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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター15
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旅人との出会い 5

 それから俺達は程なくしてまた歩き出した。


 線路の上をひらすら二人共、無言のままに歩き続けていく。


 線路の上を歩いて行くなんてのはまるで何かの映画のようで、少しワクワクしたが、これから歩いて行く距離を考えると憂鬱になってくる。


 紫藤さんは、何も喋らずに俺の前を黙々と歩いている。俺も其の後ろを淡々とついていく。


 それからしばらく歩いているとまた駅が見えてきた。すでに太陽は空の上に高く上がっている。


「あそこの駅で休むぞ。そろそろ腹も減ったしな」


 そう言われて俺は急激に空腹を意識してしまった。


 言われてみれば朝から何も食べていない。


 そのまま駅について、休憩用のベンチに座りる。


「さてと、飯だ」


 嬉しそうにそういいながらリュックを開け、紫藤さんはなにかを取り出した。


 菓子パンだ。そして、ペットボトルに入った飲み物もある。見ればリュックの中には大量の食料が入っていた。


「あ……紫藤さん」


「あ? なんだよ」


「その……食料って……」


 すると紫藤さんは警戒心を露わにしてキッと強く俺を睨んだ。


「なんだよ。やらねぇぞ」


「あ……そ、そういうのじゃないんだ……その食料、どうしたのかなぁ……って」


「どうしたって……頂いてきたんだよ。お前だってやってるだろ? 今じゃコンビニには店員もいないし、スーパーにはレジ打ちもいないんだ。で、生きていれば腹が減るんだから仕方ないことだ」


 そういって紫藤さんは菓子パンを大きく口を開けてかじりついた。


 まるで俺に魅せつけるように嬉しそうに食べる紫藤さん。いや、もちろん、彼女にそんな気はないのだろう。


 だが、俺にとっては紫藤さんが食事をしているのを見せられるのは、この上なくキツイ拷問のように思えた。


「……なんだよ」


 菓子パンを半分くらい食べ終えた辺りで、紫藤さんは迷惑そうに俺を見る。


「え……ど、どうかしたの?」


「お前なぁ……そんな顔で見られたら、飯がまずくなるだろうが」


 慌てて俺は紫藤さんから顔を逸らした。


「ふぅ~ん……ま。どうせ、腹が減ってるんだろ? 俺は心の優しいヤツだからよ。お前に食料を恵んでやらないこともないんだぜ?」


「え? ほ、ホント!?」


 俺は思わず勢い良く振り返って紫藤を見た。俺の反応に紫藤さんも少し驚いているようだった。


 だが、しばらくすると、嬉しそうにニンマリと微笑んで紫藤さんは俺を見る。


「ただし……条件があるけどな」


「……条件?」


 俺は、瞬時にものすごく嫌な予感がしたのだった。

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