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第7-6話 【悪徳大臣の深淵なる転落サイド】大臣、あっさりと篭絡される

 

「……このように、我が治安局ではお抱えの”勇者”に指示し、国内の犯罪組織の撲滅を進めております」


「今月だけでもすでに2グループ……遠からず王国内の治安は安定するかと存じます」


 大げさな身振りと手ぶりで、おのれの功績を強調するガリオン。


「うむ……今月も素晴らしい実績じゃなガリオンよ! 貴公の献身は覚えておくとしよう」


「はっ……ありがたき幸せ……今後も我が職務に励む所存であります」



 ここは王国中央王宮の国王謁見室。


 王国政府の重臣たちが集まり、国王に成果の報告を行い、次の政府の方針を決める場である。


 治安局大臣であるガリオンは、国王に今月の成果報告を行っていた。


 ふん、王も満足しているようだ……いまの国王は凡庸な男だが、だからこそ操りやすくて助かる。


「ガリオン卿……貴殿はそうおっしゃるがな……最近の治安局はやり過ぎる!」

「いくら相手が犯罪組織と言ってもだ、皆殺しとは……組織の構成員には女子供もいたのだろう?」


 その時、ローブを着た初老の男が立ち上がり、ガリオンを追求する。


 王都の地区長を束ねるダルトワ公爵だ……王族から連なる貴族の家系……貴族には珍しく有能で清廉な人物であり、国政にも大きな影響力を持っている。


「公爵は異なことをおっしゃる……我が治安局では、皆殺しなどしておりませぬ……組織に属していた子供たちは捕え、”再教育”することで、更生させておりますぞ」


「さらに、優秀な者については、治安局で登用しております。 おかげで、”勇者”や”冒険者”などに頼らずとも、王国内の治安を維持する体制が出来つつあります」


「く……貴殿の治安局で、構成員に対する”非人道的な”訓練が行われているという噂もあるが……」


「ふっ……それこそ言いがかりというものです…優秀なエージェントを育成するには、訓練が厳しくなるのも当然でありましょう?」



 表面上は最もであるガリオンの弁舌に、不承不承と言った体で引き下がるダルトワ公爵。


 なんとか奴の尻尾を掴めないだろうか……王国政府からある程度独立した組織として運営させていた冒険者ギルド、ダンジョンギルドでさえも奴の支配下に入ったと聞く……。


 このまま奴を野放しにしていては危険だ……ダルトワ公爵は焦燥感と共に、打開策はないのか、思案を巡らせていた。


「公爵にも納得いただけたようですので、あらためて私の提案なのですが、”勇者”及び”冒険者”に対する依頼費用、貧民への補助金削減による王国軍の充実を行い……」


「治安局直属の”勇者”達による”暗黒領域グソマー”への侵攻……これにより、我が国をむしばむ東西断絶の解消を、ここ数か月の間に成し遂げて見せましょう……!」


「おお、それはまことか、ガリオン!」


 ガリオンの大言壮語が続き、会議は奴の独壇場だ……陛下はずいぶんと奴を重用なさるようだが……。


 貴族のネットワークも活用し、いざという時の準備を整えておくしかあるまい。


 特に東部の貴族達だ……ダルトワ公爵は当面の動きについて部下と再度検討すべく、国王謁見室を辞するのであった。



 ***  ***


「ふっ……くふっ……ガリオン様、お上手です」


 ここは治安局にある大臣私室。


 治安局のエージェントであるエイダは、ガリオンと逢引きしていた。


「ぐふふ……なんのっ……だが、エイダよ……貴様から誘って来るとは珍しいな……貴様は勇者趣味ではなかったのか?」


「まあ、ワシの趣味からすると、いささか育ちすぎておるがな、がはははは!」


 下品な言葉を吐くガリオン。


 ……不快なクソデブだ……一撃で血煙に沈めてやりたいが、コイツにはまだ利用価値がある。


 エイダは湧き上がる殺意をガリオンの心臓に叩きつける代わりに、にやりと怪しく微笑む。


「くふ、イヤですわガリオン様……私だってたまにはたくましい殿方の寵愛を受けたいときもあります……えいっ♪」


「おっ、おおおおおおっっ!?」


 エイダが妖艶に笑う。


「くふふ……まだ時間はありますわ……本日午後からの”人工勇者生成器”の最終動作試験……楽しみにしております……私にも立ち会わせてくださいね」


「おお、もちろんだエイダよ……って、貴様、まだ続けるのかね……?」


「くふ、まだまだお元気でしょう……私の魔法を掛けて差し上げます……」


「う、うおおおおお!?」


 その後もエイダとガリオンの逢引きは続いた。


 ***  ***



「はぁ、不快な仕事だった……でもこれで仕込みは完了……くふ、滅亡へのダンスを踊るがいいよ……」


 ようやくガリオンとの逢引きを終えたエイダは、彼の私室を出る。

 最低の時間だったが、これも私の野望には必要な事……。


 午後の”人工勇者生成器”の最終試験の前に、もう少し仕込みをしておかないと……エイダは足早に目的地に向かった。



 ***  ***


「ん……あいたたた……ワシは気絶していたのか……ぐふふ、年甲斐もなく頑張りすぎたな」


 エイダが去った後、気が付いたガリオンはベッドから体を起こす。


 それにしてもあの女……”人工勇者生成器”の中核となる宝玉を作った優秀な魔法使いで……ヒーラーに扮して勇者を漁るただの淫乱娘だと思っていたが……。


 意外にワシの趣味に合ういい女じゃないか……具合も悪くない。

 側室として飼ってやってもいいな……。


 ゲス極まりない思考をしているガリオンの頭と下腹部に、ズン……と重い鈍痛が走る……。


 うむ、そういえば先日の健康診断の結果があまり良くなかったな……秘書のセバスに良いマジックアイテムを持ってこさせよう……。


 ガリオンはその”痛み”が何を意味するのか、まったく気づいていなかった。



 ***  ***


「…………ガリオン様、ガリオン様! この件ですが……!」


 執務室でぼーっとしていたガリオンは秘書セバスの声で我に返る。


 いかんな……思わずエイダとの逢引きの事を考えていた……あの女め……ワシを夢中にさせるとは、やるな?


「お気分がすぐれないのなら言ってください……」


「いや、少し物思いにふけっていただけだ……で、どうした?」


「……はっ……先日確認して頂いた王国議会への裏金工作の件ですが、こちらの対応が後手に回り、ダルトワ侯爵に嗅ぎつけられまして……」


 ふむ……”王国議会への裏金工作”? ()()()()()()()()()()()()……?


 どうも最近記憶が飛ぶことがあるな……疲れているのだろうか? もっと女を抱かねばなるまい……。


「……あ、ああその件か……まだ噂レベルなのだろう? 二号帳簿を使って良いから、もみ消せ」


「…………承知しました」


 このロリコンクソデブ……もともと脇の甘い男であるが……最近特に抜けてないか? フォローする私の身にもなってほしい。


 秘書セバスはこの後に待ち構える雑務の面倒くささにこっそりため息をついた。


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