閑話:神野 拓巳の後悔 《中》
「くそっ…」
あれから六日経った。新は全治2ヶ月だそうだ。1週間入院してから、退院。つまり、明日退院して学校に来る。俺はどんな顔をしてあいつに会えばいいんだよ…
その日、俺はいつも通りに学校に行き、授業を受けて部活も行ったが、俺はずっと上の空だった。その日、俺はほとんど寝ることができなかった…
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「おはよ〜神野くん!」
新が俺の家の前に来る。新の家は、俺の家より学校に遠いので、いつも俺の家で待ち合わせて学校に行くのだ。
そして、そんなことより、話し方が変わってるわ、俺の呼び方も変わってるわ、いったい何があった?
「えっと、新?どうしたんだ?」
「僕は何もしてないよ〜。神野くん、頭大丈夫?病院紹介しようか?看護婦さんたちと仲良くなったし。」
「いや、俺は正常だからな⁉︎つーか怪我は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ〜。折れたのは、左手だけだし。他はひどい打撲だけみたいだったから〜。」
「いや、それは大丈夫とは言わない…」
今、新は身体中に包帯を巻き、左手をギプスで固定している。
「動けるから問題なしだよ〜。あ!そうだ、僕部活やめるから〜。」
「は?大会まで後3ヶ月はあるし、何よりお前レギュラーのトップだろ?」
俺と新はバスケ部で、新はレギュラーでトップ、俺はギリギリレギュラーの手前だ。
「うん、そうだね〜。でも、やることができちゃったし、復帰するの大変そうだし〜。」
「やることってなんだよ?部活やめるほどのことなのかよ?」
「ほら、前に言ったじゃん。うちの親が離婚しそうだって〜。それが今回、僕が怪我した時に悪化して、ついに離婚することになったんだよね〜。」
「え…。すまん、俺のせいでお前が怪我したから…」
「気にしなくてもいいよ〜。どうせ、もうギリギリでいつ壊れてもおかしくなかったから〜。」
「そっちじゃなく、お前が怪我したのだって、ほとんど俺のせいで…」
「いいってば〜、いつまでも過去を気にする男はモテないよ〜?」
「いや、それでも…やっぱり、俺があのとき…」
ベシッ
新が俺にデコピンしてきた。
「じゃあこれでいいよ〜。もう面倒だから気にしない〜!」
「あ、ああ…わかった。本当に悪かった。」
「気にしないって言ったそばから〜。」
「ああ、そうだな…」
俺はこの時、新はもう不良たちとのことを気にしてないと思ってた…
「神野くんは部活やめないでよ〜?応援してるからさ〜。」
「おう、お前の分も頑張るよ!」
「うん、がんばって〜。」
俺は気付かなかったが、その頃から新は、今にも消えてしまいそうな、儚く悲しそうな顔で笑っていた。
その後も新の入院してた時とかの話をしながら、学校に行った。
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授業が終わり、放課後になる。
「僕は帰るから、部活頑張ってね〜。」
「おうよ、そっちも親御さんのこととか、いろいろあるんだろ?早く帰れよ。」
「うん。じゃあね〜」
「おう、気をつけろよ。」
新は家に帰っていく…俺はこれからはまともになろうと思った…
あれから3ヶ月がたった。
新が部活を辞めてから、俺は今までの何十倍も頑張り、レギュラーを勝ち取った。まぁ、大会は三回戦敗退だったが。
それに、勉強も上から数えたほうがずっと早いくらいまで上がった。
新は親が離婚し、新と鈴ちゃんと母親はそのまま家に残り、父親だけが出て行った。
そして、新は俺の大会が終わった4日前から学校に来ていない…
 




