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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター16
98/204

言葉がなくても 1

 とりあえず、俺と紫藤さんはデパートまで移動する手段を探すことになった。


 簡単に言ってしまえば、自転車を探していたのだ。


「自転車……意外とちゃんと鍵がかかってるなぁ」


 当然のことながら、駐輪場に置いてある自転車のほとんどには鍵がかかっていた。


「……こうなると一度俺の家に戻ってから自転車に乗ってデパートに戻ったほうがいいかなぁ」


「あう?」


 俺が何気なく呟いた一言に、紫藤さんは反応した。


「え……どうしたの? 紫藤さん」


 すると、紫藤さんはメモに何やら書き込み、素早く俺に手渡してくる。


「『お前の家、近いのか?』……まぁ、家までなら十五分くらいでつくけど」


「あう! うあ……あう!」


 俺が全く理解できていないのに気付いたようで、紫藤さんは慌ててメモ帳にまたしても何かを書き込む。


「『だったら早く連れて行け』……俺の家でいいの?」


 俺が訊ねると、紫藤さんは笑顔で頷いた。


 一刻も早く小室さんと古谷さんの下に戻るべきだと思うが……かといって俺も、一度家に帰って休みたいという気持ちもある。


「……わかった。じゃあ、一旦、家に戻ろう」


 俺がそう言うと紫藤さんも何故か嬉しそうだった。


 俺が家に行くことについて、なぜ紫藤さんが嬉しそうなのかは理解できなかったが、とにかくまずは家に向かうことにした。


「でも……大丈夫かな?」


「あう?」


 俺が思わずつぶやくと紫藤さんが俺の顔を見てくる。


「いやね……道の途中にゾンビもいると思うし……」


「あう! うあ、あうあ。あう」


 紫藤さんはそう行ってなぜか得意げな様子だった。


「え……もしかして、任せろって言っているの?」


「あう。うあー……あう! あうあ!」


 まるで何を言っているかわからないが、そんな感じだった。


「あはは……ありがとう。紫藤さん」


 俺がそう言うとなぜか紫藤さんは目を丸くして、俺から視線を逸らした。


 ゾンビになっても、未だに紫藤さんのことはよくわからないのだった。

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