3 長いものには・・・
「大丈夫ですか?こんなになっちゃって・・・」
レアはフローラの家にいます。
すでに悪漢はいなくなっていて、ここには町の人が数人と、フローラとレアしかいません。
フローラは町の人が見てくださった限り、目立つ傷などはなく大丈夫そう。とのこと。
ただ、家の中が少し、いや、だいぶ荒れているということ以外は。
えっ?どうやって悪漢たちを追い出したのかって?
ふふふっ、それはこのレアの女神としての力を使ってドカーッンっと退治した、ってわけでは残念ながらないのです。
あのあと、裏口から出てくる気配を感じて、レアは怖くなってフローラの家の前から飛び出しました。
とにかく町の方へ、と思って走って、走って、走り続けました。
その時に、助けを呼んでいたんですが、レアの声を聞いて近所の人が集まってくれたんです。
心温かい人間がいるのですね。レアは嬉しいです。
気がついたら今いる大勢の人がフローラの家に向かってくれました。
さすがに怖い人たちもレアの連れてきた人たちに恐れをなして逃げ出した!ってわけです。
「いたた・・・ごめんなさい、心配かけて。でも、助かったわ。」
「いいんです、フローラ様にはいつも助けていただいているのでこのくらいのこと」
フローラの縄を解くと、彼女はゆっくりと起き上がり辺りを見回した。
レアは、その様子を入り口付近でじっと見守る。
「ほんと、最悪ね。この工房・・・」
呆れた顔で見つめる室内。割れた機材や砕けたなにか。踏み荒らされた書物なんかが痛々しい。
「しかし、なんなんですか?あいつらは。フローラ様に対しなんて無礼なっ!」
一人の老人の言葉がきっかけだった。
その一言でフローラの雰囲気が変わったようにも思えた。フローラは躊躇なく、質問の答えを言い放った。
「あぁ、彼らね。しつこいのよ。エリクシルを作れって。万病をも癒す霊薬。天界に住まう神の薬。とも呼ばれているわ。あいつら、・・・それが欲しいのよ。」
「なんでまたそんなものを?」
「知ってるでしょ?隣国の王族に不死の病が蔓延しているって。だから―」
「っ!!!?」
フローラが口にした言葉みんなにとっては刺激が強いものだった。
隣国とはいえ、王族の使者を追い返したこと。それがもし一個人に対する「報復行為」があれば間違いなくただでは済まないと思います。
長いものには巻かれろ。
人間界で勉強した言葉です。この町にとってフローラは尊敬され、崇められてさえいるまさに生き仏。
でも、もっと大きな国家なんて「権力」には勝てないのが実際のところです。
「そ、そりゃあフローラ様、話くらい聞いてやっても・・・」
「そうじゃな。王族の病を治した。なんて言ったら感謝されますぞい」
「わ、わたしゃフローラ様ならなんでもできるって信じてすけどね」
集まった群衆は口々にフローラや、見ても聞いてもいない王族からの使者(荒っぽいけど)への言い訳やフォローを口にする。身の振り方が決まらない。というところだと思う。
フローラもそれを察したのか静かに黙っている。
「あぁ!もうすぐ息子が帰ってくるんだわ。すいませんフローラ様、このあたりで失礼しますので・・・。ほらっあんたは暇なら片付けくらい手伝ってやりなよ!?」
ペコペコとフローラへ頭を下げていたおばさんは入口のところに立っているレアを睨むような目つきで、言葉強く言い残し出て行きました。
そのあとを追うように、
「わしも、婆さんを残しているので失礼します」
「俺たちも、仕事があるからすいません」
ひとり、またひとりと消えて行き、最後は誰もいなくなってしまいました。
レアは静かになった部屋でひとりうずくまるように座っているフローラをそのまま見つめていました。




