言葉がなくても 2
俺と紫藤さんは、俺の家へと向かって歩き出した。
それにしてもなぜ紫藤さんは俺の家なんかに行きたいなんて言い出したのだろう……
「あのさ……紫藤さん」
「あう?」
「えっと……ホントに俺の家でいいの?」
すると紫藤さんは俺のことを睨みつける。「あう」しか喋れなくなっても、その視線には凄みは残っていた。
「え……何?」
すると、紫藤さんはまたメモ帳に何かを書き込み始めた。そして、書き込んだ後、俺にそれを魅せつける。
「……『くどい』……ごめん」
俺が謝ると紫藤さんは納得したようだった。
紫藤さんがそういうのならあまり突っ込まない方がいいのだろう。俺はおとなしく紫藤さんの要望に従うことにした。
一応、ゾンビに合わないようにしながら俺と紫藤さんは歩き続けた。
前回、自転車で小室さんと古谷さんと帰ってきた道のりの中でゾンビがいた場所を思い出しながら、なるべくそれを避けるようにした。
そして、実際俺の家に就くまでゾンビに遭遇することはなかった。
問題は最後にやってきたのだ。
「あ……」
俺は思わず声を出してしまった。
「あう?」
紫藤さんが怪訝そうな顔で俺を見る。
「あ……えっと、ほら。あれ」
俺がそう言って指差す先。
電柱の側に立っているゾンビ……俺が家から出て、始めて遭遇したゾンビだ。
あのぼぉっとゾンビは、未だに俺の家の前の電柱の側に立っていたのだった。




