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第7-3話 凄腕交渉人、ダイサーガ支部と手を組み、今後の方針を検討する

 

「……”銀貨20枚なんて、宝箱の中身、ケチなんちゃう”」


「うぐっ……わざわざ宝箱にメッセージを残すなんて、ダイサーガ人、厳しい……」


 デンデンブラックマーケットの情報屋組合との情報共有を行った後、ひとまず俺たちは”宝箱設置人”本来の仕事をこなしていた。



 ダイサーガの住人は商人気質なので、宝箱の中身のお得感は重要だ。


 お金が入っている場合も、1,000枚のようなキリのいい数字ではなく、1,480枚のような少し”がんばってる感”の出る数字が良いとされている。


 宝箱の中身も、ドロップアイテムに対しても、細心の注意が必要だ。


「ふむ……我も地獄の門番時代は、たまに担当の魔族を手伝っていたな……設置したのにスルーされるとそれはそれで悲しいのだわん」


「くっ……犬の言葉のくせに、分かる……分かるぞっ」


 思わず同業者?として共感してしまった。



 その時、ダンジョンの外へアイテムを取りに行っていたミアが、慌てて俺のもとに走ってくる。


「ふぅ、ふぅ、アレン! ギルドの受付さんから呼び出し! 緊急の用件だって!」


 緊急だと? なんだろうか?

 俺たちは仕事を切り上げると、急ぎキタにあるダンジョンギルドへ向かった。



 ***  ***


「来たか……えらいすんまへんな、せっかく仕事をしてくれとるのに……」


 ダンジョンギルド・ダイザーカ支部に到着すると、バタバタした様子の受付がこちらに走ってくる。

 俺たちは受付横にある防音済みの会議室に入ると、鍵を掛ける。


「これは、王都に潜入しとる内偵員からの情報なんやけど……」


「……アレン、あんさんたちの手配書が明日に出るみたいや」


「……なっ!? 手配書だと? どこから!?」


「例のごとく、治安局のガリオンの名前で出るみたいやで」


 馬鹿な……俺は真面目にダンジョンギルドの仕事をこなしてきただけで、奴らに尻尾を掴まれるようなことは……まさか、”孤児院での一件”か?


 俺が事件の現場……治安局エージェントのエイダがイザベラ院長と取引先組織の暗殺者を始末した顛末を覗いていたのがバレたのか?


 いや……だが、あの時に使っていたのは、A~Sクラスの上級マジックアイテム……生半可な事では探知できないはずだが……。



「アレン、ミアたち”しめーてはい”されちゃうの?」


 話を聞いていたミアが不安げに瞳を揺らしている。


「……大丈夫だ……俺が絶対守ってやる……いまの俺たちは強い」


「……うん、ありがとう!」


 面倒な事態になったが、俺の”先読みスキル”も進化してるし、いまはポチ侯爵だっている……逃げ切ることは不可能ではないはずだ。

 俺は安心させてやるために、ミアの頭を優しくなでる。


「……ほんでやな、ウチらとしては”ウメキータダンジョン”の最奥にかくまうことも考えたんやけど……」


 気づかわしげにミアを見やるギルド受付が、とんでもない提案をしてくる。


 ”ウメキータダンジョン”の最奥だと!?

 逃亡生活以前に、リアルに出れなくなるんじゃないか?


「はは、流石にそれはまずいやろってなったから、ナシや」


「やから、ダイサーガ支部としては、”王国東部”への一時避難をお勧めするわ」


「王国……東部へ……だとっ!?」



 説明しよう!


 俺たちの住むこの”王国”は、大きく分けると”西部”と”東部”に分かれており、王都やこのダイサーガは西部にある。


 俺たちが今まで旅してきた地方も全て西部だ。


 対して東部は、ノルドカイドや、シノーナ地方と言った、広大な土地を持ち、農業が中心産業になっている地方が多く、大きな街は少ない。


 以前は商業の西部、農業の東部として交易が盛んだったのだが……


 いまから10年程前に、西部と東部の間に”暗黒領域グソマー”と呼ばれる謎の領域が出現し、西部と東部は完全に分断されてしまった。


 噂では”魔王軍”と呼ばれる魔王の軍勢が侵略のために作った領域で、虎視眈々と世界制覇を狙っているとか……本当かどうかは知らないが、ともかく危険な領域であり、陸路での踏破はもちろん、海路や”転移の羽根”にまで魔法的な影響がおよぶ。


 現時点では、西部と東部を安全に行き来する手段は存在しない。


「おいおい、冗談も休み休み言ってくれねえか? どうやって”東部”に行くんだよ?」


「”暗黒領域グソマー”を歩いて行けとか、命がいくつあっても足りねぇぞ?」


「まあ、まってや。 ”テンカク迷宮”……ミナミの街中にそびえる塔やがな……そこには……」


「どんな防壁も障害も関係なく、王国だけじゃなく世界中、はたまた異世界にも自由に転移できるっちゅう転移道具が存在するって伝説があるんや」


「ウチらはな、それを使って東部に行けばいいと考えてな……ほい、テンカク迷宮のカギや」


 ちゃりん、とゴツイ鍵を俺に渡してくる受付。


「ま、まあ……もしあかんかったら”ウメキータダンジョン”に隠れたらええんや!」

「気楽に行ってきいや!」


 うむむ、なんという二択だ……だがこのまま何もしないと、俺たちは治安局に逮捕され……正直あまり面白くない結末を迎えるだろう。


 いまの生活を守るため……なによりミアを守るため……俺は”テンカク迷宮”に挑む覚悟を固めるのだった。


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