旅人との出会い 3
「デパート……ねぇ」
まだ疑っているような顔つきで、紫藤さんは俺のことを見てくる。俺はただ曖昧にそれに微笑み返すことしかできなかった。
「あ、うん。デパートなら食料も沢山あるし、寝る場所だって確保できそうでしょ?」
「……いや、俺が信じられないのはデパートのことじゃねぇ」
ぶっきら棒にそういう紫藤さん。そして、俺のことを目を細めてジッと見る。
「その……会話できるゾンビってのが、どうも俺にはいまいち信用出来ないんだよな」
そういって俺を見る紫藤さん。最も、俺としてもやはりそうだろうということは十分予想はしていたが。
「あ、あはは……だよね。驚くだろうけど……ホントなんだよ」
「……いいか? 俺だって伊達にここまで一人で行動していないんだぜ。だが、そんな俺でさえ、そんなゾンビには一度も逢うことはなかった……それなのに、そんなゾンビがいるってことを俺に信じろっていうのか?」
紫藤さんはやはり信用出来ないようだった。俺もなんと説明したらよいのかわからない。一番てっとり速いのはやはり実際に小室さんと古谷さんに会ってもらうしかないのだろう。
「えっと……大丈夫。会ってみればきっと分かるよ」
そう行ってもやはり紫藤さんは俺のことを不審そうな目で見ていた。俺はなんとか会話を変えないといけないと咄嗟に思った。
「紫藤さんは……危険な目とかに遭わなかったの?」
「あ? なんだよ。ぶしつけに」
不機嫌そうにそう返事をする紫藤さん。俺はなんとか笑顔を取り繕って彼女を見る。
彼女は金色の髪をいじりながら、面倒くさそうに今までのことを思い出しているようだった。
「そうだなぁ……ま、ゾンビには何度も会ったぜ。っていってもアイツラは動きもトロいし、怖いって感じじゃねぇよな」
「え……ゾンビが怖くないの?」
「当たり前だろ? なんだ。お前、怖いのか?」
馬鹿にしたような感じでそういう紫藤さん。俺は咄嗟に顔を反らす。
「大体、一体どうなってんだよ。ゾンビって……そんなのは映画だけの話だろうが。それなのにそれがマジでうようよ街の中を歩きまわりやがって。腹が立ってくるぜ」
「あ、あはは……そう、だね……」
なんというか……紫藤さんはマジでゾンビが怖くないような感じだった。あんなにもゾンビに対して嫌悪感を露わにして怯えていた宮本さんとはまるで正反対である。
宮本さん……大丈夫だろうか?
「おい、何ぼぉっとしてんだよ」
「え? あ、ああ。ごめんなさい……」
紫藤さんに言われて俺は我に返る。
「ほら。次の駅が見えてきたぜ」
紫藤さんが指さした前方には、確かに駅のシルエットが浮かび上がってきていた。




