乙女ゲームの世界に転生してよっしゃ勝ち組!と思っていたら内容がBLゲームに書き換わっていた件
私、山田花子!
ピッチピチの16歳JK!
顔は平凡、学力普通、運動神経にはほんのちょっとだけ自信あり。
うん。
要するにどこにでもいるその他大勢の一人ッ!
目立たないし華もない!
誇れるものといったら若さくらいよコンチクショー!
でも、そんな私もいっぱしの夢見る乙女なの!
素敵な男子と素敵な恋に落ちて周りのモブからリア充爆発しやがれ的な視線集中砲火を浴びたいという密かな欲望は尽きないわ!
リアリストの友達に話したら「現実見ろや頭ぱっぱらぱーか?」とか冷めきった目つきと口調で言われたけど!
いいじゃない、想像するだけならタダだし自由よ!
…てなことを思って平凡な日々を過ごしていた私ですが。
唐突に、脱☆平凡しました。
じゃじゃーんッ!!
異世界転生!きましたーッ!!
ある日寝て起きて鏡を見てみたら、ちょうど昨夜クリアしたてホヤホヤの乙女ゲームのヒロインになってたってワケ!
こんなことって実際あるのね!
さすがは最近の流行りだけあるわ、異世界転生!
まさかこんな平凡な私にまでチャンスが巡ってこようとは!
鏡の中の自分の姿についウットリしちゃう!
だって、絵に描いたような美少女なんだもん!
乙女ゲーのヒロインなんだから当然優れた容姿のビジュアルなのよ!
ゆるくウェーブがかった金髪、おっきくてキラキラした蒼い瞳、肌は白磁のように白くてツヤツヤ、どこからどう見たって一部の隙もない完璧な美少女だわ!
これならどんな王子様もバンカラ不良も私の魅力にイチコロメロメロドキュン☆ってなもんよ!
はっ!
鏡の自分にいつまでも見惚れてる場合じゃないわ!
学校に行かないと!
ゲームの設定では、私は貴族の通う王立学院に生徒として通ってる。
あ、私ってのも、この世界では違う名前ね。
辺境の木っ端貴族の一人娘、アリシア・ヴェルブラント。年齢だけは元の世界と同じで16歳。
優秀で向学心のある一人娘のために、普通なら貴族とはいえ辺境の田舎者なんかが通えるわけない王都の王立学院に、お父様が無理して入学させてくれた…って導入だったはず。
ここでアリシアは田舎者とバカにされつつ、多種多様な魅力的な男子と出会って、惹かれ合ったりぶつかり合ったりすったもんだの3年間を過ごした挙げ句、いずれかの攻略対象キャラとめでたくゴールインを迎えるってスンポーよ。
ま、よくある王道テンプレストーリーよね。
分かりやすくていいじゃない?
登校して、教室の様子を眺め回して、ここまでのところはゲームの設定通りだと確認し、私は内心でほくそ笑んだ。
いいわ、いいわよこの流れ!
確実に私の時代が来ている感じがするわ!
教室にはゲーム通りの美形美少年が目白押し!
みんな私に注目してる!
…っていうのは、まあアリシアが美少女だからってだけじゃないけどね。田舎者って理由だけでもない。
このクラス、私とあともう一人を除いて、みーんな男子ばっかりなのよ!
女子は二人だけ!
男女比率10対1のすっごい偏りがあるわけよ!
王立学院のクラス割はシンプルに学力順なので、こうなってるの。
この世界、女子が勉学に励むのはあんまり推奨されてないのよね…
もう一人の女子はやんごとない身分のお嬢様で、ほとんど登校してこないって設定だし。
必然的に、私はこのクラスでたった一人の女子!
オンリーワンにしてナンバーワンよ!
そりゃ男子の興味を沸き立たせて視線も集めちゃうわよね!
でも、あんまり見詰められると照れちゃうから、少しは遠慮して欲しいな…!
「やあ、おはようアリシアさん。今日は少し遅かったね?」
爽やかに挨拶の声を掛けてくれたのは、攻略対象その1。
この国の第三王子、ヒューゴ・ジオ・レオンハート様!
金髪碧眼の絵に描いたような美形で、眉目秀麗頭脳明晰剣術の腕もピカ一っていうパーフェクトな存在よ!
ゲームでも攻略のメインターゲットとして設定されていたわ!
実際、こうして目の前に来られるだけでウットリして胸がトゥンク…!しちゃいそう!
…でも実は、私の最推しではなかったりする。
だって、アリシアのビジュアルと被りすぎてるんだもん!
金髪も青系統の瞳も白磁の美肌もマジクリソツ!
一対のお似合いカップルとして描くためにイラストレーターさんがあえて揃えたのかもしれないけど、ここまで似通ってるとカップルっていうより兄妹みたいじゃない。
もちろん王族と田舎の木っ端貴族で実際の血縁はまったくないんだけどね。
それより、私が推していたのは、
「おい、何をぼーっとしてるんだ。ヒューゴ様がもったいなくもお声掛けくださったのだぞ。挨拶の返事もまともにできないとは、これだから田舎者は…」
って思ってたそばから、キターッ!!!
刺々しい態度でヒューゴ様との間に割り込んでこられた形だけど、全然気にならないわ!
攻略対象その2。シーザー・ディモンド様!
上級貴族でヒューゴ様とは長い付き合いの幼馴染。ツンツンした黒髪に、赤い瞳、肌は健康的に日に焼けた小麦色のこれまた美形!
おそらくヒューゴ様と対象的になるようにビジュアル設定されたんでしょうね。二人並ぶとイケメンパワーが相乗効果でえらいことになるわ!
ってことはアリシアの容姿とも対称的なので、エンディングのスチルイラストで私的に一番しっくりきたのがこのシーザー様だったってワケ!
ゲームだとこの二人は大体セットで登場するから、ダブル攻略なんてのも狙えたけどね。
今、体験してるのは現実。
ちゃんと攻略対象……じゃなかった、恋愛対象を一人だけに絞ってアタックしなくちゃ!
でないとアリシアがとんだ八方美人の尻軽女になっちゃうじゃない!
そんなヒロイン、私は認めない!
とりま、注意されちゃったしちゃんと挨拶を返してっと。おはようございまーす。
「まったく、ヒューゴ様に見惚れてボーっとしてたんじゃないか?身の程知らずな…」
「おいおいシーザー、おかしな言い掛かりをつけるもんじゃないよ。こんな男子だらけのクラスで、アリシアさんも緊張してるんだろうしさ」
はいっ!めちゃドキドキしてますっ!
眼福で幸せすぎて!
ヒューゴ様は一瞬だけキョトンと目を見開いて、すぐにおかしそうに上品な笑顔を浮かべた。
「なんだか…アリシアさんって、面白いね?」
「…チッ」
シーザー様は逆にそっぽを向いてしかめっ面。舌打ちまでしてる。
けど。
私は知ってる!知っちゃってるのよ!
シーザー様はいわゆるツンデレ属性で、本心ではアリシアのことが気になってるけどヒューゴ様とばっかり楽しそうにおしゃべりしてるもんだから、ヤキモチ焼いてこんな態度になっちゃうの!
ゲーム後半に進むにつれて、どんどんデレの部分が出てきてそりゃーもうときめかせてもらったわ!
そうと知ってると、シーザー様可愛いとしか思えない…!
私は終始ニッコニコの美少女スマイルを二人に均等に向けていた。
と、そこで始業のチャイムが。
朝のおしゃべりタイムはおしまい。
席につかなくちゃ、っと…
「……後で話がある。放課後、校舎裏に来い」
自分の席に移動するために擦れ違った一瞬、シーザー様が私にだけ聞こえる小声で、鋭く囁いた。
ハッとして振り向くと、赤い瞳が有無を言わせないって感じで私をじろっと睨みつけていた。
これは…
放課後イベント発生!
フラグが立ったってことね!
よーし、恋愛成就に向けて、頑張るぞっ!
…と、喜び勇んで放課後、校舎裏に来たはいいものの。
私、何を見せつけられてるのかしら…
「違う、ヒューゴ様!俺はただ…」
「何が違うんだ!?おまえは僕よりもアリシアさんを選んだ!そういうことだろ!」
「違う!俺は、ずっとおまえが……おまえのことだけが…!!」
「し、シーザー…!?」
ハイ。
こちら、絵に描いたよーなホモの愁嘆場でございます。
どうしてこうなった…!?
最初は、シーザー様一人だけだったのよ。
やって来た私に、開口一番「もうヒューゴ様に近寄るな」的な脅しめいた言葉を投げつけて。
これは、アレね!
ヒューゴ様とばっかりじゃなく自分とももっと親しくしろっていう捻くれたアピールなのね!
ゲーム知識からそう解釈した私は、ちょいっと挑発してみることにした。
どうしてシーザー様にそんなこと言われなくちゃいけないんですか?もしかしてヤキモチですか?
って言った途端、校舎裏の壁際に追い詰められてそこに手を突かれて…
壁ドンキターッ!!!
間近に迫るシーザー様は怒りの形相だったけど、私はちっとも怖くなかった。
むしろドキドキトゥンク…!ってときめきメモリアル状態だったわよ!
だって、図星を指されて照れてるから怒ったふりをしてるんだ、って思ってたから。
…ある種、当たってはいたかもしれない。
対象が私ではなかったってだけで。
「ふざけるなよ、この女…」
ドスの利いた声で、恫喝されようとしていた。
そこに、間がいいのか悪いのか、ヒューゴ様が通りかかったの。
いつも一緒のシーザー様が急にいなくなったから、不審に思って探してたみたい。
それで、私が壁ドンされて……どう見たって強引に口説かれてるってシーンをバッチリ目撃しちゃったってワケ。
そこからは急展開だったわー。
当のヒューゴ様に現場を目撃されたシーザー様。見るも無惨に狼狽えちゃって。
「何をしてる!?」「違うんだ、これは…」「まさかおまえ、アリシアさんのことを…」「本当に違う!聞いてくれ、ヒューゴ様!」「聞きたくない!」
っていう応酬の挙げ句にですね。
「俺が愛しているのはヒューゴ様、あなただけだ!今も昔も!こんな女のことなんかなんとも思っちゃいない!」
「じゃあ、どうしてアリシアさんにこんなこと…」
「ヒューゴ様に近付いて惑わせようとしていて、許せなかった……俺の、俺だけの、ヒューゴ様なのに…!」
「バカだな、シーザー……僕も、好きなのはおまえだけだよ。アリシアさんは、なんか僕と似てるから妹みたいで可愛いなって思ったけど、それだけさ」
「ヒューゴ様…!」
「シーザー…」
「ああっ、なんて嬉しい日だろう!俺はもうこのまま死んでもいい!」
「バカ、僕を残して死ぬな。ずっと、傍にいてくれ…!」
「ヒューゴ様のお心のままに…!」
そして見つめ合った二人は熱く抱擁を交わしてそのまま急接近してチューしようと…
………。
おうゴラ。
待てやおぼっちゃんども。
「あっ……ごめん。君もまだいたんだね、アリシアさん」
「チッ……いいところで邪魔を」
声を出して存在感をアピールし、ホモップルのファーストキッスを阻んだ私。
シーザー様からはまた舌打ちされたけど、今度はもう許せないなぁ…!
百歩譲って、私をディスるのはいいわよ。
王子様に近付こうとする不埒な田舎娘って思えたんでしょーし。
けどさぁ。
私をダシにしてホモ成就させようとすんな!
こちとらブロークンハートを通り越して噴飯ものだわバカやろー!!!
いいか、私が好きなのは乙女ゲー!
BLは守備範囲外なんだよ!
腐女子でもないこの私に、こんな腐ったシーンを見せつけやがって!
「「ご…ごめんなさい…!??」」
私の剣幕に恐れ慄いたのか、二人ともビクッとして詫びを入れてきた。
だからって簡単には許さないけどね!
謝って済むなら警察なんて要らないのよ!
そこに直れ!
正座!
これからあなたたちに人としての道を説教します!
〜説教中〜
「ほ、本当にごめんね、アリシアさん……こんなことに巻き込んじゃって」
まったくだわ!
「恐ろしい女だったんだな、おまえ…」
失礼な。
私はどこにでもいる恋に恋するか弱い乙女です!
…だから、別にあなたたちの恋路の邪魔をするつもりもない。
私の預かり知らぬところでよろしくやってくれる分には、なんとも思わないしどーでもいいわよ。
二度とホモに私を巻き込まなけりゃ、ね!
「僕たちのことを認めてくれるの、アリシアさん…!?」
「お、おまえ、いい奴だったんだな!ありがとう…!」
別にいーわよ。
どーでも。
とりま、もうあなたたちに用事はないし、私はクールに去ることにするわ。
せいぜいお幸せにね!
その後、彼らがどうなったのかは知らない。
知ったことじゃない。
そんなことに脳のリソース割いてる場合じゃないってのよ。
どうなってるの、この世界!?
あの乙女ゲーの世界に転生したと思ってたのに、これじゃBLゲーの世界じゃない!?
…ううん、一度くらいでメゲちゃダメ!アリシア!!
攻略対象……もとい、恋愛対象はまだまだたくさんいるんだから!
私は、私の幸せを掴むために!
次のターゲットめがけて、頑張るぞっ!!




