのかしら?」


それもありえなくはない。妹思いの優しい兄だ。顔を見に行く程度のことはするだろう。


だが、それにしても、


「遅い…ですね…。」


ここまで来ると逆に心配であるが、まあ、兄のことだ、もし他派閥(てき)が来たとしても一刀両断だ。


と思うと少し安心するが、やはり心配なものは心配だ。


私はベランダにでて、外の空気を吸った。風が心地よい。


5月とはいえ、夜は肌寒いが、私にとってはこれくらいがちょうどいい。


思えばいつからだろう…あの人に好意を抱いたのは…。


私はおにいさまのことが…好き。いや、好きという言葉だけでは表せない。愛してる。


それは妹としてではなく、異性として。


それは偶然ではなく、必然で。


本来ならば、許されない、儚い恋。


人の夢と書いて、(はかな)いと読む。


確かにそうかもしれない。だが、それが手の届く、場所にある。


彼を、手に入れられる、自分のものにできる、自分が、彼のものになれる。


だって…私とおにいさまは…血は繋がっていない(・・・・・・・・・)のだから…。


次回もお楽しみにー!


最近忙しくて小説が書けずにいますが気長に待っていただけると嬉しいです(*⌒▽⌒*)

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