表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

5話【淺演】

お久しぶりの投稿です…

 

「……さも有名な"甲兵の鳴物氏(ジィオカトーレ)"にしてみれば…あんなもの…容易たやすいもんでしょ…?」




 アメリアは嘲笑(わら)いながら言った。


「なぜっ…それをっ!?」


 僕ーー淺演(あさの)は彼女を跳ね除けようとするが、武器がくっついたままのため離れなかった。

 僕はめちゃくちゃに武器を振り回し力技で彼女を離そうとするが彼女はガッチリと掴んだまま離そうとしない。


 暫く無言の攻防が続いた。



 そして僕が疲れ始め勢いが衰えてきた頃に彼女は少しからかうような表情をしながら言ってきた。


「……さっきの返答だけど…"甲兵の鳴物氏(ジィオカトーレ)"を知ってるのは限られてくると思うんだけど…?」



 僕はその言葉を聞き、気がついた。

「……そうか…あんた、アナベル一族の(もん)か?」



「…もし、そうだとしても言えないわよ…」

 彼女は僕の質問に対して表情を全く変えずに答えた。

 が、ここで彼女は演技じみた動きで小首を傾げて言った。


「…まぁ後は…五年前の事件を知ってるぐらいかしらね…?」



 ーードゴンッ!



「きゃあぁ!」


 一瞬頭の中が真っ白になった瞬間、彼女は僕の蹴りによって部屋の隅まで吹っ飛んでいた。

 彼女が飛んでいった道筋には何故か火の粉が舞っていた。


 武器の方といえば僕が持ちっぱなしだ。



 彼女は蹴っ飛ばされた衝撃を全身のバネを使って壁を蹴り、華麗に受け身を取って吸収した。


「……ふふっ…やってくれるじゃない…」

 と彼女は、呆然とする僕の前で立ち上がり言った。


 仁王立ちした彼女の服には大きな穴があき、そこから見える腹部は火傷を負っているようだった。

 服の異常な焦げ目を見て僕はゆっくりと自分の足元を見た。



 見ると足元からはチロリと炎が漏れ、自分の靴すらも焦がしていた。


 僕は、五年前の出来事がフラッシュバックし、再び(・・)この炎によって怪我をさせたことにショックを受け動けなくなってしまった…。


 そして突如動かなくなった僕を見て、彼女はこう言った。


「……そんなに隙見せて大丈夫なの?」


 彼女は言いながら近くのナイフを取り上げ襲いかかってきた。が、僕は何も抵抗出来なかった、というよりも動けなかった。


「……さっきの…お返し!」


 彼女が振り下ろしてきたのをなんとか本能的に避けたが、完全には避けられず右肩に突き刺さった。



「う…!」

 僕はつい左手で肩を押さえた。

 そのため僕の左脇が空いてしまい、そこを狙い彼女は入り込んできた。


 彼女はナイフをもう1本手に取り薙ぎ払ってきたが、僕は膝蹴りでそれを空に弾いた。


「…っ…」


 膝蹴りで彼女のナイフを避けた反動で、まだ肩に刺さっていたナイフが少し僕の肩を(えぐ)り、痛みで一瞬止まってしまった。


 しかし、そこを狙わない彼女ではない。

 弾かれたナイフを瞬時に空中で手に取り切りかかってきた。


「……くっ!」


 もう防ぐ方法が無い。

 蹴りは態勢が乱れているので無理だ。

 それに突きをするにしろ右肩にナイフが突き刺さっているので正確に動けるかどうかわからない。



 ーーもうどうすりゃいいのか分からない


 が、また痛みが走り肩を見た時、今まで思いついた中で1番最悪な手段だが1つだけ思いついた。

 しかしその後の後遺症を考えると物凄くやりたくなかった。


 そう考えてるうちに刻々と彼女の刃が振り下ろされる。


 ーー迷ってる暇はない。


「うわぁぁぁ!!!」


 僕は肩に突き刺さっていたナイフを左手で無理矢理引き抜き、彼女のナイフを逸らし反撃(カウンター)に転じた。


 が、駄目だった。反撃(カウンター)に転じようとしたもの、彼女はそらされた瞬間に力技で刃をこちらに戻し左側の肩に切り込みがいれてきた。


 僕は痛みを無視しナイフの柄の底で彼女の手を叩いた。

 それにより彼女はナイフから手を離し後ろに下がった…


 ように見えたが、なんと彼女はもう1本持っていた。

 それを見事に左上にへナイフを放擲し、見事に僕の左肩に突き刺さった。


 ーーもうダメだ…


 僕にはもう反撃手段はない。

 お見事としか言いようがない。

 右も左も塞がれてしまった。

 蹴りを喰らわせようにもバランスをうまく取れず攻撃不可能だ…



 僕は観念して彼女が懐に入り込んでくるのをなすがままにしていた。





 しかし、突如黒い影が僕とアメリアの間に入り込み彼女ごと部屋の隅へと吹っ飛ばした。


「……誰よ!?」



 と、揉みくちゃになって吹っ飛びやっとの事で顔を上げたアメリアはタックルしてきた人物の顔を持ち見ようとした、が



「【月影世界(げつえいせかい)=月詠(ツクヨミ)】…!」


 アメリアにタックルをした人物は顔を見せる前にを吟詠(ぎんえい)した。すると彼女を中心に一気に周りが暗闇となった。


 しかし、相手の姿が見えないものの、僕とアメリアはその人物の声は聞いたことがあった。


「……まさか…輝流(ひかる)…?」

 暗闇でアメリアの声だけが響く。


 しかしその人物は答えない。


「…ねぇ…輝流ひかる…?」


 まだ答えない。

 でも僕はさっきの声の人物を知っている…


旭乃(あさひの)先輩ですよね…?」

 と、俺が問いかけると


 チッ、と舌打ちをする音が聞こえ返答された。


「そうだよ…私だよ…」

「やっぱり…!…なんで輝流(ひかる)!」


 と、アメリアが彼女のことを責めると


「当たり前だろが、バカ。淺演に用があってテント内に入った瞬間、片方は腕から血が出てナイフがぶっ刺さりもう片方はナイフを横に薙ぎ払ってんだぞ!そんな異様な光景、止めるに決まってるだろ…!」


 と旭乃先輩はアメリアに向かって唸るように言った。

 そして、付け足すようにこう言った。


「後、アメリア。私のことを輝流(ひかる)と呼ぶなと前言ったろ」


「…そう…だったかしら…?」

 とアメリアの方は少し惚けたように言った。


「白々しいなぁ…」

 旭乃先輩は少し苦笑いをしながらこっちを向いた。


「そういや淺演、お前の方は大丈夫なのか?」


 旭乃先輩の登場で驚き忘れていた痛みが先輩に聞かれたことにより徐々に戻ってきた。


「うっ…がぁ………!!!」

「お、おい!?淺演!?」


 僕は耐えられず、床に突っ伏した。



「おい!淺演!起きろ!淺演ぉぉ!!?」

 旭乃先輩は必死で僕を揺らす。



「…輝流!落ち着きなさい!…揺らしちゃダメ!…余計に酷くなるわ…!」

 とアメリアが旭乃先輩を止める。


「あぁそうだな、すまん…!だ、だけど…」

「…いいから…落ち着きなさい…輝流…」

「うっ…」


 と2人が大きく息を吸い吐く音が聞こえた。


「とりあえず、私はあいつらを呼んでくる」

「…えぇ…」

「頼んだ」


 片方が立ち上がり、外へ出ていく気配がした。


 そして、もう片方は僕を仰向けにした後、僕の耳元で語りかけてきたが、僕はもうその時には意識が遠のき聞き取ることは出来なかった…。



 ーーーーーーーーーーーー


 周りはとても静かで白くぼんやりと霧がかかっていた。

 僕は少しとまどったもののしばらく経つと次第に周りが色付き始めた。


 部屋自体は暗いものの、その部屋にある竈の炎が紅く燃え盛っている。



 ーー既視感(デジャヴ)


 この部屋には見覚えがあった。






 暫くして次第に見えてくると景色が鮮明となり、さっきまで描かれてなかったものが見え始めた。




 竈の前で小さな男の子が影を作り、カーンと甲高い音を出しながらリズムよく金槌を奮っていた。


 その少年の後ろ姿を僕が見ていると、その部屋に男が入ってきた。



 男は少年に話しかけるが、鉄を打つ甲高い音に掻き消された。


「…ゆき!…さゆき…賢征(まさゆき)!」


 男は掻き消されないよう大声で呼びかけたが、少年は鉄を打つことに夢中で気づかない。



 男は逡巡した上、金槌を奮っている少年に近づいた。


 僕は2人に近づこうとしたが、やめた。


 男が僕の名前を呼び近づいた時点でわかった。

 この夢は僕の…五年前の記憶だ…。


 止めても意味が無いと理解しているが止めたい衝動に駆られる…。



 その間にも男は少年の肩を叩き、笑いながら名前を呼んだ。


賢征(まさゆき)


 が、すぐに男の笑顔が無くなった。

 少年が驚き、金槌から手を離してしまい男の方に飛ばしてしまったからだ。


「わっ!ご、ごめんなさい!**おじさん!」


 少年ーーいや、過去の僕は男に向け謝罪をした。

 男はすぐに笑顔になり、少年の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「いや、いいよ。突然訪れた私も悪かった」


 少年は嬉しそうに笑い、撫でられていた。




「でな、賢征」


 と、男が手を離すと少年は男の方に顔を向けた。


「その造っている武器なのだが……「ーーあ、もうすぐ出来るよ!ねぇ見て!」


 少年はよっぽど教えたかったのか、男の言葉を遮って言いまだ紅く光っている鉄を素手で持ち上げ見せた。


「後は、装飾するだけなんだ!」


 男は驚いた後、また少年の頭を撫でた。



「ありがとな…今お前が造っている、あー武器なんだが、お前にはこれが何か分かるか?」


 少年は首を横に振り言った。

「みんなが戦うための道具じゃないの?」


 男は少し笑って顔を引き締めた。

「まぁそうなんだけどな…これは【皇祇(じんぎ)】といってな。これから…あー俺らの秘密の兵器となるもんだ」


「秘密兵器…!カッコイイ!」

 男が少年に説明すると少年は興奮した様子で言った。

 すると男は一瞬その様子を見て頬が緩んだがすぐにまた引き締まった。


「まぁな…でも秘密兵器というように、俺以外の誰にも絶対に知られちゃいけない」

「誰にも?」


 少年が聞くと男は頷き、誰にもだ、と言った。

 その男の真剣な雰囲気を少年は読み取ったのか幼いなりにも理解し、同じく真剣な顔をして頷いた。


 男は少年が頷いたのを見て、頬を緩ませ笑いながら言った。


「さぁじゃあ難しい話の後には御褒美だ、甘いもん食べるぞ!」

「ホント!?やった!」


 少年は喜んで男の後をついて行った。








 ……が、その時男と少年は重大なミスを犯した。

 まず、男は天井裏に隠れていた人物に気づくことが出来なかった。

 また、少年は武器は隠し場所に入れたものの設計書を片付け忘れていた…。


 これが後々あの最悪の事件を引き起こすきっかけとなる…。




 また、周りが白く霧がかった。










 暫く待っていると、また色付き始めたがさっきとは違い周りが紅く揺らめいている。


 景色が鮮明になってくると、少しずつ周りの音も聞こえ始めてきた。


「……ぇ!追えぇ!!追うんだ!」


 轟々と燃え盛る炎の中を二つの集団が走る。



 が、1人が振り向き後を追ってくる集団と対峙した。


「【雷の守護碧ライトニングプロテクション】!!!!」

 青い電光が走り、バリケードが築かれた。


 バリケードを築いた男の意図に気がついた数人が男に続きバリケードを築いた。

 そして集団自体が止まり、物理的なバリケードと共に人の壁を作った。


 ある程度防御が固まると最初に立ち止まった隊長らしき男が少年を背負った男に向け怒鳴った。


「**三正!お前は淺演(あさの)を連れて行け!」

「しかし雲切優将!私なぞが!」

「うるさい!いいから行け!」


 隊長らしき男は少年を背負っている男に怒鳴りつけ背を押した。


「いいか**!命令だ!まず淺演を逃がせ!その後でそいつを【共闘状態アンフロンティ・ユニティ】に!復唱!」


「**は!淺演を逃亡させ、【共闘状態アンフロンティ・ユニティ】に入らせます!」


「よろしい!行け!」


 男は少年を抱え後ろを振り向かず先ほどの集団よりも速く走り出した。

 後ろでは喧騒と何かがぶつかり合う音が響くが、男は少年をより抱え込み走っていった。







 また世界が白くなった。

 もう僕はこの時点で腹痛と吐き気をもようしていた。

 ーーそりゃそうだろう…もう既に結果を知っているのだから、ここから何が起きるのか、みたくもない…。







 が、霧が晴れ始め見え始めてきた。




「……ぁ…はぁ…ん…はぁはぁ…」


 男は茂みの中を傷だらけになりながら走り続けていた。

 少年はおぶわれ寝ている。


「はぁ…はぁ…」


 男は立ち止まり周りを見渡した。

 すると近くの木の窪みに気が付きそこに座り込んだ。


 男は暫く息を荒げていたが、徐々に落ち着き始めた…。


 そして、男は傷まみれになった手で少年の頭をポンポンっと叩き少年を起こした。



 少年は目を擦りながら、起きた。


「…おはよう…**おじさん…」

「あぁ…おはよう…」


 と2人は小さな声で喋った。



「もう【共闘状態アンフロンティ・ユニティ】には慣れたか?」

「うん…もう大丈夫だよ…」

「そうか」


 2人は黙り込み、葉がこすれる男と2人の息遣いだけが聞こえてくる。


 暫く時間が経ち、男が立ち上がり言った。


「よし賢征(まさゆき)、そろそろ行くぞ」

 少年も立ち上がり返事をしようとした。


「うん、わかっぁ……!!」

「おい!」



 少年の体がいきなり逆さ吊りとなった。

 男が手を伸ばすも空を切る。


「**おじさ…!!」

「悪いな少年よ…」


 少年を吊った青年は少年の口を素早く塞ぎ、そのまま木の上に置きざりにし下へ降りた。



「やぁ久しぶりじゃないか…**君よ…」

「てめぇどこまでやれば…」


 男は歯軋りをし青年を睨んだが青年は気にすることもなく言った。






「しょうがないじゃないか…僕だってやりたくないんだよ…【皇祇(じんぎ)】なんぞを作る君たちがいけないんだ。」


 To be Continue…

ちょっとブチ切りで終わっちゃった感じがありますね…

なるべく近いうちに投稿します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ