第二王妃の仕掛け 1
ちまちま、本編後のお話を書けたらと思います。
よろしくお願いします!
この願いを遂げられるなら、炎に灼かれても構わない。
けれども、それだけではとても、あの人の試煉には届かないから。
この身を賭して、業火の祝砲を放ちましょう。
その日、慶事に国中が沸いた。
数年前の国王陛下の再婚に次ぐ、盛大な祝い。
第一王子、ならびに第一、第二王女の誕生。
王位継承権のある御子が三人、一度に公表されるのは異例のことだ。
年齢を重ねた国王陛下が病を患われたため、一番下の御子が生まれるまでは黙されていたとされる。
民には、王妃アリアドネの生家、筆頭公爵家当主ドミニクより酒や食事が振る舞われ、罪人には恩赦が与えられた。
ドミニク公爵閣下は、王妃の兄であり後ろ盾であるため、御子との交流も深い。喜びも一入であろう。
「かあさま。お手をふりますか?」
アリアドネよりも深い紅の髪と、彼女の家門に引き継がれる淡緑の瞳の第一王子は、すでに四歳。
髪と瞳は母似だが、凛々しい顔立ちはどちらかといえば前公爵や現公爵に近しい。
アリアドネは、我が子の小さな頭を撫で、笑みを浮かべた。
「ええ。そうしましょう」
王妃の腕には第一王女、侍女の手には生まれたばかりの第二王女がいる。
わあっとこの日一番の歓声が上がる中、アリアドネは綽々と手を振った。
国王陛下は、病症のため出席できなかったが、我が子たちの披露目を遅らせるつもりはなかったようだ。
代わりに王妃をエスコートするのは、彼女が一番に信を置く義兄ドミニク。
未だ独身を貫く彼は、淑女たちの視線を一身に集めていた。
「ドニー。みんながあなたを見ているわ」
くすくす、愉快そうに笑う妹を呆れたように見やり、ドミニクが肩を竦める。
「きみは見てくれないのに?」
「あら。王妃が兄ばかり見つめていては、いらぬ火種になるわね?」
それも面白そうだわ、と続いた言葉に、ドミニクは首を振る。
まったく、いつまで経ってもこの妹は、破天荒が治らない。
「我が甥が王位に就くまでは、頑張って猫を被っておいてくれ」
「あらまあ、つれないこと。我が子たちの前では、もちろんそうするわ」
肘を掴む手に、ほんのわずかな力が込められ、ドミニクは胸の奥に潜む熱を再度自覚する。
記憶の始まりから、ずっと。変わらずずっと、焦がれ続けている。一心に。
我ながら呆れるほどの一途さだと、ドミニクは毎度律儀に呆れるのだ。
幼い時から、ドミニクの半分はアリアドネのものだった。
彼女だけをひたむきに見つめ、彼女ばかりを想い、彼女だからこそ愛してきた。
家族として、兄として。今は。




