それぞれの行く末
7話:それぞれの行く末
「では、手分けして調査を開始する」
古鷹が地図を広げた。
「私は黒鉄山へ。裏ルートから登り、山頂の警備体制と教団の動きを直接確認する」
「危険では…」
「大丈夫だ。10年間、あの山を見張り続けてきた。地形は完全に頭に入っている」
美月が頷いた。
「私は警察署へ。上司に報告して、教団の最新の動向を調べてもらう。内通者に気をつけながら、信頼できる人間だけに接触する」
「気をつけてください」ときやが言った。
「ええ。それで、コンヌさんとときやさんは?」
コンヌが答えた。
「街で聞き込みをします。教団が大規模に人を動かすなら、必ず痕跡が残るはず」
「人の流れ、交通機関の混雑、物資の搬入…異常があれば必ず見つけます」
「良い考えだ」古鷹が頷いた。「では、正午に一度連絡を取り合おう。情報を共有する」
「了解です」
四人は、それぞれの任務へ向かった。
古鷹は裏ルートから黒鉄山を登り始めた。険しい道だが、彼の足取りは確かだった。標高1000メートル付近で、異変に気づいた。
「これは…」
木々の間に、カメラが設置されている。
「警戒を強めているな」
さらに登ると、見張りの姿が見えた。黒服の男たち、3人。古鷹は音を立てずに迂回した。山頂に近づくにつれ、空気が変わっていく。不穏な、何かが蠢いているような感覚。そして、山頂の施設が見えた。
「あれは…」
大型のバスが数台、停まっている。人の気配。たくさんの。古鷹は双眼鏡を取り出した。
「まさか…もう集まっているのか」
警察署に到着した美月は、直属の上司・桐生警部に接触した。
「美月…無事だったのか!」
「はい。でも、大変なことになっています」
美月は教団の計画を説明した。
桐生の顔が蒼白になる。
「邪神降臨…だと?」
「信じてもらえないかもしれませんが…」
「いや、信じる。お前が嘘をつくような人間じゃないことは知っている」
桐生は資料を取り出した。
「実は、ここ数日、奇妙な情報が入っていた。
N県内の複数のバス会社に、大量の車両手配があった。
行き先は…黒鉄山方面だ」
「やはり…」
「それと、昨夜から今朝にかけて、教団関係者と思われる人物が大量に移動している。監視カメラの記録もある」
画面には、続々と集まる人々の姿。
「これは…今日にでも儀式が?」
「可能性が高い。すぐに機動隊を…」
「待ってください」美月が止めた。
「警察内に内通者がいます。下手に動けば、かえって危険です」
「では、どうする」
「父と、信頼できる探偵たちが動いています。私たちは情報を集め、最悪の事態に備えてください」
桐生は頷いた。
「分かった。だが、何かあればすぐに連絡しろ」
「ねぇ、ここ数日で変わったことない?」
コンヌは商店街の店主に尋ねた。
「変わったこと?ああ、そういえば…」
「何ですか?」
「昨日の夜から今朝にかけて、妙に人通りが多かった。
普段は静かな時間帯なのに、大型バスが何台も通って行ったよ」
「バス…どっち方面に?」
「北の方。黒鉄山方面だな」
コンヌとときやは顔を見合わせた。
次に、バスターミナルへ。
「すみません、黒鉄山方面のバス、最近利用者増えてませんか?」
受付の女性が答えた。
「ああ、今朝は凄かったわよ。団体客が次々と…
普段は登山客くらいしかいないのに」
「団体客?」
「ええ。みんな同じような服装で、なんだか不気味だった。表情も、どこか虚ろで…」
ときやが小声で呟いた。
「洗脳された信者たちだ…」
「急がないと」コンヌが言った。「もう始まっているかもしれない」
三者から電話が入った。
古鷹「山頂に、すでに大量の人間が集まっている。儀式は今夜だ」
美月「警察の情報でも確認。大型バス十数台が、黒鉄山へ向かった」
コンヌ「街の聞き込みでも同じ情報。今朝から異常な人の流れがあった」
全員の情報が一致した。
古鷹「儀式は今夜、おそらく日没後すぐに始まる。もう時間がない」
コンヌ「今から向かいます」
古鷹「私は既に山にいる。裏ルートで山頂へ向かう」
美月「私は警察の機動隊を待機させてから向かいます。万が一に備えて」
ときや「僕たちも今すぐ出発します」
古鷹「では、山頂で合流しよう。必ず、儀式を止める」
「はい!」
最終決戦が、始まろうとしていた。




